「日本に2度と負けない」とアピール

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ホワイトリスト除外から始まった「日本不買」だったが…

「我々は2度と日本に負けないつもりです」――。昨年8月2日、当時の安倍内閣が韓国をホワイトリストから除外すると決めた日、文在寅大統領がテレビで生中継された緊急閣議で、日本政府に即時対応すると発表して放った言葉だ。

【写真】恩を仇で返す人々…

 韓国の多くの人々は「日本製品不買運動」を拡散させると同時に、日本政府を糾弾する集会を続けるなど反日感情を高め、文在寅大統領は支持率確保に成功したが、一方で日韓関係は急激に冷え込んだ。

 それから1年が経った現在、国会で進行中の国政監査では、文大統領の当時の言葉を恥じる他ない事実が続々と明るみになっている。

「日本に2度と負けない」とアピール

しかも、その声は親文在寅政党である「共に民主党」(以下、民主)所属の国会議員からあがっているものだ。

 今年の国政監査で民主の国会議員らは、韓国の主要公共企業体と傘下の国家機関が日本の金融会社から受けた融資額、日本企業から購入した製品の種類と総購買額などに関する統計を発表した。

 その結果は、残念なことに「依然として日本に負けている状況」を証明しており、むしろ「韓国は日本の配慮がなかったら、公共機関が窮地に陥る可能性があった」ことを示唆していた。

 民主所属の文貞福(ムン・ジョンボク)議員が11日、国政監査を通じて明らかにした事実によると、韓国道路公社と仁川(インチョン)国際空港公社は、三菱東京UFJ銀行からこの3年間にそれぞれ1000億ウォン(約92億円)と900億ウォン(約82億8000万円)の借入金を調達し、三菱東京UFJ銀行は2社から約100億ウォンの利子を受け取っていた。

 韓国道路公社はこの借入金を高速道路建設と不足した資金繰りに充てた。 仁川国際空港も空港施設工事に借入金を充てたことが分かった。

三菱東京UFJはコールオプション行使を封印して配慮したにもかかわらず…

 注目すべき点は、韓国道路公社と三菱東京UFJ銀行間の融資契約に特別約定事項として「コールオプション」条件が含まれていたことだ。

 コールオプションとはCD(譲渡性預金)の金利変動によって、満期前でも貸し手が借入元利金全額の即時返済を要求できる権利だ。

 昨年、日韓関係が冷え込み韓国内の反日感情が高まった時期、韓国道路公社と三菱東京UFJ銀行の融資契約期間は満了し、三菱東京UFJ銀行は韓国道路公社に融資契約に対するコールオプションの権利を行使し、借入金を直ちに返済するよう要求することができた。

 理由は分からないが、三菱東京UFJ銀行は韓国道路公社にコールオプションを行使せず、この配慮により、韓国道路公社は約92億円の即時返済という危機を回避することができたのだろう。

 しかしながら、この事実について民主議員は、三菱東京UFJ銀行の配慮すら無視したような発言を行った。

 文貞福議員は「三菱は日本の右翼勢力を代表する自民党に大金を寄付してきたが、元強制徴用工賠償責任には徹底して無視する代表的な戦犯企業」とし、「三菱東京UFJ銀行は日本の戦犯企業関連銀行であり、ここの資金を国家基幹産業に投入することで、日本の経済侵略の標的になり得る」と指摘したのである。

 恩を仇で返すという表現がこれほど当てはまることも珍しい。

 昨年、文在寅政府と与党・民主が中心となり、「NO JAPAN」運動が拡散した時期に、むしろ韓国の国家機関による日本製品購入は絶えなかったという事実も明らかになった。

 民主所属の梁敬淑(ヤン・ギョンスク)議員は、日本の経済産業省に当たる韓国の調達庁が発表した国政監査資料を根拠に、2013年から今年7月まで、韓国の国家機関や各省庁の傘下機関が「戦犯企業」と見なした日本企業から購入した物は約4547億6000万ウォン(約418億1431万円)だったと指摘。

「戦犯企業の製品を購入することは、青少年の歴史認識にも悪影響を及ぼす」

 このうち日立からの製品購買額が1989億8000万ウォンで最も多く、富士通(1159億3000万ウォン)、パナソニック(915億3000万ウォン)、東芝(241億4000万ウォン)、三井(127億9000万ウォン)、ニコン(106億9000万ウォン)、三菱(3億4000万ウォン)の順だった。

 これらの会社の製品を韓国の国家機関、準国家機関、さらには教育機関でも購入した。

 主な購入品はボールペン、アイロン、コピー機、プロジェクト、ビデオカメラなどで、さらに日本製アイロンは、2018年2月に開催された平昌冬季五輪の各国選手たちが、合宿所で使えるように購入していたことが分かった。

 別の民主議員も同様の統計を出しているが、鄭成湖(チョン・ソンホ)議員は2015年から今年8月まで、韓国の国家機関が日立、富士通、三菱などの日本の戦犯8社製品を購入した実績は141件に達し、昨年も約51億ウォン、今年は57億ウォン規模の製品を購入したと明らかにした。

 特筆すべきは、国家機関が購入した外国製品全体の内、日本製の割合は昨年5%から今年13%まで上昇したことだ。

 結果的に韓国政府は国民に対し、日本製品不買を扇動する一方、自国の国家機関は、三星やLG製品よりも日本製を好んで使っていることに疑問を持たざるを得ない。

 にもかかわらず、これらを指摘した民主議員は「依然として日本依存から抜け出せずにいる」「いかなる問題意識もなく日本の戦犯企業の製品を購入することは、青少年の歴史認識にも悪影響を及ぼす恐れがある」と語っている。

 文大統領は反日感情利用のために、自国民が日本製品を購入する自由を抑制するのだろうか。

「今日も負け続けている」という現実は認めていない文大統領

 韓国政府の政策に対する問題提起と国民生活の発展のために行われる国政監査で、国家機関の日本製品の購入規模を調査・発表し、反日感情を訴える国会議員が、果たして世界のどの国にいるか疑問だ。

 資金が必要だからと融資し、借入者に配慮して行使できるコールオプションの権利を満期まで封印した。

 これを「経済侵略」と言うなら、言葉が過ぎるどころか妄想に近い。

 自分にとって不快な戦犯企業の借入金を利用して建設した高速道路を、文貞福議員は絶対に利用しないのか。

 外国へ行くときに仁川国際空港ではなく他の空港を利用するつもりなのか。

 コールオプションの権利を行使しなかった三菱東京UFJ銀行に、むしろ「冷え切った日韓関係にもかかわらず賢明な判断をした」とは言えないのか。

 文在寅大統領と民主の国会議員たちは、韓国の国家機関と国民が日本製品を購入して使用する自由を尊重できないのか。

 国やメーカーを問わず、消費者が良い品質を好むのは当然であるのに、なぜ国家間の問題を引き合いに出し、自国民の権利を強制的に制限させて軋轢を増大させようとするのか。

 それでも文大統領は「今日も負け続けている」という現実は認めていないようだ。

田裕哲(チョン・ユチョル)
日韓関係、韓国政治担当ライター

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月20日 掲載