持ち帰り弁当大手「ほっかほっか亭」が、ついに分裂して営業を始める。「ほっかほっか亭」をフランチャイズ(FC)営業する「プレナス」(福岡市)が別ブランドを立ち上げて営業を開始するのだ。プレナスの加盟店の大部分が新ブランドに移行する一方、これまでは事業展開していなかった地域にも出店攻勢をかけたい考えだ。

関係会社同士が法廷闘争を繰り広げる

   「ほっかほっか亭」は1976年に埼玉県で開業した弁当店を母体としており、プレナスが九州・山口と東日本地区で約2200店舗、「ハークスレイ」(大阪市)が関西地区などで約1000店舗をFC展開している。プレナスと、FC店を統括する「ほっかほっか亭総本部」(東京)との亀裂が広がり、今回の「絶縁」にまで発展した。

   両社の対立が表面化したのは2006年末。プレナスが「ほっかほっか亭」の商標権は自社にあると主張し、総本部に対して商標使用料の一部として約9500万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした(08年4月、商標の無償使用を総本部に認める判決が出ている)。一方、プレナスは07年2月から、ビルの空きスペースで弁当を売るワゴン販売サービスを始めた。販売する弁当は、近くの店で運んできたものなのだが、これに総本部が「作りたてを店舗で売るのがFC制度の根幹」とかみつき07年10月、ワゴン販売の中止を求めて東京地裁に提訴した。プレナスは総本部の株を44%持っており、関係会社どうしが法廷闘争を繰り広げるという異例の事態となった。

   運営方針をめぐる対立は解消せず、08年2月には、プレナスが総本部に対してFC契約の解除を通告。08年5月15日から、プレナスの店舗は新ブランド「ほっともっと」を掲げて営業することになった。ここでプレナス・総本部の間で、FC店をめぐる「争奪戦」が発生。FC店からすれば、食材調達をプレナスに頼っている一方、プレナス側についた場合、九州での知名度が非常に高い「ほっかほっか亭」の看板が使えなくなるというリスクを取らざるを得なくなる。一方、総本部側を支持してプレナスとの契約を打ち切った場合、「ほっかほっか亭」の看板は使えるものの、新たな食品仕入れ先と契約し直す必要がでてくる。

運営店舗の9割2028店が「ほっともっと」に移行

   実際、「看板」が原因で、倒産に追い込まれた弁当店チェーンの例もある。「ほっかほっか亭」店舗を長崎・宮崎県で展開していた「東朋商事」(長崎県佐世保市)は、販売方式をめぐってプレナスと対立し、88年に別ブランド「We'SN」(ウィズン)として独立。東朋商事側は地元の食材産品を材料に使っていたが、仕入れや流通コスト削減を狙った一括購入を求めるプレナス側と対立したのだ。東朋商事側は「地元にあった味」をアピールしながら店舗展開を進めたが、一方のプレナスも「ほっかほっか亭」店舗を「東朋商事」の営業区域で急展開。両店舗が競合した結果、We'SNの集客力低下が続き、08年1月には「東朋商事」は自己破産を申請することを決めた。「看板の力」の差で敗北した形だ。

   もっとも、今回の「絶縁騒動」で、「ブランド力」がどの程度影響するのかは不明だ。元々、総本部とプレナスとの結びつきは薄いとされ、メニューの開発やCM制作などプレナスが担当してきた。そのことから、比較的早く新ブランドが定着するのではないかとの見方もある。

   それを表すかのように、08年3月13日にプレナスが発表したところによると、運営店舗の9割にあたる2028店が「ほっともっと」に移行する。このうち直営店を除いたFC店舗は915店。一方、総本部側を支持して「ほっかほっか亭」ブランドを選んだのは266店舗で、FC店では8割がプレナスを支持した形だ。

   同日の発表によると、関西地区にも「ほっともっと」を出店し、攻勢をかけたい考えだ。一方の総本部側も九州に営業拠点を設け、切り崩しを図る。弁当ブランドをめぐる「ホット」な戦いは続きそうだ。

J-CASTニュースとは?

従来のマスコミとは違うユニークな視点で、ビジネスやメディアに関するさまざまな記事を発信しています。読者投稿のコメント欄も充実!
国内最大級の新商品サイト「モノウォッチ」も開設!