商用車「死亡事故ゼロ」に挑む、日野自の運転手対応とは?
羽村工場(東京都羽村市)のテストコースで、新しい自動検知式「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」を搭載し7月1日に発売する大型観光バス「セレガ」に試乗し、異常停止のデモンストレーションを体験した。車両が徐々に加速し、速度が60キロメートルを上回る。一定時間、運転手が姿勢をくずし、走行車線から外れるとシステムが反応した。車内外に大きな警告音を鳴らしつつ、車両は徐々に減速し、停止した。
「安全を担保することは商用車メーカーの社会的責務だ」。奥山宏和先進技術本部副領域長はこう強調する。日野自は2020年代に高速道路の死亡事故ゼロ、30年代に一般道の死亡事故ゼロを長期ビジョンとして掲げる。ただ近年は運転手の健康状態から発生する商用車の事故は増加傾向だ。全体件数が減る中でペダルの踏み間違い事故も横ばいが続く。
日野自が投入した19年モデルの商用車にはさまざまな先進安全機能を新たに搭載した。その一つがセレガに搭載した商用車初の自動検知式EDSSだ。従来のEDSSは運転手の急病時などに乗客らが非常ブレーキスイッチを押すことで車両を減速し、停車させるシステムだった。自動検知式EDSSの実現には、人工知能(AI)を活用し顔認識の精度を高めた「ドライバーモニターII」も生かした。運転手の顔の向きや目の開閉状態だけでなく、姿勢の崩れまで検知できる。
大型トラック「プロフィア」や小型トラック「デュトロ」でも安全装備を拡充した。デュトロでは、建物に張られている透明なガラスなども検知し、アクセルを踏み間違えた場合でもブレーキで前進誤発進を抑制する機能を設けた。プロフィアには、一般道での巻き込み事故の対策として「サイトアラウンドモニター(右左折時警報システム)」を採用した。車両の左右前端に設置したセンサーが歩行者らを検知し、警告音でドライバーに知らせる。
先進的な安全技術の開発とともに、死亡事故ゼロの実現にはできるだけ多くの車両に安全装備を拡大しなくてはならない。乗用車でも広がりつつある後付け装備の充実も重要だ。奥山氏は「制御の入る新しいシステムをどう後付けするか。2―3年前に購入した車両にもどう対応していくか」と話し、次の課題にも積極的に取り組む構えだ。
