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「虐げられてきた下層民衆とともに55年…」インド仏教界の最高指導者は岡山県出身の90歳

インド政府も認める、インド仏教界の最高指導者が岡山県新見市出身の男性であることをご存じでしょうか。佐々井秀嶺(ささい・しゅうれい)さん、90歳。

【写真を見る】【佐々井秀嶺さん・近況】130年続く歴史的闘争「ブッダガヤ大菩提寺」の管理権の返還を求め続け…最高裁判決が近づく【後編】

今年(2026年)、3年ぶりに帰国を予定していましたが、断念したといいます。

実は、長年、佐々井さんが取り組んできたブッダガヤの大菩提寺管理権をめぐる裁判に動きがありそうだというのです。

130年続く、その歴史的闘争とは。

(※この記事は、前編・中編・後編のうち後編です)

130年続く歴史的闘争 ブッダガヤの大菩提寺管理権の問題

ブッダガヤは、インド東部のビハール州にある小さな町です。約2500年前、ここで一人の王子が「ブッダ(悟りを開いた者)」となったと伝わります。

王子の名は、のちに仏教の開祖となったガウタマ=シッダールタ(釈迦)。長年の修行の末、彼はブッダガヤにある一本の菩提樹の下で瞑想し、「悟り」を開いたとされています。

現在もその菩提樹の子孫とされる樹が同じ場所に立っていて、世界中の仏教徒が参拝に訪れます。

「大菩提寺」の歴史

大菩提寺(マハーボディ寺)は、この聖なる菩提樹を守るように建てられた壮大な寺院です。

高さ52メートルの尖塔を持つこの寺院は、アショーカ王によって紀元前3世紀に最初に建立され、その後何度も修築されてきました。2002年にはユネスコ世界遺産に登録され、その普遍的価値が国際的に認められています。

仏教徒にとってブッダガヤは、イスラム教徒にとってのメッカ、キリスト教徒にとってのエルサレムに匹敵する最も神聖な聖地です。

しかし、この聖地の管理権は複雑な歴史的経緯により、仏教徒が完全にコントロールできない状況にあります。

なぜ仏教徒の手を離れたのか

中世インドで仏教が衰退した際、この聖地は事実上放棄状態となりました。その後、ヒンズー教シヴァ派の僧院(マハント)が管理を始め、数百年にわたってこの状況が続いてきました。

19世紀末、スリランカの仏教改革者アナガーリカ・ダルマパーラが荒廃した聖地の現状に衝撃を受け、仏教徒への返還運動を開始しましたが、英国植民地政府下での政治的妥協により、現在の「共同管理」制度が生まれました。

現在の管理体制を定める「1949年ブッダガヤ寺院法」では、寺院の管理委員会が議長1人(ヒンズー教徒であることが多い)とヒンズー教徒4人、仏教徒4人で構成されています。

つまり、ヒンズー教徒が最大5人、仏教徒が4人という構成になっていて、仏教徒が自らの聖地を自律的に管理できない状況にあります。

そこで、仏教徒による管理権を求める運動が続いています。その中心にいるのが、半世紀以上にわたってインドで仏教復興運動を続けてきた佐々井秀嶺さんです。

カースト制度という根深い差別からの解放を象徴する戦い

1960年代にインドに渡った日本人僧侶である佐々井さんは、ナグプールに赴き、1988年にはインド国籍を取得しました。

佐々井さんにとって、この闘いは単なる宗教施設の管理権争いではありません。カースト制度という根深い差別からの解放を象徴する戦いだといいます。

佐々井さんは、90歳となったいまも、ナグプールを拠点に活動を続けていて、数十万人のダリット(不可触民)仏教徒にとって希望の光となっています。

いっぽう、ヒンズー教側も対抗しています。

ヒンズー教徒の管理者の一人は、「仏教徒が聖地を見捨てた後、我々が何世紀にもわたってそれを保護してきた」と主張しています。

長年続いてきた大菩提寺の管理権をめぐる裁判は、2026年、ついに最高裁の判決が出る可能性があるといいます。

佐々井秀嶺さんは、RSKの取材に対し「良い方向に向かっている」と話しています。

【佐々井さんの画像を見る】