つまり現在のパレスは、監督が将来を見据えられない状態でチームを率い、首脳陣は次の体制を模索しているという、極めて不安定な状態にある。

 こうしたネガティブな空気は、選手たちにも伝染しているようだ。現地メディアでは、得点源のCFジャン=フィリップ・マテタが移籍を希望していると報じられている。たしかに主力選手がクラブの将来性に疑問を抱いても不思議ではない。

 そして、鎌田にとって恩師でもあるグラスナーの退団が決まった今、今季限りでクラブとの契約が切れる日本代表MFの去就もまた、不透明さを増している。
 
 重要なのは、鎌田がグラスナー監督の構想において、極めて重要なピースである点だ。両者はフランクフルト時代に成功を共有しており、戦術理解の深さに疑いの余地はない。実際、在籍2年目の鎌田はグラスナーのもとで目を見張る活躍を見せ、文字通りチームの中心選手としてパレスを動かしている。

 しかしグラスナーが退任となれば、状況は大きく変わってくる。新監督のもとで序列がどうなるのか、クラブがどの方向を目ざすのかが見えないなかで、鎌田が契約延長を迷わずに即断する理由は少ない。むしろフリー移籍となる可能性を考えれば、鎌田としては選択肢が広がる立場とも言える。いずれにしても、パレスが交渉の主導権を握っているとは言い難いだろう。

 グラスナーの退任、主力選手の去就、そして鎌田の今後。それらはすべて同じ一本の線でつながっている。パレスは今、明確な分岐点に立たされていると言えるだろう。

 最後に、筆者の見解を記したい。

 FAカップ制覇で欧州カップ戦の切符を手にしたことは、クラブの成功として称えられるべき出来事であるのは間違いない。しかし中堅以下のクラブにとって、欧州大会参加は必ずしも恩恵ばかりではないように思う。

 選手層は薄く、財政的にも大型補強に踏み切る余裕は乏しい。さらに、過密日程と移動負担が重なれば、国内リーグの成績にも悪影響を及ぼしかねないからだ。プレミアリーグのようなハードスケジュールと高い競争力を踏まえれば、なおさらだ。

 UEFAの現行制度は、十分な戦力と資金力を持つクラブを前提としており、中堅クラブが苦戦するのは構造的に避けられないのが現実だろう。

取材・文●田嶋コウスケ

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