なぜ日本人は英会話が苦手なのか。TOEIC280点から940点(リスニング満点)まで伸ばした『英語ピクト図鑑』の著者・マーク氏は「多くの人が英会話でつまずく本当の原因は、スピーキング(話す力)ではなくリスニング(聞く力)にある」という――。

■「英会話はネイティブに習え」という誤解

何年も勉強したのに英語を話せないと、苦手意識を持っている日本人は少なくないでしょう。

「言いたいことはあっても、とっさに英語が出てこない……」
「文法が正しいか不安で、口に出すのをためらってしまう……」

英語の試験では高得点を取れているのに、外国人を前にすると言葉に詰まってしまう人も少なくないでしょう。

それもあってか、日本では「英語を話せるようになりたいなら、英会話スクールに通ってネイティブに教わるのがベスト」と思われがちです。しかし、これは必ずしも正解とは言えません。

私は今でこそ英語コーチとして英語を教えていますが、もともと英語は得意ではありませんでした。学生時代の英語の成績はいつも平均以下。留学経験もなければ、英語に囲まれた環境で育ったわけでもありません。社会人になって初めて受けたTOEICは280点台。

なんとか得点を上げようと英会話スクールに通って外国人講師に教わりましたが、TOEICの点数は思うようには伸びず、英語を話せるようにもなりませんでした。英語ができないことに強いコンプレックスを抱えていた、いわゆる“英語難民”だったんです。

そんな私が30代になってから英語を学び直し、TOEICスコアを940点(リスニングは満点)まで伸ばし、現在は東南アジアを拠点に英語のオンラインコーチとして活動しています。

写真=iStock.com/xavierarnau
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xavierarnau

英会話上達のカギは「リスニング」

よく「TOEICをどれだけ頑張っても、英会話ができるようにならない」などと言われますが、そんなことはありません。

というのも、実際に英語でのコミュニケーションがうまくいかない最大の原因は、「話す力」の問題ではないからです。

外国人を前にして、「何を言っているのかわからない」と感じた経験は、多くの人にあると思います。じつは英会話の上達のカギは、「スピーキング」(話す力)よりもむしろ「リスニング」(聞く力)にあります。

こちらが話す以前に、相手の英語が聞き取れなければ会話は成り立ちません。多くの単語を知っていても、英文法が頭に入っていても、会話することはできないのです。逆に言えば、相手の言っていることがわかれば、多少つたない英語でも会話は続けられます。

「相手が何を言っているのかわからない」。これが英会話の最大の「壁」です。この「聞けるかどうか」という力は、TOEICで効率的に鍛えられるのです。

■「TOEICは難しい」「会話に役立たない」という思い込み

TOEICに対して「難しいんじゃないか?」「ビジネス英語ばかりで日常会話には使えないのでは?」という先入観を持っているようです。しかし、これらは思い込みです。

まず、TOEICの試験は「リスニング(聞く)」と「リーディング(読む)」の2つの技能だけで、スピーキング(話す)やライティング(書く)はありません。だからこそ、リスニングに集中的に時間を費やせ、英語の発音に慣れる量を圧倒的に増やせるのです。

しかも、問題はすべて選択式。公式問題集も充実しており、「どんな問題が出るのか」「何を練習すればいいのか」が最初から明確になっています。つまり、TOEICは対策しやすく、再現性が高い試験なのです。

また、TOEICのリスニングには、空港やホテル、社内会話、会議、電話対応など、実際のビジネスや日常でよく使われる表現が数多く登場します。海外に住んでみると、「これはTOEICの勉強で学んだことがある」という場面に頻繁に出くわします。

「TOEICはビジネス向けで日常会話に使えない」というのも、完全な誤解なのです。

■最大のメリットは「自信がつくこと」

TOEICに限らず英語の資格試験のスコアが上がることで得られる最大のメリットは、「自信がつくこと」です。「500点を超えた」「700点に届いた」という客観的な指標は、自分の英語力を“可視化”してくれます。この成功体験が、英語を使うことへの心理的なハードルを下げてくれます。

聞く力を磨くことでコミュニケーションの土台が築かれ、英語に対する自信がつくことで結果的に会話にも前向きになれる――。これが、TOEICが英会話につながる構造です。

では、具体的に何をすればいいのか。多くの人がやってしまいがちなのが、「聞き流すだけ」のリスニング学習です。しかし、私は“聞くだけ”のリスニングはあまり効果がないと考えています。

では、効果的なリスニング上達法は何かというと、「シャドーイング」です。

シャドーイングとは、英語の音声を聞きながら、少し遅れて同じ内容を声に出して追いかけるトレーニング方法です。音を聞いた直後に追いかけるように口を動かし、それを自分の耳で確認する。この一連の動作を通して、英語の音が定着していきます。

やり方は非常にシンプル。「TOEIC公式問題集を使い」「毎日30分」「必ず声に出す」だけです。音声データは、公式問題集を購入すると専用サイトからダウンロードできます。

■「急がば回れ」がリスニング上達の鉄則

私がおすすめしているシャドーイングのやり方は、30分を3つ(5分+15分+10分)に分ける構成です。

最初の5分は、問題集の文章を見ながら音声と同時に音読します。次の15分は、0.8倍速でシャドーイング。最後の10分は、等速(1.0倍)でシャドーイングをします。

重要なのは、最初から速さを求めず、確実に音を捉えること。「急がば回れ」が、リスニング上達の鉄則です。

私はこの方法を毎日30分、4カ月間続けました。その結果、TOEICのリスニングで満点(495点)を安定して取れるようになりました。

マーク(村木幸司)『見るだけでわかる‼ 英語ピクト図鑑』(プレジデント社)

シャドーイングを続けると、英語を「意味」ではなく「音のかたまり」として処理できるようになります。その結果、ネイティブの英語が自然と耳に入ってくるようになります。

相手の言っていることがわかれば、会話への恐怖心は一気に下がります。理解できるからこそ、落ち着いて話すこともできます。多少文法が崩れていても、だいたいの単語をおさえていればコミュニケーションは成立します。

TOEIC対策として始めたシャドーイングが、結果的に英会話力を押し上げる。これが、私自身の体験から得た結論です。英会話を上達させたい人こそ、ぜひTOEICにチャレンジしてみてください。

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マーク(村木幸司)(むらき・こうじ)
英語コーチング協会認定コーチ
大手自動車メーカー勤務時代に、英会話教室でネイティブ講師に英語を習うも、ろくに会話もできず、TOEICは毎回300点台。しかし、英語の基本文法を学び直したところ英語学習に目覚める。TOEICのスコアも劇的に伸び、その英語力を活かして海外出張や海外駐在を経験。現在は脱サラして、英語コーチング協会認定コーチとして、基本英文法やTOEIC対策をオンラインで教えている。X(旧Twitter)でのピクトグラムを使った英語解説が話題になり、フォロワーは6万人以上。
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(英語コーチング協会認定コーチ マーク(村木幸司) 構成=岩佐陸生)