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父が初めて買ったクルマ ホーネット・スペシャル

筆者の父が初めて購入したクルマは、直列6気筒エンジンのウーズレー・ホーネット・シックスから派生した、ホーネット・スペシャルだった。自分が生まれる前に手放されたが、クルマへ情熱を注ぐきっかけになったと、生前にしばしば口にしていた。

【画像】天へ響く6気筒の排気音 ウーズレー・ホーネット・スペシャル 同時期の英国製スポーツ 全163枚

金欠気味の技術者だった若き父は、中古の1933年式を改造。ベーシックな構造ながら、安価に軽快なスポーツカーを楽しんでいた。その血は、高純度で受け継がれたらしい。


5台のウーズレー・ホーネット・スペシャル    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

エンジンは、戦前としては先進的なオーバーヘッドカム。倒産の危機を逃れモーリス傘下へ組み入れられたウーズレーは、モーリス・マイナー向けに4気筒ユニットを改良し、MG Mタイプなどに採用されていた。だが、6気筒の上質さと出力には叶わなかった。

走行可能なローリングシャシーを発売

1930年に発売されたホーネット・シックスの潜在能力へ、チューニング・ガレージやコーチビルダーが注目するのは時間の問題といえた。同年の4月には、ウーズレーの2ドアボディのまま、スポーティに改造を受けたホーネットが姿を表したほど。

複数の英国ブランドが、ハイ・カムシャフトやツイン・キャブレターへの交換を提案。スーパーチャージャーや、変速しやすいリモート構造のシフトレバーも開発された。


ウーズレー・ホーネット・スペシャル・ウィッティンガム&ミッチェル・ボディ(1935年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

他方、ホーネット・シックスのシャシーへ独自ボディを先んじて架装したのは、ロンドンのディーラー、ユースタス・ワトキンス社。空力特性を意識したラジエターをフロントに積んだ特別なボディが、アビー・コーチワークス社へ依頼されている。

僅かな改良でスポーティな「スペシャル」が作れると理解したウーズレーは、ホーネット・スペシャルという名で、エンジンなどが載った走行可能なローリングシャシーを準備。アップグレード・パーツを標準化し、1932年に175ポンドで発売している。

新デザインのラジエターに大径ヘッドライト

ホーネット・スペシャルのドラムブレーキは、通常より大径の直径12インチ。トランスミッションは、新開発の4速マニュアルだったが、変速時にギアの回転数を調整するシンクロ機構は非実装だった。

6気筒エンジンは、カムシャフトの駆動をチェーン化。高圧縮比のピストンと強化バルブスプリング、オイルクーラーが組まれ、ツインSUキャブレターが載った。


ウーズレー・ホーネット・スペシャル・ウィッティンガム&ミッチェル・ボディ(1935年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

クロームメッキ・トリムが中央を飾る新デザインのラジエターと、直径10インチのヘッドライトが、通常とは異なる表情を生んだ。ダッシュボード上の大きなスピードメーターも、ホーネット・シックスとの違いだった。

とはいえ、戦闘力が高かったわけではない。排気量は1271ccで、アマチュア・レースの1500cc以下規定には収まったが。剛性の低いスチール製シャシーやリーフスプリング・サスペンションも、意欲的な走りには不充分といえた。

最初期のコーチビルド・モデルが起源

ウーズレーが、ホーネット・スペシャルを提供したのは3年程度。ベースが同じエンジンを積むMG Fタイプほど速くなくても、多様なモデルが誕生している。そこで今回は、往年の英国のクルマ文化を物語る、特徴的な5台を揃えてみた。

最初にご紹介したいのは、GW 2323のナンバーを下げたブラックの1932年式。スペシャル以前のウーズレー・シャシーがベースで、正確にはホーネット「スポーツ」と表現した方が良いかもしれない。


ウーズレー・ホーネット・スペシャル・スワロー・ボディ(1932年式/英国仕様)
    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ホーネット・スペシャルの起源は、これら最初期のコーチビルド・モデルにある。ジョン・ハウ氏が購入したのは4年前。驚くことに、彼はまだ3番目のオーナーだという。

レッドの差し色が目を引くツートーン・ボディは、スワロー社製。先細りのテールを持ち、プロポーションが美しい。細身のフェンダーは、ボディと一体化されている。

高いスピード感 排気音へ惚れ惚れする

ヘッドライトやスピードメーターが小さく、ラジエターが異なることからも、ホーネット・スペシャルではないとわかる。ダッシュボードにはタコメーターが追加され、3速MTのシフトレバーはかなり長い。エンジンはシングルキャブのままだ。

ステアリングはスロー。変速には練習が必要だが、80km/h巡航を余裕でこなせ、100km/h以上にも届くとか。スピード感が高く、天へ響く排気音へ惚れ惚れする。


ウーズレー・ホーネット・スペシャル・スワロー・ボディ(1932年式/英国仕様)
    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

パトリック・モーターズ社製のボディを架装した、ナンバーRB 7339の1台へ移ろう。同じく1932年式だが、こちらはホーネット・スペシャルのシャシーがベース。51年前に、アシュトン夫妻が購入している。

磨くだけでなく乗って楽しむもの、という哲学のもと、積極的に走らせている。おかげで、クリーム&ダーク・グリーンのボディは艶深いだけでなく、活き活きとして見える。

この続きは、ウーズレー・ホーネット・スペシャル(2)にて。