by Sergio Russo

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が2020年4月20日に、2020年3月における中毒事故管理センターへの通報件数が例年に比べて著しく多いとのレポートを発表しました。その原因は、人々が新型コロナウイルスから身を守ろうとして漂白剤などの薬品を不適切に使用しているからだとみられています。

Cleaning and Disinfectant Chemical Exposures and Temporal Associations with COVID-19 - National Poison Data System, United States, January 1, 2020-March 31, 2020 | MMWR

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6916e1.htm

CDCの発表によると、洗剤や消毒剤への暴露を原因とする2020年1〜3月の通報件数は4万5550件で、2019年と2018年の同期に比べてそれぞれ20.4%と16.4%も多かったとのこと。そのことを示すグラフが以下で、左が洗剤、右が消毒剤の通報件数です。黒色の線で示された2020年の折れ線グラフを見ると、特に3月に入ってからの発生件数が青色の線で示された2019年のグラフや水色の線で示された2018年のグラフに比べて有意に高いことが分かります。

CDCは「薬品への暴露と、新型コロナウイルス対策の取り組みとを直接結び付けるデータはありませんが、明確な時間的関連性があるように思われます」と述べて、中毒件数の増加は新型コロナウイルスの影響であるとの見方を示しました。

通報の内訳を分析すると、2020年における薬品中毒の増加は全ての年齢層で見られたとのこと。特に、5歳未満の子どもの中毒に関する通報は全体の約半分を占めましたが、この傾向は2019年や2018年も同様でした。

原因となった薬品ごとに通報を分類すると、洗剤カテゴリーは3137件でしたが、中でも漂白剤が1949件、割合にして62.1%と突出していました。一方、消毒剤カテゴリーの通報は4591件増加していましたが、原因となったものは手指消毒剤と非アルコール消毒剤がともに1684件と、比較的幅広い製品で中毒事故が見られる結果となりました。

また、CDCは洗剤と消毒剤の事故の事例をそれぞれ紹介しています。

◆事例1

最初の事例は、「食品を食べる前に洗浄するべき」というニュースを聞いた成人女性の中毒事故です。その女性はシンクに湯をはってから漂白剤と酢を入れて、そこに果物や野菜などを浸しました。その間、女性は台所で他の食べ物を洗っていましたが、程なくして塩素臭を感じ、呼吸困難・せき・息切れを起こして救急通報しました。女性は救急車で病院に運ばれ、軽度の低酸素血症と重度の息切れの診断を受けましたが、酸素吸入と気管支拡張剤で回復。胸部X線写真にも異常がなかったことから、数時間の経過観察の後退院しました。

◆事例2

2つ目の事例は、未就学児童が自宅でアルコール入りの消毒剤を飲んでしまった事例です。児童がいた家の台所のテーブルの上には、エタノールが使用された64オンス(約1.9リットル)入りの手指消毒剤のボトルが開封された状態で置かれていました。通報した家族によると、児童は不明な量の消毒剤を飲んだ後めまいを起こし、転倒して頭を打ったとのこと。児童がおう吐や反応の低下といった症状を見せたため病院が血中アルコール濃度を測定したところ、飲酒運転の基準の上限値の3倍を超す濃度のアルコールが検出されました。しかし、幸いにも頭を打った事による神経の損傷は認められませんでした。児童はその後、集中治療室で1晩を過ごし、入院から48時間後に退院しました。

CDCは今回の発表について、「あくまでも中毒事故管理センターへの通報数がもとになっているので、実際の総発生率や重症度を過小評価している可能性が高いです」と指摘。さらに、「新型コロナウイルスとの因果関係は証明することができませんが、報告が急増したタイミングは新型コロナウイルスのパンデミックに関するメディア報道の増加や、洗剤や消毒剤の不足が報告されるようになった時期、およびいくつかの地域で自宅待機命令が出された時期に合致しています」と述べて、新型コロナウイルスとの関係を強く示唆しました。

また、消費者に対しては「事故の急増は、製品のラベルに記載されている使用量を超えたり、複数の製品をまぜたり、適切な保護具の着用や換気を怠ったりするなどの不適切な使用が原因である可能性があります。こうした事例を防ぐためには、製品の使用者は常にラベルの指示をよく読んでそれに従うべきです。また、ラベルに特段の記載がない限り、薬剤は常温の水だけで希釈してください。そして、製品は子どもの手の届かない場所に保管し、使用する際は化学薬品を混合させるのは避け、目や皮膚を守る保護具を着用し、十分な換気を確保してください」と呼びかけました。