かつて誇らしげにスポーツカーに掲げられた「ツインターボ」! なぜシングルよりツインだったのか本当の理由とは?

この記事をまとめると
■ダウンサイジングターボは効率重視の現代エンジンの主流となる
■ツインターボは性能向上より過給特性改善が本来の目的
■タービン数は排気量ごとに最適解があり増やせばいいわけではない
現代のエンジン設計は効率が最優先
エンジンのダウンサイジングと過給機(主にターボチャージャー)の組み合わせは、環境性能も含め総合性能に優れるパワーユニットとして、現代では主流となっている考え方だ。エンジンは小型軽量コンパクトに、トルクは低域から厚くフラットなトルク特性を、そして燃焼効率、熱効率を引き上げることで省燃費性、出力特性を高く保とうとする設計思想である。
現代の内燃機関(ここではガソリンエンジンと限定してもいい)を考える上で、その基本的な考え方は「効率」に集約されるといってもいいだろう。性能を得るためにメカニズムが重厚長大になることは避け、可能な限り単純明快に仕上げるという考え方だ。
もちろん、たとえば可変バルブタイミング機構のように、得られるメリットとそれを実現するための機構の複雑化、重量増を天秤にかけ、メリットのほうが大きいと判断した上で実用化されたメカニズムも少なくない。

さて、メカ好きがそそられるメカニズムのポイントとして、タービンの個数があるのではなかろうか。日本車に目を向ければ、それまでタービン1個による過給が常識だった時代に、2個装着することで「ツインターボ」と上級感を謳い、方式の差別化を図ることでクルマ好きの注目を集めたメカニズムがあった。単純に、タービン1個のシングルターボより、2個装着したツインターボのほうが高性能、という印象付けである。
実際には、過給特性を改善するためツインターボ方式が採用されたわけで、出力の絶対値を高めるために採られた手法ではなかったが、シングルキャブレターに対するツインキャブレターのように、1個より2個のほうがより高性能という過去の例があっただけに、ツインターボに対してもユーザー側が独自に思い描いたイメージもあったようだ。

現状は2リッター以下の4気筒、さらには排気量の小さな3気筒に1個のタービンを装着するダウンサイジングエンジンがほとんどで、逆に複数個のタービンを装着して性能を誇示した例がどれほどあっただろうかと、これを探してみた。
市販車最多は4タービンだが……
市販ガソリン自動車用としては、ブガッティ・ヴェイロン&シロンに搭載された8リッターW16気筒の4タービン仕様が最大個数といってよさそうだ。設計・生産はVW社で、同社が得意とする狭角15度のV6エンジン(1バンク)が基本となっている。このエンジンに2気筒を追加してV8化、さらに2基組み合わせてW16気筒としたものだ。

考え方としては、この片バンク(8気筒)をツインターボ化したもので、過給システムは1タービン4気筒ではなく、8気筒に対して2段過給、2タービン化し、左右バンク合わせて4タービンとした方式である。過給方式の特徴についてはまた別の機会に触れたいと思うが、2段過給(2ステージ化)は、低域から高域までフラットなトルク特性やターボラグの発生を小さく抑えることができるため、質の高い出力/トルク特性をもつエンジンとして仕上げることが出来る。
また、タービン1基あたりの過給排気量は、ガソリンエンジンで4リッター前後と考えてよく、単純ないい方をすれば、8リッターエンジン(シリンダーは2バンク)なら片バンク1基のツインターボ方式でまとめることができる。

逆に、マルチタービン方式のデメリットを考えてみると、まず、小排気量エンジンならマルチ化のメリットは考えにくい。たとえば、1.5リッターエンジンのツインターボ仕様はどうだろうか?
1.5リッターを過給するタービンは小〜中型タービン1基で十分にまかなえる。小径なだけに排気流に対するレスポンスがよく、ツインターボ化(2ステージ化)するメリットはほとんどない。逆に、タービンが1基増えることで3〜4kgの重量増と過給系のレイアウトが複雑化する。要求性能に対し、コスト、重量が無駄になるということだ。
これは大排気量エンジンに対しても同様で、タービン1基あたりのサイズが大型化、過給系のレイアウトまで含めると、とてつもなく重厚長大なシステムになってしまう。ちなみに、ブガッティ・シロンの8リッターW16気筒エンジンは、6500回転で1500馬力の出力、2000〜6000回転で163.2kg-mのトルクを発生している。

全体個数としては合計4タービン、1シリンダー(=片バンク)に対してはツインターボ(2ステージ)で対応するシステムだが、この数値を目にしてパワー・トルクが不足していると受け取る人間が、果たしてどれほどいるだろうか?
キャブレターなら、最大個数はシリンダー数と同じ数(CRやCV)の装備が可能であり、セッティング、チューニングが十分ならば優れた性能を発揮するが、ターボチャージャーの場合は、タービンの過給容量やサイズ、重量を含めて考えると、装着個数を増やすことは逆にデメリットを生むことになり、現状、大排気量で4タービン、中間排気量で2タービン、小排気量ならシングルタービンで必要十分、という解が導き出されている。


