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地価や物価が変動するなか、住宅ローンの選択は将来の家計を大きく左右します。返済期間が長くなるほど「金利の仕組み」が総支払額に与える影響は無視できません。変動金利の上昇リスクと固定金利の安心感を、どう自分たちのライフプランに落とし込むべきでしょうか。本記事では、平松明展氏の著書『お金の不安が消える 住まいのコスト大全 快適に暮らせて資産が残る家の選び方』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集し、支払い総額を最小限に抑えるための住宅ローン返済の判断基準を解説します。

低金利が持続するか、金利が上昇するか

住宅ローンを組んだ場合、借入額よりも支払額が高くなります。

例えば、「借入額:3,000万円、借入期間:35年、金利:0.875%」で変動金利は変わらない設定の場合、支払額は、約3,483万円になります。借入額を差し引くと、483万円です。これはとても優遇された金額といえるでしょう。低金利が長らく続いているため、変動金利を選択したことで支払額を最小限にできた事例です。

ただし、変動金利は6か月ごとに見直され、低金利が維持されるのかは不明です。また、0.875%という金利は、「適用金利」とされるもので、「店頭金利」や「基準金利」から金利優遇をされた数値。店頭金利は2%を超えています。通常は適用金利で示されますが、この金利優遇が終了する可能性もあります。なお、店頭金利での変動金利の最大値は、1990年の8.5%でした。

[図表1]変動金利の金利上昇のシナリオ例

金利優遇がない場合は、固定金利のほうが低い

変動金利は、経済状況や金融政策によって変動します。固定金利は返済完了まで金利は変わりません。返済中に変動金利から固定金利に切り替えられる場合もありますが、最初に契約したときの金利ではなく、切り替えたときの金利が採用されます。

金利の種類は大別すると、「変動金利」「全期間固定金利」「固定金利期間選択型」の3種類(呼称は金融機関によって変わる)。固定金利期間選択型は、一定期間固定金利にし、再度金利を選び直すものです。

固定金利も種類は1つではありません。金融機関によってさまざまな商品があります。また、独立行政法人の住宅金融支援機構と民間の金融機関が提供する「フラット35」という住宅ローンもあります。2025年6月のフラット35の金利は、1.890%です。

固定金利の魅力は、資金計画の修正が発生しにくいことです。変動金利にしておいて、金利が上昇したら固定金利に変更することもできるよね?変更できますが、固定金利も最初の契約時より上昇していることを念頭に置きましょう。また、変動金利にある「借り手保護」も誤解されがちです。

[図表2]変動金利の「借り手保護」について

「フラット35」の仕組み

住宅ローンの返済期間を35年間に設定する人が比較的に多いです。そのため各金融機関では「固定金利35年」の商品を扱っています。前ページで触れた「フラット35」もその1つですが、仕組みが異なります。

簡単に説明すると、借主は、住宅金融支援機構と提携する金融機関と契約を結びます。住宅金融支援機構は証券を発行し、それを投資家が購入する仕組みです。借主ではなく、住宅(建物)に対する債権になります。

この性質は審査にも関係しています。融資対象の建物が、住宅金融支援機構の規定する基準を満たしていなければなりません。耐久性能や耐震性能などの技術基準や、延べ床面積の基準などがあります。マンションや中古住宅などにもそれぞれの物件に基準があり、検査後に適合証明がされたのち融資を受けられるわけです。

[図表3]金融機関独自の固定金利とフラット35の違い

住宅(建物)に対する融資のため、借主の条件面が変わります。例えば、民間の金融機関の審査では年収条件が満たされなかった場合でも、フラット35であれば条件をクリアできることもあります。

また、団体信用生命保険の加入が任意(ほかのローンは必須)なので、健康面に不安がある人でも融資を受けられます(フラット35独自の団体信用生命保険もある)。毎月の返済額をさらに低く設定できる「フラット50」もあります。

注文住宅の場合は注意点があります。建物に対する融資のため、建設途中や竣工後の検査が必要で、住宅会社に「着工金」や「中間金」を支払わなければなりません。準備金がない場合の多くは、金融機関に「つなぎ融資」を受けます。最終的に住宅ローンと相殺されて返済される形になりますが、住宅ローンよりも金利が高く、諸費用もかかります。

[図表4]資産価値がさらに認められた「フラット35」S

「元利均等」と「元金均等」で総返済額が変わる

住宅ローンの返済方式は「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類。

元利均等返済は、元金と利息の合計額が毎月同じになるように設定したものです。金利が変わらなければ返済額も変わりません。返済当初は利息の割合が多くなるため、元金の減りが遅くなります。つまり、総返済額が多くなってしまいます。

元金均等返済は、元金を返済期間で均等に割り、残りの元金の利息を乗せていく計算式です。返済当初の返済額は多くなりますが、総返済額は下がります。

[図表5]元利均等返済と元金均等返済の比較(金利固定の場合)

コストダウンの観点では、元金均等返済が適しています。ただし、当初の返済額が多くなる分、手持ち資金に余裕がなければなりません。ライフプラン(資金計画)でいつ、どれくらいのお金が必要になるかを明確にしておけば、選択しやすくなるでしょう。

返済期間が短いと総返済額は下がる

住宅ローンは、返済期間が短ければその分の利息がかからないため、総返済額が軽減されます。ただし、毎月の返済額は高くなります。これが生活にどう影響するのか、ライフプランとの照らし合わせが必要です。 

返済期間を長くして毎月の返済額を抑えることで、貯蓄をするという考え方もあります。仮に貯蓄の余裕がある場合、繰り上げ返済を選択できるのです。また、住宅ローン減税と照らし合わせて、コスト効果を比較することも大切です。

[図表6]繰り上げ返済には2つの方法がある

将来のことは誰も予測できないもの。想定外のお金が必要になったとき、預金がなければ別の借り入れをすることになりかねません。その借り入れの金利は、住宅ローンよりも高いでしょう。住宅ローンを設定する際、毎月の返済に余裕を持たせ、繰り上げ返済のパターンも確認しておくことをおすすめします。

平松明展

平松建築株式会社

代表取締役