ヤマダデンキ、巨大不動産会社へ「くらしまるごと」戦略の全貌
ヤマダが君臨して四半世紀、進む家電販店の棲み分け
テレビCMで家電量販トップのヤマダホールディングス(以下=ヤマダ)、これまでの家電販売から住宅の宣伝に力を入れている。
これはこの先の人口減少を見据えた、家電だけでない「住宅でくらしまるごと」を消費者に売り込む戦略の一環である。
現在は戸建て住宅、リフォームが目立つが、マンション販売、戸建て買い取りなどや不動産事業全般へと幅を広げる構想もある。
群馬県高崎市に本社を置くヤマダが家電販売で日本一に君臨してから四半世紀経つが、家電販売大手の顔触れは15年前後、ほぼ変わっていないという。つまり、家電販売は、急成長が期待できない成熟市場になってしまっているということだ。
加えて、ライバルである大手量販店はそれぞれの棲み分けもできている。
具体的には、ビックカメラは都市圏におけるインバウンド需要に強みを発揮。ヨドバシカメラは、西武百貨店への関与など店舗床を買う商業不動産の賃貸や通販に力を入れる。住宅ローンに強みがあったスルガ銀行に出資していたノジマはソニーのPC部門だったVAIOを買収。ケーズ電機は「頑張らない経営」を掲げ独自路線を進む。
一方、ヤマダは高級プレハブのエスバイエルなど傘下に収めた会社も多く、いまではグループ会社は50社を超える住宅メーカーになっている。
住宅事業の“切り込み隊長”ヤマダホームズ
そんなヤマダの住宅事業を牽引するのが2018年に設立された「ヤマダホームズ」(社長・清村浩一)である。
さまざまな企業を買収するヤマダの戦略は、まさに「成長を買う。時間を買うということ」という。だが、「住宅分野救済型のM&Aは時間がかかる」と積極的な企業買収の戦略について見直しも行っている。その理由は、人口減少下で住宅市場も萎んでゆくことからだという。
買収に次ぐ買収で住宅メーカーに変貌しつつあるヤマダの中核的な存在がヤマダホームズで、 M&Aした住宅関連会社を吸収してきた。
現在の同社の事業領域をみると、建築、土木工事の設計・施行・請負・不動産の売買・賃貸・管理・不動産鑑定・住宅の保守・点検などが幅広い。加えて、家具や内装品、住宅設備機器、医療機器、自動車(EV)の販売も手掛ける。
まさにこの幅広い業務内容こそがヤマダの「くらしまるごと」戦略なのである。
ヤマダが手に入れた主な住宅関連企業は次の通りである。
2017年1月 ハウステック 住宅設備機器
2020年9月 ヒノキヤグループ 注文住宅
2020年7月 秀建 新築戸建住宅分譲 ヤマダホームズグループ
2021年2月 ヤマダレオハウス 住宅販売 ヤマダホームズに吸収合併
2021年2月 ヤマダ不動産 不動産販売 ヤマダホームズに吸収合併
2021年2月 ワイ・ジャスト 住宅リフォーム
2021年2月 家守りホールディングス 住宅リフォーム
そして、2021年には、これら住宅関連会社をまとめる中間持株会社としてヤマダ住建ホールディングスが発足した。
手当たり次第のM&Aに隠された戦略
こうした住宅関連に力を入れるヤマダだが、清村氏は「10年先はわからない社会。2030年には世帯数が減る。総人口が減れば家電も売れなくなる」と話す。
これからは住宅製造販売だけでなく、住生活に多角的な見方ができないと生きていけない時代だ。現在、ヤマダホームズには不動産事業部があるが、さらに不動産事業を拡大し、建設と不動産を兼ね備えた不動産デベロッパーも視野にある。
事業領域が広がるなかで、ヤマダ電機の本体はヤマダホールディンスグスとなり、事業を家電販売、住建、金融、環境の4つのセグメントに分類している。
どれも住宅に関係するが、住建セグメントにはヤマダ住建ホールディングス、ヤマダホームズ、ワイ・ジャスト、家守り、ハウステック、ヒノキヤグループの各社がラインナップしている。これらM&Aで集めた各社によって「くらしまるごとシナジー化」するのが狙いだ。
そして、この延長線上にあるのが住宅と家電をネットでつなげるスマートハウス事業で、今後の経営戦略の中核になる。
また、住宅の周辺分野として、太陽光発電設備やEV充電器の販売や設置、保険やローンなども充実させている。
育成中のEV自動車分野では、トヨタ系の人材を引き抜いている。現在は、家電やITなど最新設備を備えたYAMADAスマートハウスを2024年から供給している。同年秋からは米テスラの家庭用蓄電池を、全国1000店の家電量販店で順次注文を受け付け、販売を開始。ヤマダの住宅や太陽光発電設備と組み合わせる。
屋根に設置した太陽光発電の電気を販売も可能にしつつ蓄電池に充電。電気を自分で作って自分で使うというのがヤマダが考えるスマートハウスの戦略の最終形だ。
さらに家の発電装置や蓄電池を制御する仮想発電所(VPP)の構想も温めており、電力供給で家庭の電気代の削減を目指している。
実際、旧レオハウス系の住宅とEVのセットで、3000万円程度で売る先端住宅も販売メニューにある。
銀行から保険…住宅事業を支える周辺事業
こうした住宅販売を支援するのが金融セグメントである。
住宅販売のローン完済時に80歳未満であれば、最長50年の住宅ローンが組める。月々6万円程度の賃貸住宅の家賃並みの安さをPRしている。
ヤマダファイナンスサービスでは住信SBIネット銀行とも提携し、「ヤマダNEOBANK」を作って銀行業を始めている。期間固定金利住宅ローン「ヤマダフラット35」「ヤマダNEOBANK住宅ローン」。リフォームや家電・家具ご購入 のお客様には「ヤマダリビングローン」などを提供している。
また、リフォームの相談窓口を置く大型店は30店から80店規模にする構想だ。
2022年12月に買収したフラット35専門ハウス・デポ・パートナーズでは、10割融資を可能とする変動金利型住宅ローン「ハウス・デポ【MIX】」のほか、各種保証・損害保険も扱う。
このほか、クレジットカードのヤマダフィナンシャル、火災保険・地震保険を扱うヤマダ少額短期保険がある。
目指すは「くらしのテーマパーク」か
課題はショッピングモールのような幅広い集客だ。大規模な実験店舗の前橋吉岡店(約4000坪)では、膨大な敷地に住宅展示場などを設けた。
ここはまさに「くらしのテーマパーク」といった感じで、ここに行けば家電、家具、インテリア、太陽光発電、EV、蓄電池などさまざまな暮らしの品々をまとめて購入できる。目玉はテスラ製の蓄電池で、この蓄電池はヤマダでしか販売していないので、家電量販店の差別化にもつながりそうだ。
昨今、郊外の戸建て住宅が強盗に襲われる事件が頻発しているが、こうした事件が頻発する直前の2024年3月には、警備業のALSOKと提携。ホームセキュリティにもいち早く取り組んでいる。
また、社会問題となってきている空家対策については、子会社の「家守り」が対応。定期的に訪問し、家をチェックし、管理するという「空き家見守りサービス」を展開している。
住宅販売方法は独特で、健康関連も家電や美容製品のように「健康寿命を延ばす家」と位置づけ、現場の営業マンに対しては「住宅を箱としてだけではなく、健康な暮らしを彩って守るデバイスの集合体として売る姿勢を身につけさせたい」と清村社長は話す。
とはいえ、こうした業務拡大には反動もある。「ダボハゼ」にも見える超多角経営(?)に消極的で抵抗を感じ、転職してしまう社員もいないわけではないのだ。セールストークがモノをいう住宅と家電の販売の営業スタイルは親和性が高いが、住宅販売は保守的だけに、個々の営業マンは水と油というほど違うらしい。そこで会社の縦割り構造を打破し、家電と住宅を両建てで幅広く考えることができる人材をつくることが課題になっている。
「くらしまるごと」で葬祭事業もカバーする時代も?
このように住宅に力を入れるヤマダが向かう方向には、前にも指摘したようにデベロッパー業も視野に入る。ただ、マンションの建設や販売についても構想はあるものの、大きな柱とは考えていない。ビル建設や大規模商業施設のプロデュースは別だという。
「異業種進出といっても、あくまでも「くらしまるごと戦略」が基軸だ」
人口減少が進む日本社会において、「くらしまるごと」なら、冠婚葬祭市場への参入も将来は検討の余地があるだろう。
婚姻数の減少が地域の少子化につながり、家電や住宅需要を蝕み、空き家を増やすからだ。
2030年には、団塊世代が80歳代に突入し多死社会がやってくる。葬祭サービスの専門業者もM&Aなどで流動化の兆しがある。
実際、2024年12月には中国資本傘下の火葬企業の「東京博善」が、これまでの暗黙のルールを破って葬儀事業に参入を果たしている。
揺りかごから墓場までのあらゆる領域の新事業に手を伸ばすヤマダ。稀有なカテゴリーキラーの2025年の動きを注視したい。
