今月3日に発表された金融庁の"老後2000万円不足"報告書問題。11日に麻生財務大臣が「これまでの政府の政策スタンスとも異なっているので、担当大臣としては、これは正式な報告書としては受け取らない」と発言したことを受けて金融庁が謝罪に追い込まれるなど、事態は収拾の見通しが立っていない。また、立憲民主党会派の大串博志議員が「年金はお受け取りになっていらっしゃいますか」と尋ねた際、麻生大臣が「受け取っていないと思う」と答えたことも“国民目線ではない”と批判の対象になっている。野党はこの問題を追及するために予算委員会を要求したが、与党は「報告書はない」と応じず、代わりに質問時間が制限される党首討論の開催を提案。立憲民主党などの野党は妥協し、これに応じる意向を明らかにしている。

 16日にAbemaTVで放送された『Abema的ニュースショー』に出演した日本におけるセイバーメトリクスの第一人者でユニークな統計学全般の研究を行っている江戸川大学客員教授の鳥越規央氏(49)は「実によくできている」と切り出すと「前半部分の現状報告は読みやすい、分かりやすいデータで高齢化問題や収入と支出の問題についてまとめてある。65歳で働き口が無くなった時に、月で約5.5万円が不足する。対して65歳から95歳まで生きる人の確率は全体の1/4にもなるので、皆さんちゃんと貯蓄をしてくださいということが、提言としても正しく書いてある」とその理由を説明した。さらに鳥越氏は、「自分が教鞭をとる統計の授業で、この資料を使うつもりだ。誤魔化しが無い」と続けた。

 ネット問題に詳しい文筆家の古谷経衡氏(36)も「大学1年生の基礎教養にちょうどいい」と同調すると「2000万円貯めなければどうしよもないということではなく、そのくらいの備えがあった方がいいということを非常に丁寧に書いているのに、2000万円だけが独り歩きしている」と問題点を指摘。さらに「30分くらいで読めるのに、みんな読んでないでしょ。非常に真っ当な報告書だ」と話し、炎上ありきの無関心、無知識に苦言を呈した。

 「類似の報告書は今までにもたくさんあり、新しさもない」と話したのは、元日経新聞記者で作家の鈴木涼美氏(35)。鈴木氏は「客観的と思われているデータをまとめた報告書が政局の都合で出したり引いたりされている。むしろ、データを出してもらえない方が怖い」と訴えた。

 元衆議院議員という立場から意見を述べたのは金子恵美氏だ。この報告書が高齢化社会における資産管理についてまとめられたものであるという前提を加えた金子氏は「年金不安ということになると、政権は過剰に反応する。年金給付が削られるということについてみなが何となくわかっている中で、『年金問題をどうするのか』という前向きな議論のきっかけにせず、報告書自体無かったことにしてしまうというのは、都合が悪いものはダメで、恣意的な物しか許されないという政治の姿勢だ」と話し、今回の対応を批判した。

 また金子氏は“引っかかること”として、「審議会というのは有識者に対して諮問している。有識者の意見や見解を求めるための場。仮に政権のスタンスと違ったとしても、一つの意見として参考に政策立案をすべきだ」と訴えると、身近な議員の話として「報告書の内容は正しいが、選挙をする側にとっては、出してくる時期が最悪だ」という声が聞かれたことについて「国民が悩んでいる年金問題を直視できず、そのままにして選挙に臨もうとしている。さらに(報告書は)不都合だと言われてしまったら、『日本の政治は終わった』と思わざるを得ない」と残念そうに述べると、野党に対しても「ここぞとばかりに批判に回るのではなく、年金はもちろん、社会保障全体について議論すべき。高負担、高福祉を提案して選挙に臨んだっていい」と注文をつけた。

(C)AbemaTV
【見逃し視聴】
年金報告書問題、「内容は正しいが、選挙に不都合だ」と周囲に漏らした議員発言に金子恵美氏「日本の政治は終わった」/本編27分〜
老後2000万円不足問題 炎上の一方で“高年収”の人にある共通点が!?