EGOISTがラストライブで刻んだ永遠の“アイの歌”――横浜公演“Echoes of Everlasting”全18曲が紡ぐ楪いのりとchellyの最後の物語

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10月9日、1つの時代が終わりを迎えた。アニメ音楽のシーンに革命を起こした、ryo(supercell)がプロデュースを手がける架空のアーティスト・EGOISTが、神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにて開催した「EGOIST LIVE 2023 Resonant Indigo“Echoes of Everlasting”1009 YOKOHAMA」をもって、その活動に終止符を打ったのだ。しかし、その歌声は永遠に響き続けることを、EGOISTは、そしてchellyは、このラストライブで確かに証明してくれた。観る者すべての心に“アイの歌”を刻み付ける、あまりにも完璧なフィナーレがそこにはあった。
TEXT BY 北野 創
“楪いのり”と“chelly”最後のライブ、モールス信号が伝えるラストメッセージ
2011年、TVアニメ『ギルティクラウン』に登場するヒロイン・楪いのり(CV:茅野愛衣)がボーカルを務める劇中アーティストとして誕生したEGOISTは、オーディションで2,000人を超える応募者の中から選ばれたボーカリスト・chellyが歌唱を担当。『ギルティクラウン』の放送終了後も、同アニメの世界から飛び出して活躍の場を広げ、数々のアニメの主題歌を歌い、ライブ活動も精力的に行うなど、あくまでも“楪いのり”という存在をベースにしつつ、他に類を見ないアーティスト活動を展開してきた。
なかでも、3Dアバターを用いたライブでは、chellyの動きをモーションキャプチャしてステージ上のスクリーンにリアルタイムで反映する手法が取られており、これによって“楪いのり”が実際にライブを繰り広げているような臨場感と、現実空間では難しいダイナミックな映像演出を融合させたステージングを実現。今やVTuberの台頭によりAR(現実拡張)技術を駆使したライブは珍しいものではなくなってきているが、その先駆け的な存在としてEGOISTがいたことは、改めて特記しておきたい。
“楪いのり”と“chelly”、もはや一心同体となった2人のEGOISTとしてのラストライブは、鐘の音を合図に、厳かに幕を開ける。真っ暗闇のステージにピンスポットが当てられて彼女の姿が浮かび上がると、アカペラで歌い始めたのは「原罪の灯」。EGOISTの唯一のオリジナルアルバム『Extra terrestrial Biological Entities』の1曲目に収められていた楽曲だ。まるで祈りのように神妙な歌声で“来たる日まで共にあらん”ことを誓うと、その静かな立ち上がりから一転、続いて最新シングルでもある『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』の主題歌「当事者」を艶やかに歌い上げ、さらにTVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 2』のEDテーマ「Fallen」を披露。会場一面がペンライトを赤色に変えて沸き立ち、ノイズが侵食するようなグラフィック演出が激情感をさらに高めるなか、chellyは熱を孕みながらもあくまで優雅なボーカルを鮮烈に解き放つ。

MCパートでは、いつも通りのゆるい雰囲気でファンと交流するchelly。この日は雨模様だった横浜近辺の天気を受けて、「奇跡的に“雨”の入っている曲があったりして」とセットリストの匂わせをしたかと思うと、「思い残しのないように精一杯楽しんでください」と告げた彼女は、ここから「Extra terrestrial Biological Entities」「LoveStruck」「雨、キミを連れて」の3曲を続けてパフォーマンス。いずれも1stアルバムからのナンバーであり、曲調もEDMから青々しいギターロックまで様々。この時点で、本公演のセットリストはいわゆるベスト的な内容にはならないであろうことを予感させる(ちなみに9月23日に行われた「EGOIST LIVE 2023 Fleeting Ruby“The Crescendo”0923 OSAKA」はシングル表題曲/タイアップ曲を中心にした構成だった)。
続いては「しっとりめの雰囲気」のコーナーということで、まずは神秘的なムードを湛えた「カナデナル」を披露。ファルセットを交えた狂おしくも美しい歌声の高ぶりに呼応するように、上空に浮かぶ月が徐々に大きくなり、赤く色づいていく。そしてモールス信号の音が流れ始めると同時に、客席からは歓喜の声が。歌われたのは、OVA版『ギルティクラウン』の主題歌「Planetes」。そこに込められたのは、『ギルティクラウン』の主人公・桜満 集(CV:梶 裕貴)に対する想いであり、いつかまた再会できることを願う、もう1つの“アイの歌”だ。星々がロマンチックにまたたくなか、彼女は“あなたの記憶に私はずっと生きてる”と歌う。その言葉はラストライブという状況において、さらに特別なメッセージとして響く。楽曲の最後には、曲中で流れているモールス信号がリフレインされると同時に、スクリーンにその信号の意味する内容が表示され、感謝の気持ちといつかまた会えたら、という想いが伝えられた。
そして“しっとり”コーナーを締め括ったのは「キミソラキセキ」。2ndシングル「The Everlasting Guilty Crown」のカップリングに収められた、アニメ『ギルティクラウン』本編には使用されなかったものの、ファンであればいのりと集の関係に思いを馳せずにはいられない名バラードだ。スクリーンいっぱいに星空が広がるなか、天高く響き渡るchellyの歌声は、筆舌に尽くしがたい美しさで、例え過酷な運命が2人を引き裂いたとしても、永遠の愛を信じさせる説得力がそこにはあった。
「いびつで美しいアーティスト」EGOISTが最後に残したもの
MCで「Planetes」のモールス信号の演出について触れ、「モニターで見ながらウルッときちゃった」と語るchelly。だが、彼女もこの後のMCで何度も触れていたように、この日はラストライブとはいえ、いや、だからこそしめっぽいものにはしたくなかったのだろう。ここからは「盛り上がり曲コーナー」ということで、アッパーな楽曲を畳みかける。ギラついたロックンロール「It’s all about you」では“ザクトハチガウノダヨ?”のセリフもひと際アグレッシブに決めると、chellyが作詞を手がけた壮大かつ開放感に満ちたEDM「1.4.2」ではオーディエンスもクラップやハンズアップして狂喜乱舞。さらに熱狂的なブロステップ「Gold」(TVアニメ『ビルディバイド -#FFFFFF-(コードホワイト)』のオープニングテーマ)、圧倒的な音像と凄みのある歌声で極限の先へと至った「リローデッド」(映画『虐殺器官』主題歌)を畳みかけ、客席から絶叫のような歓声を引き出す。
「光る棒、振れたかー?」と笑いながら語るchellyだが、早くも次がライブ本編最後の曲に。「今日はラストということで、私もしみじみしながらですけど、楽しい思い出で終わりたいんです」と自身の気持ちを伝える。そして彼女にとっては「Departures 〜あなたにおくるアイの歌〜」に並ぶ“しんみり曲”だというナンバー、「All Alone With You」(TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』後期EDテーマ)を歌う。会場中がペンライトを白く灯して夢のような景色が広がるなか、エモーショナルなギターと絡み合って、お互いを高め合うように、どこまでも美しく上昇していくchellyのボーカル。音と光と歌声による浄化。観る者にそんな体験をもたらして、chellyは背中を向けて静かにステージを去った。
そしてアンコール。会場からの盛大な声に応えて戻ってきたchellyがまず披露したのは、『ギルティクラウン』後期OPテーマ「The Everlasting Guilty Crown」。やはりこの楽曲を聴かないと終われない。稲光のように鋭く空気を切り裂くギター、雷鳴の如く鼓動するビート、あらゆる音が激しい雨のように降り注ぐなか、chellyの歌声が真っ直ぐと突き刺さってくる。続いて歌われたのは「永遠」。8thシングル「英雄 運命の詩」のカップリング曲ということで、いわゆる誰もが知っているメジャーな楽曲ではないが、“永遠のさよなら”を前にして“私の傷跡”を残さんとするこの歌をアンコールで歌うことに、大きな意味を感じさせずにはいられない。
それに続いたのは、EGOISTの代表曲にして2010年代のアニメソングを代表する大名曲、TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』の前期EDテーマ「名前のない怪物」。イントロが鳴り響くと同時にオーディエンスも大興奮、映像演出によってエマージェンシーのように赤々と染まる会場で、この日一番とも言える声を上げて熱狂する。chellyもその景色を記憶に焼き付けようとするかのように、ステージの上手・下手へと移動しながら、客席をしっかりと見渡す。おそらくこれがライブで歌われる最後の「名前のない怪物」になるわけだが、その実感がまるで沸かなかった。あまりにも強烈な光景に、脳の処理が追い付かない。ただただ圧倒されるしかない。やはりEGOISTの「名前のない怪物」には、特別なパワーが宿っているのだ。

最後のMC。EGOISTという「いびつで美しいアーティスト」としての活動を最後まで全うできたことを誇りに感じていると語るchelly。「愛のある歓声に、私自身どれだけ救われていたか。みんなもっと誇っていいよ」と感謝の言葉を伝える。EGOISTの活動はこれで終了するが、その楽曲は、この先いつまでも聴き継がれ、あるいは歌い継がれることだろう。chellyは「これからも道なき道を歩いていくあなたを1人にはさせない物語を愛してくれたらと思います」と伝え、アンコール最後の楽曲「Departures 〜あなたにおくるアイの歌〜」を歌い始める。『ギルティクラウン』前期EDテーマであり、EGOISTが世に送り出した最初の楽曲、そしてオーディションの課題曲としてryoがchellyを選ぶ決め手となった、すべての始まりの歌だ。“楪いのり”の姿をしたchellyの周りを、いくつもの光がホタルのように浮かんで舞う。その1つ1つが、この12年の活動で育まれた様々な思い出を象徴するかのようで、温かくも切ない想いが込み上げてくる。哀切感に満ちたファルセットが胸を締め付ける。この別れは、もしかしたら最初から約束されていたことなのかもしれない。『ギルティクラウン』のいのりと集のように、我々はEGOISTにもう二度と会えないのかもしれない。それでも、この歌が、この思い出が、消えることはないだろう。こんなにも美しい“いのりの歌”を、誰が忘れられるだろうか。
歌い終えて、深くお辞儀をするchelly。そのままスクリーンはブラックアウトして、エンドロールの映像が流れるなか、客席は拍手喝采で感動と惜しむ気持ちを伝える。だが、EGOISTの物語はこれで終わりではなかった。エンドロールが終わると、続いて楪いのりのキャストである茅野愛衣の声で、メッセージが読み上げられる。「わたしはここで あなたは明日へ 月はかけてゆくけれど またいつか 出会うその瞬間(とき)まで わたしはずっと ここにいるよ」――まるで楪いのりから、新たな道に出発(Departures)したchellyに宛てた、はなむけのような言葉、そして新しい約束のような言葉だ。そして真っ暗闇の会場に、chellyの歌声が再び響き渡る。それは「原罪の灯」のアカペラ部分――“ここに証そう お前の名を ご覧 あれが生命なる灯”。そしてライブの冒頭と同様に鐘の音が祝福のように鳴り響き、EGOISTの物語は本当の完結を迎えた。
最初に書き添えたように、あまりにも完璧なフィナーレがそこにはあった。改めてセットリストを振り返ってみればわかると思うが、今回はアルバム収録曲やシングルのカップリング曲をふんだんに組み込んだ構成になっていた。それは、いわゆる有名曲を中心としたベストオブベスト的な内容で有終の美を飾るのではなく、“EGOIST(とchelly)のラストライブ”として意味のあるものを追求してのことだったのは間違いない。「原罪の灯」で始まり「Departures 〜あなたにおくるアイの歌〜」で終わる並びはEGOISTの1stアルバム『Extra terrestrial Biological Entities』と同じだし、chellyが作詞した2曲(「LoveStruck」「1.4.2」)が両方とも披露されたのもおそらく意図してのことだろう。『ギルティクラウン』という1つのアニメ作品から生まれたEGOISTの12年の軌跡を締め括りとして、これ以上ないほどに素晴らしいラストライブだった(余談だが、終演後の会場BGMとして、『ギルティクラウン』のサントラより「Release My Soul」が流れていたことも付け加えておく)。
EGOIST LIVE 2023 Resonant Indigo “Echoes of Everlasting”1009 YOKOHAMA
2023/10/9 (月・祝) パシフィコ横浜 国立大ホール
<セットリスト>
01.原罪の灯
02.当事者
03.Fallen
04.Extra terrestrial Biological Entities
05.LoveStruck
06.雨、キミを連れて
07.カナデナル
08.Planetes
09.キミソラキセキ
10.It’s all about you
11.1.4.2
12.Gold
13.リローデッド
14.All Alone With You
15.The Everlasting Guilty Crown
16.永遠
17.名前のない怪物
18.Departures 〜あなたにおくるアイの歌〜
プレイリスト
https://egoist.lnk.to/EchoesofEverlasting2023YOKOHAMA
関連リンク
EGOISTオフィシャルサイト
http://www.egoist-inori.jp/
EGOISTオフィシャルX(旧Twitter)
https://twitter.com/EGOIST_2039
EGOISTオフィシャルYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/egoistSMEJ
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