“完全アウェー”7万人超の大声援。声が届かぬ状況で光ったリーダーシップ、熊谷紗希の統率でなでしこJが頂点奪還「役割は自分で理解している」【女子アジア杯】
スタジアムの記者席から見る限り、7万4397人の大観衆のうち95パーセントほどはオーストラリアファンで、長野風花が「私たちの良いプレーではまったく沸かず、オーストラリアのちょっとしたプレーでは声も聞こえなくなるくらいの歓声」と表現したほど、日本にとっては戦いにくい雰囲気だった。
すると、17分に浜野まいかが先制点を決めたことにより、選手同士で少し喜び合った後、日本のフィールドプレーヤー10人が集まって意見をすり合わせる時間ができた。
この話し合いをリードした熊谷紗希は「守備の形や(プレスの)かけ方を前の選手と合わせて、メンタル面でも落ち着かせることができた」と明かし、その後のオーストラリアの反撃に備えた。
日本は今大会、パース→シドニーという一度の移動のみだったのに対し、オーストラリアはパース→ゴールドコースト→シドニー→パース→シドニーと、オーストラリア大陸を行き来した疲れからか、フィニッシュの精度が低く得点につなげられない。
中盤の長野や宮澤ひなただけでなく、アタッカーの浜野や藤野あおばも集中した守りを見せ、南萌華がピッチに入った82分以降は、熊谷をセンターに置く5バックにして、日本は無失点のまま試合終了の笛を聞いた。
試合の強度が高かった準決勝と決勝にフル出場した熊谷は、「このタイトルは自分たちにとって大きな意味を持つ」と話したうえで、決勝の内容については「なかなか自分たちの時間を長く作れず、ゲームの展開が難しいところは正直あった」と冷静に振り返った。「自分たちがもうひとつ前に出られない次に向けた課題も出た」と続け、向上させるべき部分も指摘した。
今大会は長谷川唯がキャプテンとなってから初タイトルとなったため、それまでキャプテンを務めていた熊谷としては、肩の荷が降りたようにリラックスして臨めた大会だっただろうか。
そんな質問をぶつけてみると「いや、もともとそんなに肩に荷は乗ってなかったので」と周囲を笑わせつつ、「この年齢(35歳)でこの立場になると、チームでの役割は自分で理解しているつもり。チームがいかに円滑にプレーできて、いかに(気持ちよく)過ごせるかはやっぱり意識している」と、ベテランらしく話した。先制点直後の話し合いを自らリードするなど、このチームでの熊谷の役割はやはり大きい。
1年3か月後には、女子ワールドカップブラジル2027がやってくる。
金色の優勝メダルを首から下げた熊谷は「女子アジアカップと女子ワールドカップはまったくレベルが違う。そこに向けてはまだまだ足りないし、まだまだやらなきゃいけないことはたくさんある」と、表情を引き締めた。
「長崎(昨年11月のMS&ADカップ2025)まではなかなか勝てなかったように、ここからの戦いが何より重要。本当にここからだと思う」と自分に言い聞かすように話し、真剣な表情でチームバスに向かった。
取材・文●馬見新拓郎(フリーライター)
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