「鰻の成瀬」がわずか3年で《閉店ラッシュ→破産寸前》にまで追い込まれるに至った「残当すぎる原因」
「うまい鰻を腹いっぱい!」をコンセプトに、外食業界でも異例のスピードで全国展開を推し進めてきたうなぎチェーン「鰻の成瀬」。2022年の創業以来、ピーク期には全国400店舗近くまでその勢力を伸ばしていたのだが……。ここへきて急転直下、まさかの“身売り”が報じられた。
「現代ビジネス」ではこれまで、「鰻の成瀬」の苦境ぶりを度々報じてきた。昨年秋ごろの閉店ラッシュに、赤字店のFCオーナーによる苦情騒ぎ――その成長具合とは裏腹に、一貫して同チェーンのビジネスモデルに限界があると指摘してきたのだ。
なぜ「鰻の成瀬」は、わずか3年という、かの「いきなり!ステーキ」も驚きのスピードで急拡大できたか、そこから閉店ラッシュが起き、M&Aに頼らざるを得ないほど破産寸前にまで追い込まれてしまったのか。その原因をあらためて探っていく。
【前編記事】『うなぎ帝国を築いた「鰻の成瀬」が一夜にして崩壊…“たった5800万円”で買い叩かれた「残酷なウラ事情」』よりつづく。
店舗急増は「評判が良い」からではなく…
すでに報じられている通り、「鰻の成瀬」を運営するフランチャイズビジネスインキュベーション(以下、FBI社)は、AI関連を中心に投資事業を手がけるAIフュージョンキャピタルグループ(以下、AIフュージョン)の連結子会社となることが決まっている。
AIフュージョン側の発表によれば、〈現時点において同ブランドは270店舗(直営・FC 合計)まで拡大しており、今後も出店余地は大きく、中期的には 400 店舗規模への成長ポテンシャルを有していると認識しております。〉として、「鰻の成瀬」を高く評価する様子が読み取れる。
そもそも、「鰻の成瀬」が急成長を遂げてきた背景には、どのような要因があったのだろうか。フードビジネスコンサルタントの永田雅乙氏が解説する。
「ひとつは、うなぎ専門店でありながら“職人不要”を前面に打ち出した点です。従来の店であれば、『串打ち3年、裂き8年、焼き一生』という言葉があるくらい、熟練の職人技が求められる世界です。
そこを『鰻の成瀬』は、現地の工場で加工し、冷凍して日本に持ち込んだうなぎを、各店舗で専用のスチームコンベクションオーブンで温め直し、提供するシステムを確立。これにより調理が簡素化され、余計な人件費も抑えられる。その結果、飲食未経験者によるFC加盟が殺到し、店舗が急増したわけです」
「鰻の成瀬」は他にも、FC店舗に対して駅前や繁華街の1等地でなく、居抜き物件を推奨するなど、「3等地戦略」で家賃比率を抑えているのも特徴だった。加盟店の初期当初もおよそ700〜800万円程度と、他の飲食FCより比較的安価であり、これがFC加盟のハードルを大きく下げたと考えられている。
「味がブレる」チェーン店に未来はない
だが、この「鰻の成瀬」のビジネスモデルは、たしかに「FC加盟店を増やす」という一点においては強かったが、永田氏に言わせれば「創業当時から抱える脆弱さを危惧していた」という。いったいどういうことなのか。
「1号店である横浜本店などの直営店とFC店とで、同じうな重を食べ比べてみれば一目瞭然ですよ。直営店は美味しいけど、大部分はFC店は美味しくない。つまり、いくら“誰でも店をやれる”といっても、飲食店未経験者ばかりでは店舗のオペレーションにバラツキがいくつも生じてしまうわけで、これがいつまで経っても改善されていませんでした。
1つはうなぎの焼き戻しの工程で、使用しているスチームコンベクションオーブンについては何ら問題はないんです。けれど、温度管理がきちんとできていないと、うなぎ本来の味や食感が損なわれてしまうんです。もう1つは米の炊き方。本部から店舗に対して米の炊き方をきちんと指導してないからか、店や時間帯によってムラがあるように思います」
本来、チェーン店とは「どの店を訪れてもブレない、安定した美味しさ」が根底にあるというもの。それが「鰻の成瀬」には無かったがために、いつしか同チェーンの口コミには「いつもガラガラ」「不味すぎる」などの声が広がり、気付けば400近くあった店舗も、約270店舗(2026年3月末時点)にまで減少するに至ったというわけだ。
その結果、飛ぶ鳥を落とす勢いだった「鰻の成瀬」を運営するFBI社の業績も、みるみる“破産寸前”の域へと落ち込んでいく。
母体が代わってFCオーナーたちは…
「たしかにFBI社の2025年8月期の売上高は20.8億円あり、年々拡大傾向にはありました。ところが、営業利益はわずか5000万円程度しかありません。また、当期純利益に至っては約4000万円の赤字になっています。会社の負債はどれくらいかと言うと、同社のバランスシートによれば、総資産15.3億円に対して純資産はわずか8000万円ほど。つまり、差し引き14億円以上の負債を抱えているわけです」(前出・永田氏)
これほどまでにひっ迫していた「鰻の成瀬」だが、はたして今回のM&Aを機に再生することはできるのだろうか。
AIフュージョンはその方策として、自社が得意とするAI・DX(デジタルトランスフォーメーション) による業務効率化やSNS マーケティングによる集客最大化、地方自治体および金融機関ネットワークなどを事業に活用していくという。永田氏が続ける。
「当面の運転資金は確保できたので、落ち着いた経営ができるのではないでしょうか。腐っても『鰻の成瀬』というブランドの知名度は大きいですから、FC店舗の整理を行い、先述した問題点を克服していけば、営業利益は改善に向かっていくと思います。
ただ、ネガティブな話がないわけではありません。良くも悪くも放任主義だったFBI社と違い、AIフュージョン社は負債の原因にもなったFC加盟店の未払金問題など厳しくメスを入れてくるでしょうし、売り上げが極端に低い店舗へ強い改善を求めてくるはず。『鰻の成瀬』のFCオーナーにとってはかなり厳しい環境になるかもしれません」
すでに「鰻の成瀬」内で新たな火種がくすぶりはじめているのかもしれない。
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