残業激増も賞与は4.45ヵ月分…やっぱり「公務員」は最強か?

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日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、公務員と民間企業の「給与」についてみていきましょう。

コロナ禍で残業時間100時間超!疲弊する公務員

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、公務員の労働時間が増えています。株式会社ワーク・ライフバランスは「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」を実施し、今年3〜5月までの働き方について国家公務員480名から回答を得ています。それによると約4割にあたる176人が「過労死レベル」である「単月100時間」を超える時間外労働をしていることがわかりました。さらに「200時間〜299時間」との回答は20人、「300時間以上」との回答は5人いました。

2019年4月に改正労働基準法が施行され、民間企業では原則1ヵ月の時間外労働時間は45時間が上限とされ、特別条項適用で単月100時間未満、複数月平均で80時間が上限となっています。国家公務員は労働基準法の対象外とされていましたが、人事院事務総局職員福祉局長による通知でも原則、1ヵ月の時間外労働時間の上限を45時間と定めています。

またNHKは新型コロナウイルス感染の第一波がピークを迎えた4月前後に、少なくとも1都13県で、自治体の職員の労働時間が「過労死ライン」を超えたと伝えています。

このような現状は、教職員の間でも同様のようで、ある地方の小学校教諭は「コロナ対応で計画通りには当然進められず、急な通達により右往左往するばかり」「毎朝7時半に登校し、帰宅は11時を超える」「中止になった運動会や修学旅行の代替行事を行わなければならず、業務がさらに増えている」など、コロナ対応で混乱する現場の様子を教えてくれました。

そしてその教員は、「もう教師をやめたい……」とこぼし、本気で転職を考えているというのです。教員曰く、「先月の残業時間は200時間」と限界に達しているようで、このコロナ禍、民間企業も大変だと諭しても、その意思は固いようです。

残業しても残業しても…(※画像はイメージです/PIXTA)

民間企業がどれほど大変な状況か、みていきましょう。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、8月の現金給与総額は、前年比−1.8%の35万1378円(速報値)。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出された4月以降、前年比割れが続いています(図表1)

[図表1]民間企業の給与の推移 出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」より作成

また一般財団法人企業共済協会による「企業倒産調査」によると、2020年9月の倒産件数は、負債総額1,000万円未満の倒産で前年比35.7%増の57件、1,000万円以上は前年比−19.5%の565件となっています。コロナ禍の影響で厳しい経営環境は続き、「コロナ関連の倒産」が増えていると伝えられていますが、如実に数値に表れているとまではいえない状況です。ただ遠くない将来、コロナ禍の影響が倒産件数にもみえてくることは誰もが予測するところです(図表2)

[図表2]倒産件数の推移 出所:一般財団法人企業共済協会「企業倒産調査」より作成※表枠内上段は負債額1,000万円未満の倒産、下段は負債額1,000万円以上の倒産

国家公務員と地方公務員、年収は?

コロナ禍の不安定な状況下で、公務員から民間企業への転職は、どうなのでしょうか。公務員に対して思うところは人それぞれ違いますが、安定性と給与が魅力であると答える人は多いでしょう。

公務員は、大きく国家公務員と地方公務員に分けられます。人事院の「国家公務員給与等実態調査 平成31年調査結果」によると、国家公務員は252,809人いて、平均年齢は43.1歳。俸給(国家公務員に対して支払われる給料)は平均33万8,969円で、地域手当等、扶養手当、住居手当、 俸給の特別調整額*など合わせた平均給与月額41万7,683円。さらに夏冬の賞与(期末・勤勉手当)を合わせると、平均年収は630万円ほどになります。課長クラスになると年収は1,000万円を超え、退職時には富裕層に仲間入りという人も珍しくないので、やはり国家公務員、給与だけみれば、憧れの職業だといえるでしょう。

*職務の複雑、困難もしくは責任の度または勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤労条件が同じ職務の級に属する他の官職に比して著しく特殊な官職に対し、その特殊性に基づいて俸給月額を調整するために支給されるもの

地方公務員は、自治体によって給与はさまざまですが、最も給与水準の高い東京都の場合、基本給は34万5,497円で、諸手当を含めた給与月額合計44万8,766円。さらに夏冬の賞与(期末・勤勉手当)の185万8,000円を含めると、平均年収は724万3,192円にもなります。

ちなみに地方公務員で最も平均給与が低い沖縄県で、月額36万9,220円。賞与160万4,700円を合わせると、年収は600万円を超えます(図表3)

[図表3]都道府県別「地方公務員の給与ランキング」トップ10 出所:総務省「給与・定員等の調査結果等」より作成

では民間企業の年間給与はどうなっているのでしょうか。国税庁の「民間給与実態統計調査」(平成30年分)によると、給与所得者数は5,026万人で、平均年間給与は441万円。企業規模別でみていくと、資本金5,000万〜1億円で349万円、1億〜10億円で378万円、10億円以上で473万円となっています。

民間企業の場合、正規雇用と非正規雇用が混在し、一概に民間企業の給与は低いといえませんが、それでも先行きの見えない不景気な世の中では、公務員が魅力的にみえるでしょう。

しかし、コロナ不況は、公務員の給与にも影響を与えています。先日人事院は、新型コロナウイルス感染拡大で民間の支給水準が低下していることを踏まえて、2020年末の国家公務員の期末・勤勉手当を0.05ヵ月引き下げて年4.45ヵ月とするよう国会と内閣に勧告しました。ボーナスのマイナス改定を求めるのは10年ぶりで、年間給与は平均2万1,000円ほど減る見通しです。

それでも賞与ゼロ、減給……と厳しい民間企業の懐事情を鑑みると、うらやましいと感じる人も多いでしょう。また以前は「勤め上げれば退職金が……」と、将来設計が描けましたが、いまは退職金制度を廃止する企業も増えています。もはや「正社員であれば安心」という時代は終わってしまったのです。

国家の危機的状況のなかで、多くの公務員が時間を度外視して働いています。なかには前出の教員のように、限界に達している人もいるでしょう。そのなかで、給与が高い・安いの議論はナンセンスかもしれません。ただ大企業でさえ倒産しかねない、このコロナ禍。公務員の安定性は、会社員にとってこの上ない憧れにうつるでしょう。