「私服のセンスが中2で止まっている彼氏」など、日常の「あるある」をリアルに再現した動画で人気のお笑い芸人・西本たけるさん。2024年8月に皮膚の色が抜けていく「突発性尋常性白斑」になったことを公表しました。周囲の心配をよそに──。(全3回中の1回)

【写真】顔の色素が抜け、焼けた肌との差がはっきりわかる西本たけるさん ほか(全14枚)

「顔の横側の皮膚が」と芸人仲間に指摘され

── 2024年8月に突発性尋常性白斑を発症したことをSNSで公表されました。具体的には、どのような症状が出ているのでしょうか?

西本さん:突発性尋常性白斑は、皮膚の色素が抜けて白くなる病気です。色素が抜ける場所や範囲は人それぞれで、腕や顔など部分的に白くなる方もいれば、全身が白くなる方もいます。僕の場合は、顔の色素が抜けて、皮膚の色がまだらになっている状態です。

── いつから症状が出たのですか?

西本さん:症状が出始めたのは昨年の1月ごろですね。ライブに一緒に出ている芸人仲間から、「顔の横側の皮膚の色がまだらになっている」と指摘されるようになったんです。普段、自分の顔って正面からしか見ないじゃないですか。だから、そのときはあまりピンとこなくて、「そうなんだ」くらいの感じで過ごしていました。

── 最初から症状が強く出ていたわけではなかったんですね。

西本さん:最初はあまり気にならなかったんです。でも、6月に海に行って、けっこう日焼けしたんですよ。色が抜けている部分は日焼けしないので、焼けた肌と白い部分の差が目立つようになって、はっきりとまだらになったんです。そのときに「これはおかしい」と思って皮膚科に行きました。そこで突発性尋常性白斑だと診断されました。

2024年6月。日焼けをして初めて、「これはおかしい」と病院へ

── 突発性尋常性白斑の原因は、はっきりと特定されていないと聞きました。

西本さん:そうなんです。先生からは「免疫が自分のメラニン細胞を攻撃してしまって、色素が作られなくなる」という話を聞きました。ただ、それ以外のことはあまりはっきりしていなくて、原因もいろいろな説があるみたいです。ストレスとか生活習慣が影響する場合もあるみたいなんですが、正直、僕には思い当たるふしがまったくなくて。不摂生ぎみではあるんですけど、ストレスはそんなに感じていないし…。結局、原因はよくわからないままなんですよね。

── 今はどのような治療をされているのでしょうか。

西本さん:僕はお医者さんと相談し、今のところ何もしていません。塗り薬やレーザー治療など、症状の程度や進行状況に合わせていろいろな治療法があるみたいなんですけど、僕のような後天的な突発性尋常性白斑の場合、白い部分が全身に広がることもあるらしくて。全部白くなっちゃえば、顔のまだらな部分も逆に気にならなくなるかなと思ったんです。おじいちゃんになったときに水色のセーターとか似合いそうじゃないですか(笑)。

── 逆転の発想ですね。

西本さん:ただ、全身に広がる場合もあれば、広がらない場合もあるので、正直なんとも言えないんですよね。だから、今はいったん様子を見て、その後で治療法を決めようと思っています。

── 芸人という、人前に立つお仕事をされているなかで顔に症状が出るのは大変だと思うのですが、苦労などはありますか?

西本さん:それが全然、困っていないんですよね。自分の顔を見て落ち込むこともないですし、まわりの人に何か言われることもありません。友人も「へえ、そうなんだ」くらいの軽い感じで接してくれるので、今までと何も変わらないんです。ただ僕の場合、人前に出る仕事なので、事情を知らない方が見たらびっくりすることはあります。いちいち説明をするわけにもいかないので、メイクで白斑の部分をカバーするようになりました。

「群発頭痛」に苦しんだ20代

── SNSでメイク動画を公開されていますが、どれもかなりポジティブで驚きました。

西本さん:それはいろんな方からよく言われます。病気を公表したときも、フォロワーさんから「明るすぎる」というコメントがたくさん届きました(笑)。

メイク動画をSNSで配信している

── そのポジティブさはどこからきているんでしょうか?

西本さん:もともとの性格もあるんでしょうけど、突発性尋常性白斑の症状が「色素が抜ける」以外に何もない、というのはすごく大きいです。色が白くなるだけで、痛みもかゆみもなくて、本当に健康なんですよ。

── 見た目が変化していくのは、精神的につらいイメージがあります。

西本さん:それは、メイクでどうにかできるという気持ちですね。それよりも、健康でいられることが本当にありがたいです。僕は大学4年生から28歳ごろまで「群発頭痛」という疾患を抱えていたんですよ。これも原因不明で、突然発症した病気なんです。

── どのような病気なのでしょうか?

西本さん:季節性のもので、僕の場合、毎年冬になると激しい頭痛に突然、襲われるんです。30分で終わることもあれば、7、8時間続くこともあって。いつなるかわからないし、一度始まると、うなるほど痛くて動けなくなったり、吐いたりすることもありました。当時はまだバイトをしてたんですけど、いつ頭痛になるかと常に不安でした。頭痛になると立っていられなくなるので、バイトを休んだり、横になったりしてました。

── 頭痛が出たら日常生活ができなくなる、というのは心も体も休まらないですね。

西本さん:そうなんです。1日に何回も症状が出ることもありました。仕事ができないし、電車にも乗れなかったんです。この病気が治らなかったらどうしようって、未来への不安を抱えていました。そのときはさすがにかなり落ち込んで、暗い気持ちになってましたね。

── 群発頭痛は治ったんでしょうか。

西本さん:はい。いろんな人に相談して治療法を探していくうちに、僕に合った治療法が偶然見つかって治りました。今は突然頭痛に悩まされることもなく、健康に過ごしています。だから、突発性尋常性白斑は大変な病気ではあるんですが、痛みもなく健康に影響もないだけで、僕にとってはありがたいという気持ちなんです。

突発性尋常性白斑を発症した経緯をポジティブに語ってくれた西本さん。見た目をカバーするために始めたメイクにもハマり、新たな世界も広がったそうです。

PROFILE 西本たけるさん

にしもと・たける。吉本興業所属のお笑いトリオ「スーパーサイズ・ミー」のメンバー。大河ドラマ鎌倉殿の13人」にも出演するなど、俳優としても活躍。2024年8月に、突発性尋常性白斑であることを公表。

取材・文/大夏えい 写真提供/西本たける

「明るすぎる」と言われた、尋常性白斑の公表動画