日本生まれで国内初のバーガーチェーンとして知られる「ドムドムハンバーガー」が昨年12月8日、ロゴも制服も一新し再出発のための一歩を踏み出しました。さらに6年ぶりとなる新規店舗も開店、競争が激化するハンバーガー業界で同社はかつての輝きを取り戻せるのでしょうか。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者・佐藤昌司さんがドムドムハンバーガーの今後を占います。

「ドムドム」が復活。マクドナルドに勝つために必要なこととは

象のブランドロゴでおなじみのハンバーガーチェーン「ドムドムハンバーガー」が新しく生まれ変わり、復活を遂げるべく出店を強めていくようです。

ホテル事業や再生事業を手掛けるレンブラントホールディングスは12月8日、ダイエー傘下のオレンジフードコートから昨年7月にドムドムハンバーガー事業を承継してから初の新規出店店舗となる「ドムドムバーガー厚木店」(神奈川県厚木市)をオープンしました。ドムドムハンバーガーから新規店舗がオープンするのは約6年ぶりのことです。15日には「ラフレ初生店」(静岡県浜松市)もオープンしています。

「ドムドム」と聞いて懐かしく思う人も少なくないのではないでしょうか。1号店を東京都町田市に出店したのが1970年で、マクドナルド(71年)やモスバーガー(72年)よりも早く日本で展開を始めた国内初のハンバーガーチェーンとされていますが、近年はドムドムバーガーの名前を聞くことはめっきり少なくなっていました。

かつて、ドムドムハンバーガー第1号店が入っていた、ダイエー町田店(開店当時の名称は、ダイエー原町田店)。ドムドムはここから始まった。Googleストリートビューより

かつてはダイエー系列のスーパーを中心に出店を重ね、最盛期の90年代には全国で約400店を展開することもありましたが、2004年にダイエーが経営不振に陥ったこともありその後は縮小を余儀なくされ、事業の承継が発表された昨年5月19日時点では43店にまで減りました。現在はさらに減って35店になっています。

ちなみにドムドムハンバーガーの名前の由来ですが、当初、親会社のダイエーの企業理念「良い品をどんどん安く」から「ドンドン」にする予定でしたが、すでに商標登録されていたため、NをMに変えて「ドムドム」にしたといいます。ブランドロゴは、優しくて力持ちで子供が親しみやすいということで象を採用しました。

新ロゴは、以前からの「象」を継承し「D」を強調。より親しみやすいデザインに変更された

こういった経緯がある中で、新たな運営会社のドムドムフードサービスはドムドムの再スタートを切ることになったのですが、まずはイメージを刷新するために新たにブランドロゴ(象は継承)と制服を考案し、昨年9月に発表しました。また、ツイッターなどSNSを新たに開設し情報発信を開始したり、メニューの刷新も行なっています。そして前述した通り、新店を2店オープンするに至ったのです。

SNS開設記念として開催された「第一回復活メニュー決定戦」では、エントリーされた9商品の中から2014年に販売されていた「ドムミートバーガー」が1位に選出された

こうしてドムドムは新たな戦いの号砲を鳴らしたわけですが、ハンバーガー業界の競争は激しさを増しており、かなり厳しい前途が待っているといえるでしょう。

それではこれからドムドムの競争戦略を考察していきたいと思いますが、そのために競争戦略上重要な要素となるドムドムのハンバーガーの価格帯をここで確認しておきます。ドムドムのハンバーガー単品の価格帯は200〜460円程度です。ドリンクMサイズ・ポテトフライMサイズのセット(以下、Mセット)だと530〜790円程度になります。

公式サイトのメニュー一覧より。コアなドムドムファンが復活を熱望していた「お好み焼きバーガー」もレギュラーメニューとして9月1日より販売

一方、競合のマクドナルドのハンバーガー単品(セットにできるものに限る)の価格帯は200〜490円程度です。Mセットだと500〜790円程度になります。価格帯はドムドムとあまり変わりはありませんが、マクドナルドは100円のハンバーガーやドリンク、スイーツが充実しているので、マクドナルドの方が安いイメージがあると言っていいでしょう。また、扱っている品目数がドムドムを圧倒しています。

マクドナルドは14年7月に発覚した期限切れ鶏肉使用問題で客離れが起きましたが、それから3年半が経過し、いまは客足が戻りつつあります。既存店売上高は17年12月までで、25カ月連続で前年を上回っています。店舗数は減少傾向にあるものの、それでも全国で約2,900店を展開し、ドムドムを圧倒しています。

ドムドムとマクドナルドはほぼ同時期に日本に上陸しました。しかし、明暗はくっきり別れています。前述した通り、ドムドムの退潮はダイエーが衰退したことが大きく影響したのですが、一方でスタートの切り方も大きく影響したと考えられます。

前述した通り、ドムドムは第1号店を町田に出店しましたが、マクドナルドは東京・銀座に出店しています。日本マクドナルドの創業者である藤田田氏は銀座でのスタートにこだわりました。かつて新しい文化が奈良や京都から全国に広がっていったように、マクドナルドも日本の文化の中心地である銀座からスタートした方が全国に広がると考えたためです。この読みは当たり、銀座の1号店は開店当初から若者や家族連れを中心とした客が押し寄せ、開店2〜3カ月も経つと日商が100万円を突破するようになったといいます。

日本マクドナルド「おかえり!マッククルー」HPより。1971年東京・銀座の三越に開店したマクドナルド日本1号店の様子。当時はテイクアウト専用だった

一方、ドムドムはローカルハンバーガーチェーンの域を出ませんでした。ダイエー系列のスーパーに多く出店したため、主婦や家族連れを取り込むことはできたものの、ブームの火付け役となる若者を取り込むことができなかったのです。

また、マクドナルドがアメリカから渡ってきたのに対しドムドムは日本企業のダイエーが開発したという発祥の違いも影響しました。当時はアメリカに強い憧れを抱く人が多かった時代だったので、多くの人がマクドナルドを憧れの眼差しで見たのです。その影響は現在の感覚では計り知れないものがあるといえるでしょう。

こうした経緯があった中でドムドムは再出発を図ります。マクドナルドとは大きく差が開いてしまっているため、ドムドムが今後出店する際はマクドナルドとの競合を避ける必要があります。地名度と価格競争力の点において敵わないといえるでしょう。

とはいえ、マクドナルドと完全に競争を回避することは困難です。ドムドムが店舗網を広げていく中で、少なからず競合が発生することになるでしょう。その際に、現状の低価格帯のままでは勝負に勝つことは困難です。そのため、もう少し価格帯を上げる必要があると私は考えます。

価格帯を上げたことで軌道に乗りつつあるハンバーガーチェーンがあります。ウェンディーズ・ジャパンが展開する、ウェンディーズとファーストキッチンのコラボ店「ファーストキッチン・ウェンディーズ」です。1号店を15年3月に東京・六本木に出店し、現在は26店を展開しています。コラボ店ではファーストキッチンで扱っている一部のメニューのほか、ウェンディーズのバーガーや両ブランドのコラボバーガーも販売し好評を得ています。

ファーストキッチンのハンバーガー単品の価格帯は220〜550円程度で、Mセットだと610〜940円程度です。ドムドムよりやや高い設定になります。一方、コラボ店で扱うウェンディーズバーガーやコラボバーガーの価格帯が370〜900円程度と高いため、コラボ店の価格帯は押し上がる形でファーストキッチンよりも高くなっています。もちろん、価格に見合うだけの高付加価値バーガーが投入されているので、それらを目当てにした客で賑わっているようです。

ファーストキッチン・ウェンディーズ公式HPより、ハンバーガーメニューの一部。高価格帯のバーガーがズラリと並ぶ

近年、高級グルメバーガーが話題を呼んでいます。15年7月にニューヨーク発の「ベアバーガー」の1号店が日本に上陸しました。15年11月にはニューヨーク発の「シェイクシャック」が、16年3月にカリフォルニア発の「カールスジュニア」が、17年3月にロサンゼルス発の「ウマミバーガー」が、それぞれ日本に1号店をオープンしています。どれも高価格帯の高付加価値バーガーを販売し人気を博しています。

こうしたこともあり、ドムドムでもある程度高価格帯の高付加価値バーガーを投入するべきだと考えます。消費者のハンバーガーに対する価格受容範囲の上限は高まっているため受け入れられるはずです。そして、昔ながらのドムドムのハンバーガーも大事にし、新旧織り交ぜたラインナップにすることで差別化を図るのです。

いずれにしても、ドムドムの再出発に注目したいところです。

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image by: WikimediaCommons(Tokumeigakarinoaoshima)

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