「新NISA、正しいのか…?」月7万円を投資する〈手取り21万円〉24歳ベンチャー社員。同期との“決定的な差”を前に、抱いた「ある違和感」
金融庁の速報値によると、NISAの総口座数は約2,825万に達し、若年層の投資熱はかつてない高まりを見せています。一方で、内閣府の調査では「自身が孤独である」と感じる20代が全年代で最多となるなど、つながりの希薄化も懸念されています。SNSの「若いうちから積立投資を」という言葉を信じ、職場の飲み会を「無駄」と切り捨てて新NISAに全振りしてきたショウヤさん(仮名・24歳)。しかし、周囲と協力してインセンティブを稼ぐ同期の姿と自身の「手取り」を見比べたとき、ふと湧きあがった感情の正体とは。
若年層のNISA活用の裏で希薄化する「社会的なつながり」
2024年の「新NISA制度」の開始以降、若年層の資産形成への意識はかつてないほど高まっています。
金融庁が発表した「NISAの利用状況の推移(令和7年12月末時点・速報値)」によると、NISAの総口座数は約2,825万口座に達し、年間の新規買付額は約18.7兆円と過去最高水準を記録しました。なかでも、つみたて投資枠を利用した若年層の流入が目立っており、SNSなどのデジタルプラットフォームを通じた投資啓蒙が、資産形成のハードルを下げた一因となっているでしょう。
しかし、資産形成に熱心になるあまり、キャリア形成に不可欠な「社会的なつながり」を軽視してしまう傾向もデータから読み取れます。
内閣府の「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)」では、自身が孤独であると「しばしばある・常にある」と感じている人の割合が、20代で7.4%と全年代で最多、30代で6.0%に上ることが示されており、若年層が孤独感を抱えやすい実態が客観的な数値として表面化しています。
投資は複利の力で将来の資産を増やしますが、20代における資産は「自分自身の稼ぐ力」です。職場での信頼関係を構築し、チームで成果を上げる経験は、将来的な昇給やインセンティブといった「人的資本」の拡大に直結します。
若いころに稼いだお金を投資に回して資産形成をすることは重要ですが、収入増につながる可能性のある機会を損失するのは、データからも懸念されるポイントといえるでしょう。
NISAでコツコツと投資を続けるも、同期の仕事での活躍やプライベートでの充実を目にして、今の生活に疑問を感じてしまった20代男性の事例を見ていきましょう。
「投資信託の評価額」だけが味方…ベンチャー企業で孤立する24歳男性
「また同期みんなで飲みに行くのか、飲み代がもったいないな。少しでもNISAの入金を増やしたほうが幸せだろ」
ITベンチャー企業の営業職のショウヤさん(仮名・24歳)は、業務時間が過ぎても賑やかなオフィスで、足早に帰宅の準備を進めます。社会人2年目、手取りは月21万円ほど。家賃と最低限の食費を除いた約7万円を、毎月コツコツとNISAのつみたて投資枠に回しています。
周囲の同期たちが仕事終わりの飲み会に参加するなか、ショウヤさんはSNSでフォローしている投資インフルエンサーの「20代の過ごし方で将来の資産が決まる」という言葉を信じ続けてきました。
「飲みの誘いを断れば、月に1万円は浮く。これを30年運用すれば、将来は大きな差になる」
そう自分にいい聞かせて、節約生活に勤しんでいます。ショウヤさんの生活は、合理主義に支配されていました。職場のランチもデスクで一人、コンビニのパン1個で済ませているそうです。
会社に心を開ける人間はいませんが、ショウヤさんには頼もしい味方がいます。それは証券口座アプリに表示される、投資信託の評価額です。株価が好調な時期は、増えていく数字を見るだけで「自分の選択は正しい」という安心感に包まれます。
仕事でミスをして上司に怒られても、資産さえあれば冷静でいられる。それがショウヤさんの「心の支え」でした。しかし、そんなショウヤさんの考えを改めさせる出来事が起きました。
同期のインセンティブ支給に昇給…チャンスを掴んだ要因は「人とのつながり」
要領はよいとはいえないものの、どこか憎めない性格をした同期のレンさんが、大型案件の受注をきっかけにインセンティブを支給され、さらに昇給も決まったというのです。
「受注できたのは、先輩やみんなのおかげです! 親身に接してくれてありがとうございます!」
レンさんは仕事帰りに同僚とよく飲みに行き、休日も趣味のコミュニティを通じて社内外に広い人脈を持っていました。そのつながりがきっかけで、チャンスを掴んだようでした。
「レンのやつ、飲み会ばかりでNISAなんてやってないくせに。1回のインセンティブと昇給で、コツコツ積み立てた俺の1年分の運用益なんて一瞬で抜かれた……」
揺らいだ「NISAでの積立投資」への絶対的な自信
ショウヤさんはふと、自分の給与明細と証券口座アプリの画面を見比べました。投資の評価額は少しずつ増えていますが、給与は入社してから変わっていません。むしろ、2年目から住民税が引かれて、手取りは新卒のころより減っている状態です。
楽しそうに仕事の成果を語り、周囲と笑い合うレンさんの姿が、ショウヤさんには眩しく映っていました。
「今の生活を我慢してNISAしてるけど、本当に正しいのか……? 何が正解なのかわからなくなってきた……」
将来の安心を買うために、今この瞬間しか得られない成長や喜びを犠牲にしているのではないか。ショウヤさんは、仕事の帰り道、自分の選択に疑問を感じずにはいられませんでした。
[参考資料]
金融庁「NISAの利用状況の推移(令和7年12月末時点・速報値)」
内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)」
