「再審制度」めぐり自民党内で怒号、「法務省VS 超党派国会議員」の構図でバトル
有罪判決が確定した後に、無実を示す新たな証拠が見つかるなど、重大な事実誤認が判明した場合に、裁判をやり直す手続きのことを「再審」という。同制度の見直しを議論している自民党の会議で、政府案に反対する議員から怒号が飛び交う場面があった。最近の自民党では珍しい光景だ。
現在の制度では、再審決定に対して検察官が不服申し立て(抗告)をすることができる。つまり、検察は再審をやめさせようとすることができる。
今回、政府で議論されている大きなポイントは、この検察の権利を維持するかどうかということ。政府案(法務省案)はこれを維持、自民を含めた超党派の議連(井出庸生氏など)は反対している。いつものような「与党 VS 野党」の構図ではなく、「法務省(検察庁)VS国会議員」の構図だ。
検察官(検察庁)にしてみれば、せっかく自分たちが起訴して有罪にした事件を蒸し返されるのはプライドが傷つくので再審を止めたいということだが、袴田事件や免田事件のような冤罪(えんざい)事件を数多く生んだのは、検察の無謀な捜査や取り調べだ。超党派議連が指摘するように、再審にストップがかけられれば、冤罪事件の被告の救済が遅れることになる。
再審制度に関する今回の政府案は法務大臣の諮問機関「法制審議会・刑事法部会」を経て取りまとめられたものだ。ただ、その委員の人選は、検察官である法務省刑事局長が候補として示した有識者が選ばれていた。司法サイト「弁護士ドットコムニュース」が法務省への開示請求で明らかにした。抗告を維持したい刑事局がそのような議論に持っていくための人選をしたということだ。
法務大臣と他の官庁は事情が違う
法務省のトップは言うまでもなく、総理大臣が任命した法務大臣だが、それは形式的なもので、他の官庁と事情が異なる。法務大臣ポストには、これまでも弁護士や法務行政に詳しい議員ばかりが就任してきたわけではない。むしろ、不思議なくらい畑違いの議員が務めてきた。政治的には“入閣待機組”の初入閣ポストとか、軽量級の閣僚ポストとして扱われることが多い。
例えば、岸田内閣のとき、葉梨康弘法務大臣は「(法務大臣ポストは)死刑のはんこを押す地味な役職」と発言して事実上の更迭となった。要するに、法務大臣には法務行政について実質的な権限はほとんどない。
通常、省庁では事務次官を頂点とするピラミッド型の官僚・幹部の序列によって構成されているが、法務省・検察庁では、①検事総長②東京高検検事長③大阪高検検事長④次長検事(最高検察庁)⑤法務事務次官――が実態だ。法務大臣は検事総長をトップとする検察官らが決めたことを追認するだけである。
省庁における事務次官は最高位の「上がりポスト」だが、法務省の場合は事務次官で退官することはほとんどなく、高検検事長または最高検次長検事に転出するのが慣例となっているなど、キャリアパスの一つと化している。法務省・検察は子会社(検察)が親会社(法務省)を牛耳る摩訶(まか)不思議な組織である。
