患者に対する不同意わいせつなどの罪などに問われている医師・大堀重法被告(求人サイトより。現在は削除済み)

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 わいせつ事案のニュースというのは後を絶たないが、昨今は職業を悪用した事例が目を引く。特に加害者が専門職などである場合、行為に疑問を抱いても声をあげにくい実情があり、悪質性が高い。

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 4月27日、さいたま地裁で初公判が開かれた不同意わいせつ、準強制わいせつの裁判は、まさにそのような被害者心理を突いたおぞましい事件であった。

 この裁判の被告人、大堀重法(逮捕当時64)は、埼玉県新座市でアレルギー科などの診療を行うクリニックを運営(すでに閉院)しており、2名の女性患者に対してわいせつな行為を行ったとして起訴された。今後さらに被害者は増える見込みとされている。

 初公判ではその卑劣な手口の一部が明らかになり、行為に抗えなかった被害者の心情なども明らかにされた。傍聴を行った裁判ライターの普通氏がレポートする。

被告人も全裸になり…「服が波動のジャマ」

 大堀被告は、刑務官に挟まれながら入廷した。細身で、伏し目がちだった。

 この日に審理された起訴内容によると、被告人は50代の女性2名に対し、自身が運営するクリニックの診察室内において、"必要な医療行為"であるかのように伝え、全裸または下着のみにさせた。そして、被告人自身も全裸になるなどして、被害者女性の手に陰茎を握らせる、陰茎を下腹部に押し付ける、口を開けさせてキスなどの行為に及んだとされている。

 検察官が読み上げた起訴内容に対し、被告人は2名の被害者に対する行為を認めた。

 被告人のクリニックでは体調不良を訴える患者に対し、その人体が持つ波動の乱れを独自の機械で察知し、適切な漢方などを処方する「波動療法」なる治療を長く用いていた。

 すでに閉鎖されているが、被告人がかつて運営していたと思われるサイトには、

〈平成7年独学で気候を始める(原文ママ。以下同)〉

〈平成9年から中国漢方取得〉

〈平成10年派動に興味を持ち出す〉

〈〇〇先生主催の「ドクターヒーラー研究会」に参加。ここで波動測定器ゼロ・サーチと初めて出会う。ゼロ・サーチ技術習得するのに、1年半要する〉

 などと被告人の経歴が綴られている。被告人は30年ちかく前から「波動療法」に傾倒していたようだ。

 なお、この「波動療法」は実際に他の医院でも行われている治療法である。公判では被告人がこの治療法を師事した医師また、その機械を販売する会社も、「治療に際し、服を脱がすことなどない」と証言している。しかし被告は「波動療法」があたかも、服を脱ぐ必要がある治療法であるかのように振る舞っていたようだ。

「波動を感じるため」と全裸になり…

 被害者の1人であるAさんは被告人のクリニックに通院している患者であった。ある日、Aさんは被告人から「波動療法」について「患者全員に行っているわけでない」などと誘われ、受診することにした。

「合わせてみますか?」

 体調不良を訴えたAさんに対し被告人はこのように声をかけ、波動療法を行い、身体に合うサプリや漢方も処方した。被告の行為はその後、エスカレートしていく。

 Aさんが治療を受けて1年ほど経つと「服が波動の邪魔」などという理由で、服を脱がされるようになる。その後、被告人自身も「波動を感じるため」などとして全裸になり、身体を触られるときもあったという。

 Aさんとしては、医者がそこまで治療に体を張ることに驚きを感じ、「気持ち悪い」などとも思いつつ、治療と信じて我慢していたという。

 事件となった日、被告人は波動を感じるための機械を手放した状態で、口を尖らせてAさんに迫ったという。それまで"治療"だと我慢していたAさんも「『これはただの変態だ』と思った」そうだ。

 A さんは当時、被告人と診察室で揉めることに抵抗を覚え、その場では行為に応じたとされている。その直後に弁護士事務所などに駆け込み、対応を依頼したことで逮捕につながった。

 もう1人の被害者であるBさんも、被告人のクリニックに定期的に通院する患者であった。

 検査の数値が悪いと、被告はBさんに対し「薬が合っていない」などと言い、「また"アレ"をやればわかる」などと波動療法へ誘導した。

 事件当日、治療の一環でBさんは上裸にされた。Bさんは「スパッツはいいんですよね?」と確認するも、さらにそれも脱がされ下着姿に。その状態で被告人に体を触られるなどしたという。

 被告人に対し、Aさんは「もう医師として働いてほしくない」、Bさんは「刑務所に入ってほしい」とその処罰感情を供述している。

電子機器には「盗撮データ」らしきものも

 押収された被告人のスマートフォンの検索履歴には「全裸」などのワードがあり、各種わいせつなサイトの閲覧履歴なども確認されているようだ。また、同じくタブレット端末からは患者のものと思われる全裸の女性の盗撮データなども発見されている。

 捜査機関の取調べに対しては概要を認めつつも、服を脱がす、キスをするといった行為の合理性を主張する弁解もしているという。

 6月の第2回期日では、今後される予定の2件の追起訴審理がなされる見込みだ。現在も捜査は続いており、全容解明にはまだ時間がかかるとみられている。

 事件を受けて2月、クリニックは閉院となった。被告人が運営していたクリニックのホームページ(現在は削除済み)には、「健康に出産・育児を行うために」、「ひとりひとりに合わせたオーダーメイドの治療法」など患者に寄り添うような言葉が並んでいた。

 被告人はどこで医師の道を誤ったのか──。今後の公判でどんな事実が明らかになるのか注目したい。

◆取材・文/普通(裁判ライター)