『ONE PIECE』『アカギ』『ゴルゴ13』… 実は終わりが決まってる“人気長寿漫画”

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漫画大国ニッポン。週単位で新しい作品が生まれ消えていくなか、人気タイトルは連載が長期化していく傾向にある。いまや連載10年、20年になる作品も珍しくない。

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しかし、昨年から今年にかけ、そんな長期連載漫画が次々に完結を迎えていることをご存じだろうか?

今回は、誰もがタイトルを知っているけど「どんな終わり方をしたのか」「そもそも完結しているのか」、意外と知られていない有名漫画のラストにまつわる話をいくつかピックアップしてみた。

■堂々の完結を迎えた“あの漫画”たち

今年上半期の大きなトピックは『あさりちゃん』完結だろう。なんと連載スタートは1978年! 単行本はラストで100巻に到達し、女性漫画家による最多巻数としてギネス申請中だという。

ちなみに最終巻の発売時、ネット掲示板において“あさりちゃんの物語は病弱な少女が元気な自分を想像してノートに描いた漫画だった”という結末が画像つきで暴露され、「これだけ長く続けて妄想オチかよ」などと厳しいコメントが寄せられた。

……しかし実はこれ、悪質なデマである。問題となった画像は100巻のおまけページに描かれた作者のおふざけで、本編とはまったく関係ない。実際のあさりちゃんは最終話まで元気な少女のままなのでご安心いただきたい。

男性向けの長寿漫画では、どういうわけか講談社にビッグタイトルの完結が目立っている。まずは“公道最速”をめざす走り屋たちの物語『頭文字D』。こちらは昨年完結し、単行本は48巻が最終となる。

天然ボケだが異様なドライビングセンスを持ち、時代遅れのハチロク(AE86)を駆って並みいる強豪ドライバーたちを抜き去っていく青年が主人公。連載後期になると1話あたりのページ数が激減していったが、テンション自体は最後までほぼ衰えなかった。

ラストバトルに意外な組み合わせを持ってきたあたり、作者はサービス精神旺盛である。

同じ48巻で完結(予定)なのは、ハーレムラブコメ漫画の傑作『ああっ女神さまっ』。純朴青年・螢一と美人女神たちとの仲むつまじい生活は連載スタートから25年を過ぎても継続中で、ラスト近くになって急展開を迎えても作風そのものに変化はない。

この作品に限ってバッドエンドは到底考えられず、ファンとしても安心して大団円を待っていられそうだ。

また、2004年に連載スタートした『もやしもん』もつい先ごろ完結を迎えた。単行本は全13巻と少なめだが、長い休載を挟みつつ10年間というなかなかの長期連載だ。

せっかくの“菌を肉眼で見ることができる”主人公の能力がほとんど作中で生かされず、また中盤からストーリーの焦点がぼやけてしまった感があったが、最終巻ではそうした不満を吹き飛ばすように怒濤の急展開を見せてくれた。主人公の“菌が見える能力”が進化するエピソードはなかなか衝撃的である。

このラストまで含めたアニメ新シリーズが作られれば、ぜひ視聴してみたい。

■実は終わりが決まっている“あの漫画”たち

まだ連載は続いているが、ラストの形がすでに作者の頭の中で決まっている(と明言されている)長寿漫画もいくつかある。

1つは『こち亀』と並んで長期連載を誇る『ゴルゴ13』。この作品のラストについては以前から“最終話はコマ割りまで決まっていて、厳重に金庫にしまわれている”という都市伝説が存在する。いまだ年配のファンは信じている人も多いらしいが、この説は作者のさいとう・たかを氏によって否定されている。

ただしこの都市伝説は一部だけ真実を含んでいて、インタビューによれば“最終話がコマ割りまで決まっている”のは本当だという。

1960年代から世界中のあらゆる場所で神業的な狙撃を見せてきたゴルゴも、リアルに年をとっていれば今は相当な高齢のはず。その“最後の仕事”がどんな形になるか、早く知りたいようで永遠に読みたくないような、ゴルゴファンはみな複雑な心理を抱えていることだろう。

もう1つ、あらゆる漫画のセールス記録を塗り替え続けている『ONE PIECE』も同じだ。連載は長期化しているものの、すでに作者の中では結末が決まっていて、その内容は歴代編集者にも伝わっているとのこと。

週刊少年ジャンプでの稼ぎ頭というポジションから『ドラゴンボール』のような連載引き伸ばしを勘ぐられがちだが、あくまで必要最小限のボリュームが今の長さということだろうか。

この先、張り巡らされた数々の謎と伏線がどのように決着するのか目が離せないところだ。

ちょっと特殊なところでは、麻雀漫画の『アカギ』も結末がある程度はっきりしている。リアル時間にして15年以上も続いている“吸血麻雀”勝負(作中ではたった一晩の話なのだが)、アカギの生還は確定しているのだ。

というのも『アカギ』自体が『天 天和通りの快男児』のスピンオフ作品で、その『天』には晩年のアカギが登場しているからだ。つまり若いころのアカギはどうやっても死ぬことがない。

そのためファンは勝敗の行方自体より、“どこまで作者が麻雀と関係ないところではっちゃけてくれるか”を期待している様子が伺える。作者の福本伸行氏もそんな期待を察してか、最近ではむしろ登場キャラクターが麻雀牌を握ることのほうが珍しくなっている。

このあたりは“テニスをやらなくなったテニス漫画”として有名な『テニスの王子様』と共通する部分があるだろう。

■なかなか終わらない“あの漫画”たち

完結した作品、もうじき完結する作品、いずれ完結が決まっている作品……長期連載漫画でもさまざまなタイプがあるが、困ったことに一番多いのが“いつ終わるのかさっぱり予想できない”漫画だろう。

もちろん悪いことばかりでもなく、たとえば記者個人としては『こち亀』『パタリロ!』などが永遠に続いてくれればと思っている。いつ見てもその雑誌にあの作品が掲載されている……そういう安心感は何ものにも代えがたい。

しかし、そう思わない人間もいるようで、休載続きの漫画にあてつけるようにデマを流したりするケースもある。

たとえば被害にあった有名作としては『HUNTER×HUNTER』。ある時期に「読者の皆さまへ」と題した雑誌のスキャン画像がネットへ出回り、そこには少年ジャンプ編集部からの連載終了を知らせる文面が記されていた。もちろんこれは精巧に作られた釣り画像(偽物)であり、連載はまだ終わっていない。

よくよく見れば作者の名前が呼び捨てになっているなど不審なのだが、あまりの出来の良さ&リアルな休載期間の長さから釣られてしまったネットユーザーも多いようだ。

同じように編集部を装って連載終了を告げるデマは昨年も流れ、この時は人気ファンタジー漫画『ベルセルク』が被害を受けている。内容は作者(三浦建太郎氏)の体調不良によって連載中断、単行本は37巻が最終になるというものだった。

この怪情報は画像がなく、白泉社オフィシャルページへのリンクもない杜撰きわまる低クオリティだったが、ネット掲示板→まとめサイト→ツイッターという毎度の“デマ拡散ルート”によって急拡大。まんまと釣り上げられてしまった人々がここでも続出した。

『あさりちゃん』最終巻の件も同様だが、こうした人気漫画の終わり方に関わる悪質なデマ拡散は決して許されるものではない。

だが一方、すっかり話題にのぼらなくなった“忘れ去られつつある長期連載漫画”が少なくないのも事実で、新たなデマが生み出されるのはそれだけ続きを心待ちにしているファンが多い証拠なのかもしれない。

いずれにしても作品のファンができる最大の応援は、デマ拡散に手を貸すのではなく“作者を応援し続ける”ことだろう。

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