話題沸騰の「屋根なし軽トラ」なぜ存在? 果樹園で見かける仰天仕様に注目集まる! メーカーも注力する実態とは
まさに「果樹園スペシャル」な「屋根なし軽トラ」はどう作る?
リンゴやブドウ、ナシなどを栽培する果樹園では、屋根のない軽トラックが活躍しています。
SNSなどでもしばしば話題となるこの「屋根なし軽トラ」ですが、いったいどのようにしてつくるのでしょうか?また、車検には通るのでしょうか。

コンパクトながら高い積載能力を持ち、耐久性や経済性にも優れている軽トラックは、日本のビジネスシーンをながらく支え続けてきました。
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そんな軽トラックですが、リンゴやブドウ、ナシなどを栽培する果樹園では、キャビン上部の屋根が取り払われた状態のものが活躍しています。
大規模な果樹園では収穫の際に機械を使用する場合もありますが、小規模や中規模な果樹園では人の手によって収穫することが一般的です。
そのため多くの果樹園では、人間が収穫しやすいように1mから1.5m程度の高さに果実がなるように栽培されますが、収穫した果実を持って移動するには、やはりクルマの力を借りたいのも事実です。
しかし、一般的な軽トラックは全高が1800mm程度あるため、果樹園をそのまま走行してしまうと大切な果実を傷つけてしまいます。
一方、屋根なしの状態にすると全高は1000mm程度まで低くなり、果樹園を自在に動き回ることができるようになります。
リンゴ農家の多い青森県では、こうした「屋根なし軽トラ」を「バゲ」などと呼ぶそうです。
その由来は諸説ありますが、公道で走るという本来の役目を果たせなくなった軽トラックが、果樹園で形を変えて走っている様子がまるで「オバケ」のようだとして、それが訛って「バゲ」となったといわれています。
屋根なし軽トラについて、とある農業関係者は、次のように話しています。
「果樹園では『管理機』と呼ばれる手押し型の農機具に、収穫用のカゴを付けて収穫をしていました。
この管理機は、アメリカのメリーテーラー社製のものが多く、地域では『テーラー』と呼ばれています。
また、果樹園の規模が大きなところでは、廃車寸前の軽トラックなどを互いに融通し合い、木々の邪魔にならないようにクルマの屋根を切って果樹園専用に使っています」
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実際、「屋根なし軽トラ」のベースとなるのは、スズキ「エブリイ」やダイハツ「ハイゼット」、スバル「サンバー」といった、ごく一般的な軽トラックです。
ただ、当然のことながら、屋根なしの状態で販売されているわけではなく、多くの場合、DIYによって自分自身で屋根を取り外しているようです。
その方法は極めて簡単で、フロントガラスを外した後に、ピラーをディスクグラインダー(サンダー)でカットします。
切断面をそのままにすると、果物や身体を傷つけてしまうおそれがあるため、ゴムチューブなどで覆う場合が多いようです。
その後、果樹園を走行するのには不要な、サイドミラーやワイパーなどを取り外し、場合によっては両側のドアを取り外すことでさらに身軽にします。
実際にはそれなりの熟練を要するものですが、軽トラックは構造が簡単なため、このようにDIYで「屋根なし軽トラ」へと生まれ変わらせることができるようです。
まさに果樹園スペシャル! 「屋根なし軽トラ」は車検はどうなっている?
そんな「屋根なし軽トラ」ですが、車検を取得し、公道を走行することはできるのでしょうか。
結論からいえば、「果樹園スペシャル」ともいえるこの「屋根なし軽トラ」で公道を走行することはほぼ不可能です。
まず「屋根なし軽トラ」では車検証に記載されている寸法が保たれていないため、この時点で新車で購入した際の車検は無効となってしまいます。
この点については、構造変更届を提出することでクリアできる可能性はありますが、サンバーをのぞく軽トラックは車体がモノコック構造と認定されており、改造に対して厳格な制約が適用されます。
さまざまな制約を乗り越えて公認を取得するのはとても難しく、コストなどを考慮すると事実上不可能といえます。
それ以前に、サイドミラーやワイパーのないクルマは車検が通らないため、「果樹園スペシャル」の状態で車検を取ることは限りなく難しいと見て間違いないでしょう。
一方、「屋根なし軽トラ」に改造される軽トラックのほとんどが、すでに長年にわたって活躍してきた個体であり、将来的に公道を走行したり、あるいは中古市場で販売したりされることは想定されていません。
そのため、わざわざコストと手間をかけて構造変更届を提出する必要はなく、さらにいえば、果樹園は基本的に私有地であるため、道路交通法や道路運送車両法の適用を受けないことから、そもそも車検を取得する必要がありません。
こうした背景から「屋根なし軽トラ」を公道で見かける機会はほとんどなく、まさに果樹園など一部の地域だけで見られる「オバケ」のような存在といえます。
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果樹園スペシャルのニーズは根強いことから、これまでダイハツやホンダなどが「屋根なし軽トラ」にインスピレーションを受けたコンセプトモデルを発表してきました。
最近では、2022年10月に開催された「農業WeeK」において、ヤマハが「果樹園作業支援自動走行車」を展示しました。
丸目のヘッドライトに薄いグリーンのボディカラーが印象的なこの1台は、独立バンパーやオフロードタイヤ、収穫した果物を入れるカゴ置き場を備えるほか、ボンネット部分には通信用のアンテナを持ち、果樹園を自動で走行すること可能で、まさに屋根なし軽トラの深化版といえます。
将来的にはこうした最新の農業支援車両が増えていくと見られますが、導入コストや耐久性などの観点から、今後もまだまだ「屋根なし軽トラ」は現役でありつづけることでしょう。
