従来型の扇風機の前で声を出すと、巨大な羽で声が断片的に遮られる。これが風を断片的に起こさせているというものである。


電熱線やファンがない、ドーナツ型のヘアドライヤー「Supersonic Ionic」


ダイソンは、
この独自の特許技術である「Air Multiplier」機能搭載した、ドライヤーを2016年に発売した。さらに2018年には風を科学したとも言うべき製品「Airwrap スタイラー」を発売している。


巻きたい毛先を近づけるだけで、自然にカーラーに髪が巻き付いていく「Airwrap スタイラー」


Airwrap スタイラーは、高速回転するデジタルモーターで生み出された強い風を、筒状のカーラーの表面を這うようにして送り出している。
こうすることで、噴流が這う表面に周りの流体が引き寄せられるコアンダ効果が発生し、髪がカーラーに巻き付いていくのである。

カーラーに髪を吸い寄せるなら風を外に出すのではなく、掃除機のように穴から空気を吸う方式で良いと思いがちだ。
しかしその方法の場合、自然に髪をカーラーに巻き付けるためには、髪の毛が吸い込み口から吸われないようにしながら、カーラーを回転させながら髪の毛を巻き付けていかなくてならない。




Airwrap スタイラーを使えば、コアンダ効果を利用することで、腕を回転させずに噴流の向きにそって自然に髪が巻き付いていくのだ。さらに、この噴流に程よい熱を加えることで、髪を乾かしながら高熱でダメージを与えることなく、自然なスタイリングができるのである。

最新のSupersonic Ionicは、こうした風を科学することをさらに推し進めた製品だ。

通常のドライヤーは、風で熱を送って乾かす。
しかしながら風量は、本体サイズから限界がある。
このため、素早く乾かすためには、熱量を上げるしかなかった。

宿泊先の備え付けのドライヤーが、風量も熱量もなくてなかなか髪が乾かないなんて経験は誰しもあるだろう。
これはヒーターの温まりが悪いため熱量が足りない上に、発生した風邪が逆に発生した熱を冷ましてしまうという悪循環が起きているためだ。

つまり理想的なドライヤーには、ほど遠い状態なのである。

とはいえ風量も熱量もあるドライヤーに場合は、
髪の乾きは早いが高温になりすぎるため、髪のダメージが大きくなる。
そこで製品には、スタイリング時には、切り替えスイッチで熱量と風量をコントロール可能としている。




ダイソンのSupersonic Ionicも手動による風量と溫度の調整機能を搭載しているが、髪を乾かす仕組みは、高速の風を作り出し、髪にダメージを与えない温度をセンサーで管理して熱くなりすぎないように調整している。

羽のない扇風機と同じ構造を持つSupersonic Ionicは、
持ち手部分のデジタルモーターで給気し、筒状の吹き出し口の細いスリットから高速の温風を吹き出す。
この際、気圧差で筒の中へ空気が吸い込まれるように気流が発生し、強い風量と適度な熱量で髪の表面の水分を蒸発させているのだ。




温風をしっかりと伝える風量を生み出せる、これがこの製品の肝となる部分だ。また、十分な風量もあることから、マイナスイオンを髪の根元までしっかりと届けることが可能なのだという。

そしてユニークなのが、これだけの風量を生み出せることを逆手に取った、ディフューザーアタッチメントである。




マグネット式で簡単に着脱できるアタッチメントには、風を均一に広げ、外気と混ぜることで温度を下げて、ふんわりとしたブローを可能とするものや、風を絞り込んでピンポイントでブローが可能なにするものなど、4種類のアタッチメントが用意されている。







Supersonic Ionicは4万円台と高価な製品である。
髪を乾かすだけのドライヤーなら数千円で購入可能だが、Supersonic Ionicは髪のダメージを抑えることができことができる。
毎日、髪の健康を維持できると考えれば、価格差はハードルとはならず、一日も早く使いはじめた方が良い製品なのではないかとも感じた。

掃除機のダイソンは、扇風機や、ドライヤーなどこれまでにない発想で、新しいデザイン家電を生み出している。実は、気づいている人もいるかもしれないが、公共施設のトイレのハンドドライヤーにもダイソン製品が採用されているケースが増えている。
しっかりとした風量で、手を乾かすことができるハンドドライヤーもまた、風を科学するダイソンらしい製品なのである。


執筆  mi2_303