なぜ独特な色になったのか 世界を魅了したリウの髪形に隠れた秘密 担当者が語る5時間超えの制作裏話「批判する人は批判すると思う」

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リウの黄金に輝くヘアスタイルは、このミラノ・コルティナ冬季五輪でも小さくない話題となった(C)Getty Images

リウが突き付けた1点の要求とは?

 氷上をのびのびと滑る軽やかな演技でジャッジの眼をくぎ付けにし、はつらつとした振る舞いが大衆の関心を惹いた。この2月に開催されたミラノ・コルティナ冬季五輪のフィギュアスケート女子シングルで金メダリストとなったアリサ・リウ(米国)だ。

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 弱冠二十歳の天才は時の人となった。2022年に行われた北京五輪後に16歳にして現役引退。その約2年後に復帰を果たすと、あっという間に台頭。ついには五輪チャンピオンともなったリウは、リンク外の可愛らしい所作も相まって、ここ日本でも人気が爆発的に伸びた。

 そんな若きタレントの“トレードマーク”となったのが、黒髪をベースに、金色のリングを重ねた大胆なヘアスタイルだ。本人曰く「木の年輪のように毎年、髪に新しい輪を作ろうと思った」というデザインは、まさに鮮烈。一目で「リウだ」と分かるインパクトは大衆に受けた。

 発想当初は派手なスタイリングを嫌う傾向にある審判への影響からコーチが「やめるよう」に警告。それでもリウが「『髪を元の色に戻せ』と言うならフィギュアを辞める」と食い下がったことで生まれた。

 では、着想から実際に手掛けたスタイリストはどのような想いでリウに寄り添っていたのか。米誌『Sports Illustrated』のインタビューに応じた担当者のケルシー・ミラー氏は、リウのコーチを務めているフィリップ・ディググリエルモ氏からスタイリングのオファーを受けたと告白。そして「最初は『この人が誰なのか、そして私が何をするのか教えていただけますか』とお願いした。その時、彼はアリサがスケートをしているビデオを送ってくれて、どういう相談かを聞こうと思った」と明かした。

 特徴的な提案を受け、計5時間の打ち合わせと綿密な準備を始めたというミラー氏。しかし、彼女がリウ本人から求められたのは「よりドラマチックな仕上がりにしてほしい」という1点のみ。だからこそ、同氏にとってそれほど重荷に感じるオファーではなかったという。

「リウに会ったことがある人なら、彼女がすごく落ち着いていて、クールな雰囲気を持っていることを知っているはず。だから、私も彼女の髪をセットするのに全然緊張しなかった。むしろワクワクする気持ちが大半を占めていたわ。『なんてこと。リウはこれでオリンピックに出られるかもしれない』とか、そんなことは全然考えてなかったし、頭をよぎりもしなかった。ただ、どうやってこのスタイルを実現させるかのプランを練ることに精神的にすごく集中した」

「彼女はただの恋人のような人なんです」

 長丁場の打ち合わせで人となりを含めて互いを理解しあった上で、色味や質感、長さ、金と黒の割合など細部にまでこだわった。だからこそ、世界的な関心を集める髪型は完成した。

 まさに傑作を誕生させたミラー氏は「彼女は人を批判しない人。彼女はただの恋人のような人なんです」と強調。その上で「私は人生でこんなに嬉し涙を流したことないわ」とオリンピックで金メダリストとなったリウの人となりを称えた。

「ヘアスタイリストとして、人から溢れ出る幸せと自信を目の当たりにすると、本当に感動する。そして何よりリウが自分のやり方で物事を進め、独自のスタイルを貫くことは素晴らしい。きっと批判する人は彼女を批判すると思うけど、彼女は別に気にしない。だからこそ、フィギュアスケート界で金メダルを獲得できたと思う。これは本当に大きな出来事。彼女が競技のスタイルを変え、その進化を助けているってことだと思うから」

 多くの人に感動を与えたリウ。批判を恐れぬ彼女の振る舞いは、関係者の人生においても小さくない刺激となっている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]