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政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏のYouTube上の動画で名誉を傷つけられたとして、丸尾牧兵庫県議が米Google社に動画の削除を請求していた裁判で、東京地裁は4月23日、米Google社に対し、削除を命じる判決を下しました。

読売新聞などの報道によると、問題となった動画は、2024年の兵庫県知事選に出馬した立花氏が、選挙演説の際、齋藤元彦知事に対する告発文書に対して、「全部うそ。作ったのは丸尾牧」などと発言したもので、この演説を撮影した動画がYouTubeに投稿されていました。

Google社側は、表現の自由の保障の観点から、投稿の削除には慎重であるべきだと主張していたようです。

東京地裁(足立堅太裁判官)は、動画が虚偽の内容を含むことや、動画が計19万回以上再生されていたことなどを理由として、削除を命じる判決を下したとのことです。

この判決で注目される部分について、簡単に解説します。

●なぜ立花氏ではなくGoogle社を訴えるのか?

丸尾県議が主張する名誉毀損について、この動画で名誉毀損をしているのは立花氏ということになりますが、今回の削除請求の相手方は米Google社です。

このように、動画や投稿の配信者本人ではなく、動画等のプラットフォーム企業に対して削除請求を行うケースは、近年よくみられます。

なお、Googleには日本子会社(Google Japan)もありますが、米Google社がYouTubeの運営主体であり、動画の削除権限も米Google社にあるため、同社に対する判決を取得する運用になっています。

●「表現の自由」において、政治に関する発言は特に重要だと考えられている

Google社側は表現の自由の保障の観点から、投稿削除をすべきではない旨の主張を行ったようです。

憲法学上、政治に関する発言は、民主主義の根幹を支えるものとして、表現の自由の中でも特に強く保障されるべきと考えられています。選挙期間中の演説であればなおさらです。

この点について、裁判所は立花氏の「告発文書は全部うそ。作ったのは丸尾牧」などの発言を「虚偽」と認定したうえで、「虚偽の内容を含む投稿を削除しても、有権者の適切な選択を困難とすることはない」と判示したようです。

●今後の課題は?

日本の裁判例では、たとえば選挙運動期間中の候補者の政見放送による発言であっても、虚偽の事実を摘示して第三者の名誉を毀損した場合には名誉毀損の成立が認められています(千葉地裁平成8年9月25日判決など)。

本判決は、このような流れの中では、特に変わった判断がされたわけではないと考えられます。

ただ、裁判所が「虚偽の内容を含む」ことを理由に選挙における言論の動画を削除できると考えることには、難しい問題も残っています。

まず、削除は表現そのものを消すことになるため、損害賠償よりも制約の度合いが高いといえます。

次に、明らかな誹謗中傷であれば問題は少ないとも思えますが、保護されるべき批判的な言論との境界線は必ずしも明確ではないでしょう。

そのようなものまで、虚偽の内容を含むとして削除対象とされれば、場合によっては特に政治的言論を含む表現の自由が守られなくなるおそれは残りそうです。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)