Value Progress「ビースト」

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製作者のこだわりが詰まった和製スーパーカー

 2026年1月9日から11日にかけて幕張メッセで開催された「東京オートサロン2026」では、数多くのカスタムカーが展示されましたが、その中でひときわ来場者の視線を集めていた車両があります。

 それが、バリュープログレスが製作した「BEAST(ビースト)」です。

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“和製スーパーカー”を目標に掲げたこの一台は、一体どのような思いから生み出されたのでしょうか。改めて解説します。

 真っ赤なカラーリングと、現代のクルマでは少なくなった角張ったデザインが特徴的なビーストですが、大きく伸びるリアウイングや多段式のリアディフューザーも相まって、見る者を圧倒する存在感を放っています。

 このクルマのベースがランボルギーニ「ディアブロ」だと聞いても、すぐには信じられないかもしれません。

 しかし、この“原型を分からなくする”ことこそ、同社が目指すカスタマイズの方向性であり、スーパーカーとは見る人に驚きを与え、夢を抱かせることが大切であり、「これは一体何だろう」と思ってもらうことが楽しいと、同社の代表 白岩 薫氏は語ります。

 バリュープログレスは、これまでも東京オートサロンに個性的なカスタムカーを出展し、高い評価を得てきました。

 日産「マーチ」をベースにした「TOY BOX」シリーズでは、2003年にフロント4輪とリア2輪を持つ6輪車「TOY BOX ALLIGATOR」を、2005年にはその進化版「TOY BOX ALLIGATOR II」を発表。

 さらに2010年にはトヨタ「MR-S」に大改造を施したスーパーカー「Drag Star F1」、翌2011年には「DragStar F1 Dragon」も出展し、コンセプトカー部門でたびたび優秀賞を受賞するなど、そのコンセプトの秀逸さとカスタムの品質には定評があります。

 しかし、2011年の東日本大震災の発生により、本業である自動車整備工場の事業を一時ストップせざるを得ませんでした。

 幸いにも同社は福島県の内陸部にあったため被害は限定的でしたが、震災復興のための自動車整備や販売などの事業で多忙を極めることになります。

 そして、復興関連の業務がようやく落ち着きを見せたことで、以前から行ってきたカスタマイズ部門を再始動させました。

「よりユニーク」「よりかっこいい」「より夢があり型にはまらない」「夢を形に」といったモットーを胸に、ジャパンカスタマイズの頂点を目指してスーパーカーの製作に着手したのです。

 ビーストはディアブロがベースのため、エンジンはパワフルなV型12気筒で、これにMTを組み合わせます。

 その動力性能に見合うスタイリングを実現するため、デザインは何度も描き直され、実際にボディを作り上げてからも、バランスがおかしいと判断すればまたやり直すという作業が幾度となく繰り返されました。

 さらに、本業である整備業などが多忙だったため、カスタマイズは合間を見ながらの作業となり、完成までには数年を要したといいます。

 こうして苦労の末に完成したビーストは、今回の実車展示で多くの反響を呼びました。

 観客からは「ベース車は何ですか?」という当然の声のほか、「伊勢海老っぽい」「まるでバットマンカー」といったユニークな感想も寄せられたそうです。

 白岩氏は同車両について、次のように話します。

「2010年に製作したスーパーカー『ドラッグスター』では、トヨタ・MR-Sの1.8リッター直列4気筒エンジンを採用しました。

 しかし、その排気量ゆえに『最高速はどれくらい?』と尋ねられることが多く、それがとても悔しかったんです。

 その思いから、今回の『ビースト』には排気量6.0リッターに迫るV型12気筒エンジンを搭載しました。

 当初はフェラーリ『テスタロッサ』をベースにする予定でしたが、偶然ランボルギーニ・ディアブロを安価で入手できたため、そちらをベースにしています。

 ディアブロベースであることから『和製ではないのでは』というご意見もいただきますが、私としてはあくまで『シャーシを借りているだけ』という認識です。

 一からオリジナルフレームを作ると車両登録のハードルが高く、どうしても公道を走らせたかったため、この手法をとる必要がありました。

 なお、展示した個体は3万2000kmほど走行しており、クラッチに滑りが見られたため、トリプルプレートクラッチに変更した上で6速MT化を施しています。

 おかげさまで多くの反響をいただいていますが、現状では購入希望者はいません。売れなければ私のプライベートコレクションになるだけです(笑)。

 価格もまだ未定で、今後の反響や製作台数を見ながら決める予定ですが、決して安くはないことだけはお伝えしておきます」

※ ※ ※

 同業のカスタムメーカーも見学に訪れ、エアロ製作の品質や個性的なデザインに感心し、そこから新たな仕事の依頼が舞い込むこともあったというビーストですが、現在の段階でも車検は見越して設計されており、各種要件に見合うよう作られています。

「野獣」の名を冠したこのクルマが、公道でどのような走りを見せてくれるのか、その日が待ち遠しいです。