by Michael Tapp

1990年代から2000年代にかけて、早食い・大食いを競技化した「フードファイト」が人気を博し、多数のテレビ番組が登場したことを覚えている人もいるはず。そんなフードファイトや激辛料理などを食べるフードチャレンジが人気を博したのには、「人間の心理」が密接に関連しているとニュースメディアMashableが解説しています。

Gross food videos: Why you can't look away

https://mashable.com/article/gross-food-challenges/

日本人の小林尊選手が当時の世界記録の2倍に当たる量のホットドッグを完食し、センセーショナルなデビューを飾ったことでも知られるネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権に代表されるように、フードファイトやフードチャレンジは海外でも人気のあるジャンルです。YouTube上では、ひしゃく1杯のシナモンパウダーを食べる「#CinnamonChallenge(シナモンチャレンジ)」、激辛唐辛子ブート・ジョロキア(別名ゴーストペッパー)を食べる「#GhostPepperChallenge(ゴーストペッパーチャレンジ)」などのフードチャレンジが定期的に話題なり、多数の挑戦者が現れています。

以下の「シナモンチャレンジ」のムービーはYouTube上で大いに流行し、多数のフォロワーが登場。大勢の人がシナモンパウダーをそのまま食べるというチャレンジを実行しました。シナモンチャレンジの流行によって「シナモンチャレンジが健康に与える影響」などの科学的研究が行われた結果、「シナモンチャレンジは肺に危険」ということが明らかになっています。

The Cinnamon Challenge ... by GloZell and her Big Behind Earrings - YouTube

Mashableはこのようなフードファイト・フードチャレンジのムービーについて、「見た目が不快だが、見始めたら止まらない」と言及。その原因について、「良性のマゾヒズム」という心理学的な理論を挙げました。

良性のマゾヒズムはペンシルバニア大学の心理学者であるポール・ロジン氏が提唱した「自分の身が確実に安全だといえる状況で、不快な出来事や怖い出来事を経験することは楽しく感じる」という法則。ジェットコースターやホラー映画などは良性のマゾヒズムの好例です。良性のマゾヒズムについて、フランクリン&マーシャル大学発達心理学部のジョシュ・ロットマン教授は「安全が確保された状態で、危険に身をさらすというのは、楽しく感じるものです。これが良性のマゾヒズムです」と説明しています。



セントラルフロリダ大学心理学部のブリジット・ルーベンキング教授は、フードファイト・フードチャレンジはこの良性のマゾヒズムをうまく利用したコンテンツだと説明。「フードファイト・フードチャレンジの生み出す嫌悪感は人を引きつけ、モニターを通してコンテンツを見るという体験が『自分の身が確実に安全』という保証を生み出している」と語りました。

Mashableによると、YouTubeなどで公開されているフードファイト・フードチャレンジムービーは、近年過激になっているとのこと。このことについて、ルーベンキング教授は、「どんなに衝撃的な内容であっても、我々は時間がたつうちに見慣れてしまうという傾向があります。そのため、聴衆の反応を引き出すために、不快なフードファイト・フードチャレンジのムービーが増えても不思議ではありません」と説明しています。



フードファイト・フードチャレンジが魅力的に感じられてしまうのは、以上の良性のマゾヒズムに加えて、人間の学習機能にも根ざしているとロットマン氏は指摘。ロットマン氏によると、幼児に関する研究から、人は「生存の可能性に関連しているものを見つめる」ことが楽しく感じられると判明しているとのこと。食べ物はそれ自体が生存の可能性と密接に関連しているため、フードファイト・フードチャレンジなどの食べ物を扱うコンテンツを見ることは楽しく感じられるというわけです。

また、嫌悪感もフードファイト・フードチャレンジの魅力に関連しているそうです。ロットマン氏は、「嫌悪感を共有するということで、グループの連帯感を生み出す」と主張。七面鳥の睾丸のような「気持ち悪いものを食べる」というフードチャレンジムービーでは、出演者が嫌悪感を露骨に表すという場合があります。視聴者は同じ嫌悪感を抱くことで、出演者に対して連帯感を持つとのことです。