韓国内のコロナ第3波の影響で、昨年12月の公開が延期になっていた「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が、ついに韓国で一般公開される。

【写真】この記事の写真を見る(8枚)

 韓国メディアによると、劇場版「鬼滅の刃」は1月27日、韓国の映画館チェーン「ビッグ3」(CGV、ロッテシネマ、メガボックス)の1つであるメガボックスの全国上映館で1週間独占公開された後、公開後の状況によっては、2週目からはCGVでも上映が始まる可能性があるという。


韓国版のポスター(韓国SMGホールディングス公式Facebookより)

 日本のアニメーション映画は通常、ビッグ3のうち、いずれかで独占公開するのが一般的。もし劇場版「鬼滅の刃」がメガボックスだけでなくCGVでも公開となれば、上映館数は倍以上に増加することになる。

 劇場版「鬼滅の刃」が当初の予想とは違って、上映初期から上映館数を大幅に増すことができれば、コロナ禍で観客の足が途絶えてしまった映画館が、活気を取り戻すきっかけになるかもしれない。

 このように公開前から韓国映画界の期待を集めている「鬼滅の刃」。本作への韓国ファンの反応を知ることができる機会がやってきた。

 1月22日から3日間、プレミアム試写会を通じて韓国ファンに初披露されたのだ。

 22日、ソウルでの単独試写会を皮切りに、23日、24日は全国の21のメガボックスで、一般人を対象にした有料試写会が行われる。いわば「先行上映」だが、「鬼滅の刃」のキャラクターが描かれたクリアファイルや、声優たちのメッセージ映像という特典がついたおかげか、3日間、全上映館で完売を記録した。

試写会には長蛇の列が

 22日午前11時30分、メガボックス・ソウル三成洞(サムソンドン)COEX館。12時から始まる1回目の試写会の前に、映画館を訪れた。

 コロナの影響で、映画館を訪れる客が少ないせいか、映画館のロビーはがらんとしていて、チケット窓口も閑散としていた。

 しかし、「鬼滅の刃」上映10分前を知らせる案内がディスプレイに出ると、押し寄せたファンたちが、入場のために長い列を作り始めた。

 男女比は6:4くらいで男性が少し多い印象だ。年齢層はほとんどが10代から20代に見えた。特に、冬休みを迎えた高校生らが最も多く目についた。

 列に並んでいたソウル江北区(カンブクグ)から来た男子高校生3人組は、「自分たちは『鬼滅の刃』の熱血ファンです」と語った。クラスメートだというこの3人はもともと日本の漫画が大好きだそうだ。

「『鬼滅の刃』はとても人気があって、クラスメートの間でも有名。私たちは漫画だけでなくアニメも何度も観て、日本で劇場版が作られるという話を聞いた時からすごく長い間待ってきました。一緒に観に来たいと思っていた友達はもっといたんですが、私たち3人しかチケットが取れなくて……。一般公開されたら、他の友達も誘ってまた観に来ます」

煉󠄁獄のコスプレで着飾った男性も

 映画配給会社のSNSで試写会を知ったという女子大生は、コロナ発生以来映画館を訪れたのは今回が初めてだという。

「インターネットで毎日『鬼滅の刃』を検索しています。そうしているうちに試写会のニュースを知りました。友達はコロナのせいで映画館に来るのを嫌がるので、恥ずかしいけど1人で観に来ました。1人で映画を観るのは『鬼滅』が初めてです」

 この日、出会った最も印象的な観客は、劇場版の主な登場人物である煉󠄁獄杏寿郎のコスプレで着飾った20代の男性だった。

 ソウルから車で2時間30分も離れている忠清南道・大田に住む会社員の彼は、この試写会のために休暇を取って1泊2日の日程でソウルを訪れた。COEX館での試写会が終わると、近くのゲストハウスに宿泊し、明日はさらに2カ所で試写会を観た後、夜遅くバスに乗って大田に戻るという。

終盤、あちこちからすすり泣く声が

 筆者は午後2時40分に始まる2回目の試写会を鑑賞した。映画が始まる前、試写会だけの特典映像として、主演声優たちが韓国のファンに贈るメッセージが上映された。

「皆さん、全集中! 竈門炭治郎役の花江夏樹です」「韓国のファンの皆さん、こんにちは! 禰豆子役の鬼頭明里です……」

「いつも鬼滅の刃を愛してくださる韓国のファンの皆さん、チェミッケパジュセヨ(楽しんでください)!」

 声優らのメッセージが終わり、いよいよ始まった映画は、穏やかに始まったかと思ったら、いつの間にか激しいアクションが繰り広げられ、目が離せない速い展開が続いた。

 観客たちは物語に吸い込まれたようで、映画館内は息を殺したような静寂が流れた。

 しかし、映画がクライマックスにたどり着くと、あちこちからすすり泣く声が聞こえてきた。メガボックスのホームページに、関係者の「嗚咽した」という感想が紹介されていたが、おそらくこのあたりのことのようだった。

友達には映画を勧めることはできないけど……

 やがて映画が終わって席を立つ観客にインタビューを試みた。

 今はコロナの影響で仕事を休んでいるという20代の女性は、日本文化が好きで、日本旅行が趣味だという。「鬼滅の刃」では、自分の好きな日本的なイメージがたくさん見られてよかったという。

「弱者を守ることが強い者の使命という煉󠄁獄のメッセージが胸に響きました。特に、甘い夢の中にとどまらないで、目を覚まして前に進んで現実とぶつかりなさいというメッセージは、コロナでショックを受けた私の心も慰めてもらった気がします」

 しかし、彼女は、友達には映画を勧めることはできないと話した。

「周りの友達は日本の不買運動にも熱心だし、日本のアニメに対する偏見もあります。炭治郎の耳飾りが旭日旗に似ているという話もあって、さすがに友達には勧められません。しかし、私は一般公開したら、また観に来るつもりです。とにかく最後の曲がとてもよくて、それを聴くためにも3、4回は観たいと思います」

 韓国のネット界では、「炭治郎の耳飾りが旭日旗に似ている」と大騒ぎになったことがある。実際、耳飾りのデザインは日本版と韓国版で異なっている。今回、映画を観に来た観客はどう思うのだろうか。

 仲良しの友達と一緒に映画館を訪れた高校3年の女の子は、「そんなの関係ない!」と答えた。

「私の周りでは誰もそんなの気にしていない。ちゃんと映画は映画として受け止めているよ」

 ちなみにこの女子高生たちは、クリアファイル や声優たちのメッセージ映像といった特典をお目当てに、試写会を観に来たという。

「キャラクターもきれいですが、音楽が最高です。最後の合唱とオーケストラが合わさったような曲はとても雄大で煉󠄁獄のテーマ曲のように感じられて、たくさん泣きました。来週もチケットを予約しました。元々、煉󠄁獄が最愛キャラだから、少なくとも10回は観たいと思います。今年は大学入試の勉強もしなければならないので、『鬼滅の刃』を今年の最後の映画にします(笑)」

前売りはディズニー期待作の2倍以上

 京畿道・一山から来たという中年女性は、高校1年生の息子と小学6年生の娘が「鬼滅の刃」のファンで一緒に来たという。「15歳以上観覧可」であるため、保護者の同伴が必要だったからだ。

「息子が先に好きになって、妹も一緒に好きになったみたいです。映画が15歳以上観覧可でちょっと心配しましたが、残酷な場面を除けばメッセージは本当に素晴らしいと思います。家族を大切にしなさいとか、優しい人こそ本当に強いんだよという、私も子供達に教えていることがまっすぐに伝わってきました。子供たちと一緒に観に来てよかったです」

 初日の3回にわたるプレミアム試写会が終わった23日午前、「鬼滅の刃」の上映第1週の前売り率は62.5%で、ディズニーの期待作「ソウルフル・ワールド」(23.8%)との差を2倍以上に広げ、メガボックスの映画の中で1位を独走している。映画評点も9.7点で1位だ。

 メガボックスのHPに寄せられたコメントも、「作画がすごすぎる。N次(何度も観覧すること)は必須だ!」「観ながらずっと鳥肌が立って泣いての繰り返し! 本当に名作!」「これまでの人生で映画評は初めて書きます。エンディングの歌が流れている間ずっと泣いちゃいました」など、熱心なファンが多く足を運んだ試写会とはいえ、賞賛する声が並んだ。

 試写会を通じて韓国ファンから大きな好評を得た「鬼滅の刃」は、果たして序盤の勢いを維持することができるだろうか。まずは上映初週の成績を期待してみたい。

(金 敬哲/Webオリジナル(特集班))