生まれ変わった“ミニ・ホンマン” 必死の勝利は、過去への決別――。
メインイベントに登場したのは、ZSTウェルター級王者・内村洋次郎と“小さなチェ・ホンマン”奥出雅之。内村は、全日本キックにも参戦し、昨年は竹田誠志を破ってウェルター級初代王者になるなど、2008年のZST中心人物の一人だ。
しかし、昨年11月23日、奥出はグラップリングマッチながらも、内村を腕十字にきってとる殊勲の一本勝ち。現王者を破ったその勝利は、これまでの不安定な戦歴をも一掃する価値あるものであった。
さっそく奥出は本来のルールで内村戦を望み、すぐにでもリベンジを果たしたい内村との再戦は、ZST2008年一発目にいきなり組まれた。試合前のコールでは、口に含んだ水を奥出に吹きつける内村。その心中は、怒りか、焦りか――。否応なしにヒートアップする場内をよそに、奥出のセコンドは、奥出に“平常心”を呼びかける。
試合は、内村の強烈なローキックで幕を開けた。タックルからグラウンドへと引きずり込みたい奥出は、内村へ必死に食い下がるが、内村は奥出の足にボディに、強烈なパンチやキックを浴びせてはスタンドへと戻る。
それでも、一度は、腕十字の体勢に捕らえた奥出。しかし、そのチャンスを逸し、内村は追い討ちを掛けるように、そのボディへ重い膝蹴りをぶち込み、スタンドではハイキックを繰り出した。
この時点で、内村の勝利を信じた観客も多かっただろう。だが、奥出の集中力は途切れていなかった。再びタックルを仕掛けた奥出は、内村の足に喰らいつくや、一瞬のヒールホールド。グラップラーの面目躍如か、かつて味わい続けた屈辱は、必死の奥出に抜群の極めの強さをもたらしていたのだ。見事な大逆転劇に沸き返る場内。気がつけば、リングサイドでは奥出の盟友・所英男も泣いていた。
この日の奥出は、オープンフィンガーグローブを着用せず、試合前に座禅を組んだり、半身になって構えるパフォーマンスの類を全て捨てていた。貪欲に勝利を目指した男による会心の勝利は、過去の自分との決別か――。ひょっとしたら“小さなチェ・ホンマン”というニックネームも、もう必要ないのかもしれない。
トリッキー&キャラクター先行と揶揄され続けた奥出の2008年が、華々しくはじまった。
