声優業界はセクハラの温床?「声を聞きたいから家に行かせて」と言われ…

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声優を守るべき立場の社長自らのセクハラ行為

 声優志望の少女へのわいせつ行為により、アニメ製作会社ガイナックスの社長・巻智博容疑者(50)が逮捕された事件が波紋を呼んだ。ガイナックスは声優志望者のための養成所も営んでおり、今回被害を受けたのはそこに所属する研究生のひとりだった。

 声優業界は過去にも大手事務所の社長が逮捕されたこともあり、関係者による声優志望の女性への枕営業の強要やセクハラ行為の横行がまことしやかに噂されている。

 今回、取材班は現役の声優および元声優志望者に、声優業界の裏話を聞いてみた。

◆オーディション後の面談で性的要求をしてくる卑劣なマネージャー

 まず話を聞いたのはアニメやラジオなどでも活躍する女性声優・野村さん(仮名・26歳)。「業界内に枕営業が横行しているわけではない」ということを前置きしつつ、以下の話を語ってくれた。

「声優業界は枕営業をすれば売れるような甘い世界ではありませんが、駆け出しの声優志望者たちの“声優になりたい、売れるきっかけが欲しい”という気持ちを利用してくる大人が一定数いることは事実です。

 今回逮捕されたケースのように、事務所の関係者が“写真慣れするため”と言って水着で写真を撮ったり、講師が“声を出すための筋肉のつきかたを確認する”と言って身体を触ったりしてくるセクハラ行為の話はよく聞きます。私自身、ある事務所のオーディションを受けた際、そこの社長から“声(ボイスサンプル)を聞きたいから家に行かせて?”と言われたこともありました」

 他にも、酒の席で事務所関係者に滑舌の悩みを相談したら、「フェラするのが良いよ」と言われたこともあるそうだ。冗談のつもりだろうが、普通の会社だったらセクハラで訴えられるような話だ。

「女の子としても、相手の立場が上だと、おかしいなと思ってもキッパリと拒否できない。特に事務所の社長などは、いつもお世話になっているし、信用したい。そういった気持ちが働き、違和感があっても納得しようとしてしまう人はいるかもしれません」

 次に話を聞いたのは小規模の声優事務所に所属していたが、結婚を機に引退した手塚さん(仮名・29歳)。とある中堅事務所の養成所オーディション後、面談で性的な要求を突きつけられた。

「声優になるには“養成所→預かり→準所属→所属”というパターンが多いのですが、ある養成所のオーディション後に、マネージャーの一人から“僕に一晩付き合ってくれたら準所属からのスタートにしてあげるよ”と提案されました。

 結局断りましたが、その時の担当者は後に養成所の研究生に手を出していたのがバレて解雇になっていました。その人は同事務所の有名女性声優の名前と代表作をあげて、“あの仕事は監督への枕営業で取ったんだよ”と言っていました。それが本当かはわかりませんが、常套の誘い文句だったのでしょう」

 自分の性欲のためだけにマネージャーが自身の会社の声優を貶めたとすれば、これほど身勝手な話はない。

◆枕営業が発覚して男女共に処罰されるも……

 もちろん、声優業界が枕営業を許しているわけではなく、そういった行為が公になれば、男性側も女性側も何らかの処罰を受ける。しかし、中にはなんとも妙な事態となっているケースがあるようだ。先述の野村さんが語ってくれた。

「同じ事務所の新人の女の子が、急にゲームやイベントの仕事が立て続けに決まったんです。特に演技が上手いわけでもなかったので不思議でしたが、後に枕営業だったということが判明しました。決まった仕事の上層部に、必ず同じ人物が参加していたのでバレバレだったようです。男性は会社から処罰されたようですが、その子も事務所を退所させられました。

 でも、しばらくすると別の事務所で復帰して、最近は有名な作品にも出始めています。退所後に改心して再スタートしたのかもしれませんが、はっきり言って複雑な心境です。狭い業界なので、枕営業の話は新しい事務所側も知ってそうなものですが……」

 各事務所や会社単位ではセクハラ行為に対して厳しく取り締まっているところもあるようだが、今回のように事務所の社長自らがそうした行為に及んでいる場合、内部の人間には解決しづらい。

 また、事務所に所属する声優でも、ほとんどの場合は「個人事業主」という立場にあるため、2019年5月に成立した企業から労働者を守る「ハラスメント防止法」などの保護対象にならない。

 そうした実情を鑑みると、アニメ業界の労働環境はまだまだ改善の余地があるのかもしれない。業界による自助努力はもちろん、行政側の対策も望まれる。<取材・文/日刊SPA!取材班>