不妊に悩んでいた女性がまれな「精液アレルギー」だったという事例

アレルギーは特定の物質(アレルゲン)が体内に入ってきた際、本来は無害であるにもかかわらず免疫反応が過剰反応してしまう現象です。代表的なアレルゲンにはスギ花粉や乳製品、ネコまたはイヌの体毛などがありますが、時には意外なものがアレルギー反応を引き起こすケースもあります。科学系メディアのLive Scienceは、不妊に悩んでいた女性がまれな「精液アレルギー」だったという事例を紹介しました。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11390391/
Diagnostic dilemma: Woman's infertility may have been caused by rare semen allergy | Live Science
https://www.livescience.com/health/diagnostic-dilemma-womans-infertility-may-have-been-caused-by-rare-semen-allergy
バルト海東岸にあるリトアニア在住の29歳の女性は、男性パートナーとの間に子どもを妊娠することを望んでいましたが、なかなか妊娠することができずにいました。女性は体外受精を2回試みたものの妊娠には至らず、婦人科の検査でも妊娠できない根本原因は特定されなかったとのこと。
女性にはぜん息の既往歴があり、カビ・ネコの毛・ほこりといったアレルゲンの吸入に対してアレルギー反応を示していました。そこで、自身のアレルギーが妊娠の可能性に影響しているのかどうかを調べるため、医療機関で検査を行いました。
医療機関で血液検査をしたところ、女性の血液にはアレルギー反応の原因である白血球の一種・好酸球が以上に多いことが判明。皮膚検査では既知のアレルゲンに加え、ダニ・雑草やイネ科植物の花粉・昆虫・イヌといったものに対しても敏感であることが示されました。

女性はイヌのふけや尿に含まれる「Can f 5」というタンパク質に対して特に敏感でした。Can f 5に対するアレルギーを持つ人は、人間の精液に含まれる同様のタンパク質に対してアレルギー反応を示す場合もあるとのこと。
アレルギー専門医との面談で、女性は男性パートナーと避妊具なしの性行為を行った後、鼻づまりやくしゃみを経験したことを認めました。これらの症状は、以前の不妊症に関する診察時には見過ごされていました。
医師らは男性パートナーから採取した精液サンプルを用いて、女性のアレルギー検査を実施。その結果、女性は精子を運ぶ液体部分である精漿(せいしょう)に対するアレルギーを持っていることが確認されました。
報告書によると、精液アレルギーは生殖器の炎症を引き起こす可能性があり、これが女性が不妊であったことの潜在的な原因になり得るとのこと。しかし、体外受精で作られた胚には精液が含まれていないため、体外受精の失敗が精液アレルギーによるものかどうかは明らかではありません。

精液アレルギーの治療法として最も一般的なのはコンドームの使用ですが、女性はパートナーとの間に子どもを作ることを望んでいたため、コンドームの使用を拒否しました。また、精液アレルギーの症状を緩和する既知の治療法には、「精液を徐々に濃度を高めつつ体内に注入し、アレルゲンへの耐性を高める」というものがありますが、この治療法はリトアニアでは実行できなかったとのこと。
その代わり医師らは女性に対し、セックスの前に抗ヒスタミン薬を服用してアレルギー反応の重症度を軽減することを推奨しました。抗ヒスタミン薬はアレルギー反応や炎症に関わるヒスタミンという神経伝達物質の働きを抑え、アレルギーの症状を抑える薬です。
しかし、抗ヒスタミン薬の服用は女性のアレルギー反応に効果をもたらさなかったそうで、3年後の受診時には依然として妊娠できていませんでした。女性はパートナーの精液に触れた後、陰門の灼熱(しゃくねつ)感やまぶたの腫れ、涙目といった新たなアレルギー反応を示したとのことですが、それ以上の治療は推奨されませんでした。
女性の担当医師は報告書で、「この症例は一見無関係に見えるアレルギー性疾患が組み合わさることで、生殖機能に関する問題を引き起こす可能性があることを改めて示すものであり、不妊の原因の包括的な評価が必要であることを示唆しています」と述べました。
