常に冷静沈着な絶対王者の胸の内が、かつてないほど生々しく可視化される劇的な一戦となった。6月20日に放送された将棋の早指し団体戦「JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026」予選Bリーグ第2試合、東武鉄道 北関東ブリッツァーズ 対 KOYOHD ノース・トラッズ神戸。大きな注目を集めた第5局は、かつてタイトル戦で激闘を演じた元チームメイト同士の対決に。そこでファンが目撃したのは、今大会の目玉となっている「心拍」の数値がまさかの爆上がりを見せる、藤井聡太竜王・名人(王位、棋聖、棋王、王将、23)の人間らしい姿だった。

【映像】藤井六冠の心拍が“165bpm”を記録した瞬間(実際の映像)

 今大会から導入され、大きな話題を呼んでいる対局者の心拍数表示。これまでの予選対局では、TDIルシーグ横浜の斎藤明日斗六段(27)が170bpmをマークし、「心拍王」として盛り上がりを見せていた。現役医学生の獺ヶ口笑保人四段(26)によると、対局中に心拍数が上がるメカニズムは「詰まされるかもしれないという『危機』、勝てそうだと感じる『報酬』、時間切迫による『判断』がトリガーになります」とのこと。極限のプレッシャーの中で、棋士の精神状態がダイレクトに数字として表れるのだ。

 北関東が1勝、神戸が3勝とリードして迎えた第5局は、北関東の藤井竜王・名人と、神戸の豊島将之九段(36)が激突した。前回までの「地域対抗戦」ではチーム中部の仲間として連覇を経験した両者が、今回はドラフト指名を受けて敵同士となる好カードだ。新ルール「先手番入札制度」では、藤井竜王・名人が「豊島九段は作戦を練ってくるので、後手が本線。際どいところで22秒」と入札。対する豊島九段は「先手が欲しい」と46秒を投じて先手番を獲得した。藤井竜王・名人は相手が後手を選ぶと思っていたようで、「正直予想は外れたが、それも含めて面白いところ」と盤外の駆け引きを楽しんでいた。

 戦型は角換わり相早繰り銀へと進み、両者の深い研究を裏付けるように終盤の入り口までノンストップで手が進む。この猛スピードの展開には、北関東の控え室からも「これ、定跡なんですか!?」と驚きの声が上がるほどだった。

 事前インタビューで藤井竜王・名人は自身の心拍数について「測ったことがないので、予想がつかないです。なるべく、そんなにすごい高い値が出ないでほしいなというふうには祈っています」と少し恥ずかしそうな表情を見せていたが、いざ対局が始まると先手の豊島九段が123bpmに対し、藤井竜王・名人は107bpmでスタート。しかし、そこから藤井竜王・名人の心拍数はぐんぐん上昇し、あっという間に140bpmを超えていった。

 この思いがけない数値に、解説陣も「藤井竜王・名人の心拍数を初めて見たので、結構上がっているんだな」「冷静沈着かと思っていたので、面白いですね」と興味津々。その後、一度は100bpm台に急降下したものの、勝負所で△7八角成と切り込んだところから再び心拍数が上昇していった。

 豊島九段の鋭い猛攻が続く中で、ついに藤井竜王・名人の心拍数は165bpmをオーバー。視聴者からも「心拍数やば!」「ふぁああああ」「聡太の心臓がーーーー」「やっぱエンジンが違うから心拍数も」「心拍数も王者」「将棋とは命を削るゲームなのか」「エアコン21度も納得」「見てるこちらの心拍数が限界突破」「運動しなくても運動してる」「天才の貴重な心臓データ」と驚きと興奮のコメントが殺到した。

 まだまだ厳しい攻めが続くかと思われた盤上だったが、藤井竜王・名人の心拍数がふっと下がり始めた絶妙なタイミングで、豊島九段が投了を告げた。勝率50%と50%の息詰まるラリーが続いた白熱の戦いは、102手で藤井竜王・名人が勝利。互いの研究の深さが存分に発揮され、豊島九段の攻めも鋭かったが、最後は絶対的エースの受けの強さが際立つ一局となった。対局者の思考の波が数字として表れる新たなドラマは、将棋観戦にこれまでにない熱狂をもたらしている。

◆JEMTCスペシャルABEMA地域トーナメント2026 超早指しの『ABEMAトーナメント』と『地域対抗戦』が融合した新シリーズ。全国を6つの地域ブロックに分け、全8チームによって競う団体戦。各チームは監督1名とドラフト会議で指名された棋士4名の計5名で構成される。予選は4チームずつ2リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出。試合は5本先取の9本勝負で、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。今大会より「先手番入札制度」を採用。対局開始前に持ち時間を「競り」にかけ、提示した時間がそのまま対局時の持ち時間からマイナスされる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)