主役交代!ブロードコム・エフェクトでAI相場はどう変わる?<今中能夫の米国株ハイテク・ウォーズ>
現在のAI関連各社の動向を見ても、AI市場の成長は続き、唯一、最先端半導体を手がけるエヌビディアの地位はとりあえず維持されるだろう。したがって、同社に対する投資判断は「中立」と捉えている。ただし、巨大なデータセンターを保有している重要顧客の中でのエヌビディア製AI半導体のシェアがブロードコムに奪われ、さらに中国の「ディープシーク」のような効率化技術を導入することで、AI半導体をより効率的に使うことができるようになるかもしれない。そうなると、エヌビディアの増収率が低下していく可能性もあろう。
一方のブロードコムに関してはどうだろうか。AI市場の拡大が続くなかで、今後は確実にコストダウンの流れも広がっていく。そうしたニーズに応える同社の成長余地は大きい。今回の決算会見で印象的だったのは、同社が「現在の主要顧客4社の中でシェアが上がる」と指摘したことだ。これまでの会見では、自社製品をエヌビディアのAI半導体の補完的な製品だというニュアンスの発言をしていたのだが、今回の大型受注もあって自信を深めたようだ。約1300億ドルの売上高に達したエヌビディアと、500億ドルを超えたばかりのブロードコムでは、事業の成長率に差が出るのは当然のことだ。投資妙味という点では、エヌビディアよりはるかにブロードコムに魅力を感じる。
◆オラクル決算が示した"追う立場"の強み
一方、9月9日に決算を発表し、株式マーケットの評価が急上昇しているオラクル についてはどう見ればいいのだろうか。同社の25年6-8月期決算発表の中で注目を集めたのは、クラウドサービスを中心とした残存履行義務、つまり受注残高が前年同期比で約4.6倍の4550億ドルへと一気に膨れ上がったことだった。注目すべきなのは、翌日の同社の株価が35%急騰したのに対して、アマゾン・ドット・コム の株価が下落したことだ。
大手クラウド事業者の事業規模をざっくり比較すると、最大手のアマゾンの半分の売上高がアルファベット、そのまた半分の売上高がオラクルという構図になっている。ブロードコム同様、事業規模から考えれば、クラウド大手の中ではオラクルが最も成長率を上げやすいポジションにいるのだ。
投資の基本でもあるが、大きな利益を求めるなら、あまりにも大きくなってしまった企業より、今は小さくてもこれから大きくなる企業を探してみたい。企業経営の視点で見ても、追う側と追われる側を比べれば、追う側が圧倒的に有利だ。何もないところを一から市場を切り開くより、あらかじめ市場があるところに進出するほうが、より効率的な事業成長を求めることができるからだ。
少なくとも足もとのAI相場では、半導体のブロードコム、クラウドサービスのオラクルと、これまで市場をけん引していた超大手企業を追う立場の企業の成長率が上がっているし、株価もそれに応じて上昇している。ただし、現在のところオラクルのデータセンターはエヌビディア製AI半導体を使っており、カスタム型は使っていない。その点では、今後のコスト競争力には不安があろう。オラクルのデータセンターの顧客にオープンAIが入っているが、そのオープンAIが半導体コストの削減へと舵を切ったことを忘れるべきではないだろう。
AI相場の今後を考えるうえで、もう一つ注意すべきなのは、現在、米議会が検討している「GAIN AI法案」だ。これはAI半導体を国内に優先供給することを規定した法律で、エヌビディアのフアンCEOは明確に反対の意思表明をしているが、もし、施行されれば中国の半導体メーカーに大きなチャンスをもたらす結果になるだろう。
