豊富な経験で徳島を牽引する柿谷。チームメイトにはさらに貪欲になってほしいと期待している。(C)TOKUSHIMA VORTIS

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 柿谷曜一朗(徳島)が2014年のブラジル・ワールドカップ(W杯)のあと、スイス1部のバーゼルで1年半プレーしたことは、周知の事実だろう。

 当時はマンチェスター・ユナイテッドの香川真司(現C大阪)、インテルの長友佑都(現FC東京)、シャルケの内田篤人など欧州ビッグクラブで活躍する選手はほんの一握りだった。

 けれども、2023年現在では日本代表メンバーのほとんどが欧州組。しかも最高峰と言われるイングランド・プレミアリーグで三笘薫(ブライトン)が大活躍し、リーガ・エスパニョーラで久保建英(レアル・ソシエダ)も強烈なインパクトを残すなど、日本人選手の躍進は顕著だ。

「鎌田(大地/フランクフルト)君や堂安(律/フライブルク)君は20歳前後で海外に行った分、アドバンテージがあったと思うけど、やっぱり久保君がブッチギリかなと感じます。

 そもそも久保君が最初にスペインに行ったのは小学生の時。その感覚は俺には想像できないものがある。今までの日本代表で考えても、中田ヒデ(英寿)さんとか小野伸二さん(現札幌)のようなレベルだと思うから、ある意味、超越してるところがあるんじゃないかなと思いますね。

 もちろん久保君は技術や戦術も高いけど、育ってきた環境が違うから、年長者に対してもズバッと意見を言ったりできるはずだし、メンタル的にも、ものすごく強い。そういう意味でも彼には自ずと注目してしまいます」と、柿谷は久保に興味津々だと明かしていた。
 
 一方で、三笘に関しては、自身とポジションが少し違うこともあって、少し引いた目線で見ているようだ。

「三笘君の凄いところは、全部勝負しすぎずに、ゆっくりとプレーできる部分。プレミアで見てると全然勝負せずに、ポンポン後ろに返している場面が多い。ただ、ここぞというところで絶対に行くから、抜き切れるし、相手も翻弄される。あの緩急のつけ方は本当に感心させられます。

 自分も外をやったことはあるけど、あそこまでスピードがないから、同じようにはなれない。俺はグリーリッシュ(マンチェスター・シティ)に近いタイプかなと(笑)。サイドはあんまり人がおらんから、中央にいて、後ろから人が来てくれたほうがサッカーは面白い。

 自分は身体も大きくないし、強くないから『どうぞ1対1してください』っていうのはあんまり自信を持てないし、人がたくさんおるところで技術を出すほうがやりがいを感じます」と、柿谷は自分を客観視している。

 30代半ばを迎えつつある今、アップダウンの多い仕事は運動量的にも厳しくなる。その分、賢く頭を使いながら、味方を動かし、自分も生きるほうが得策だ。欧州で活躍する日本人選手のプレーを見ることは、自分らしさとは何かを考え、追求していく機会になっているのだろう。

【動画】柿谷の“天才的な反応”&“華麗なパス”
 そんな柿谷にとって、久保以外の注目の若手は誰なのか。その問いに対し、柿谷は少し意外な回答を口にした。

「(東京)ヴェルディに行った甲田(英将)なんかは凄いと思う。マジでドリブルの迫力が凄まじいし、1つ違ったらとんでもない選手になるような気がする。まだ経験が浅い分、三笘君みたいな抜きどころが分かっていないと思うけど、その感覚と駆け引きを身につけたら、相当なタレントになる可能性があると思いますね。

 今は名古屋からヴェルディにレンタルで行ってるけど、海外に行けばどう評価されるか分からない。今年シャルケでデビューした上月(壮一郎)君のような例もあるよね。選択肢が広がっているからこそ、才能ある選手のことを考えてアプローチしてあげないと、上手く伸ばせないってこともあるかもしれないから、そこは大事にしてほしいですね」と、昨季まで一緒にボールを蹴っていた13歳年下のアタッカーにエールを送った。

 若い選手は、徳島にもいる。森海渡や玄理吾、西野太陽や前線のアタッカー陣はもちろんのこと、最終ラインを形成する石尾峻雅や森昂大らも20代前半。彼らに凄みが出て来れば、徳島の守備陣もより安定感を増すはずだ。
 
「森昂大とか石尾には『絶対に何もさせへんぞ』っていう気迫とか怖さを相手に感じさせるようなディフェンダーになってほしいですね。自分がそう感じたのはトゥー(田中マルクス闘莉王)さんとか、モリゲ(森重真人/FC東京)、中澤(佑二)さん、槙野(智章)君。ちょっと汚いことを含めて駆け引きにも長けているし、勝つためにはいろんなことをしてくる。そういうことを覚えてタフになってほしいと思ってます。

 それと徳島全体に言えることやけど、『もっと上に行きたい』『金を稼ぎたい』『突き抜けたい』っていう貪欲さとか泥臭さが足りないこと。どこか現状に満足してるのかなって感じることもあるから。そういう意気込みがなかったら、ここから上に行くことはできへんと思うんです。

 前半戦で良い戦いができなかった分、ここからもっとそういう強い気持ちを持って挑んでいかなアカン。『本気でプレーオフ圏内に入ってやるんや』と虎視眈々と突き進んでいく必要がある。彼らがそうなるように、自分は良い雰囲気を作りたいですね」

 33歳の柿谷なりの操縦術で若い力を引き上げることができれば、ここから後半戦の戦いも大いに盛り上がるはず。そのためにも彼自身の結果が重要だ。

 尊敬する大久保嘉人や佐藤寿人、興梠慎三(浦和)といった恒常的に二桁ゴールを何年も取り続けた偉大な点取り屋たちに追いつけ追い越せで、10年ぶりの二桁ゴールを達成し、古巣への恩返しを果たしてほしいものである。

※このシリーズ了

取材・文●元川悦子(フリーライター)