逮捕された竹前海斗容疑者(左)と栃木の犯行現場(共同通信社)

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 連日報道されるトクリュウによる凄惨な事件。ついには犯行グループのメンバーとして高校生が逮捕されるまでに至った。身近に迫る脅威にどのように対抗すべきか、最前線でトクリュウを追った伝説の刑事が解説する──。

【写真】電車内でクネクネダンスを撮影する、へそピアス姿の美結容疑者。他、幼少期や成人式の時の竹前海斗容疑者なども

「殺害された被害女性の体には胸などに20か所以上の刺し傷や激しい暴行の痕があり、犯人の残虐性を物語っています。一方で、侵入経路や犯行の手口には稚拙さが目立ち、突発的な凶行だった可能性も否めない。動機や背景には不明な点が多く、警察は所轄や県の枠組みを超えた大規模な合同捜査を展開しています」(全国紙社会部記者)

 住宅が点在するのどかな田園地帯で、痛ましい事件が起きた。5月14日午前9時頃、栃木県上三川町で農業法人を営む男性宅に目出し帽をかぶった複数の男が押し入り、バールや刃物で男性の妻・富山英子さん(69才)と40代の長男、30代の次男を次々に襲った。

「自宅の1階で倒れていた英子さんは胸だけでなく、背中からも大量に出血し、搬送先の病院で死亡が確認されました。別の家から駆け付けた息子さんたちも頭などを殴られて大けがを負い、部屋の中には物色された跡があったといいます」(捜査関係者)

 平日の朝に堂々と行われた凶行に世間は震撼したが、衝撃はそれだけにとどまらなかった。逮捕された4人の実行犯は全員16才の少年で、いずれも現役高校生だったのだ。

「神奈川県相模原市と川崎市に住む高校生で、そのうち2人は同じ学校に通う同級生でした。さらに4人の供述などから、犯行には"指示役"がかかわっていたことが判明し、20代の夫婦が逮捕されています。夫の竹前海斗容疑者(28才)は国外に逃亡するため羽田空港にいたところで身柄を押さえられ、妻の美結容疑者(25才)は生後7か月の乳飲み子と共にホテルに潜伏していました」(前出・全国紙社会部記者)

 犯行メンバーは、いずれも社会経験の浅い"普通"の若者ばかりだった。一連の報道から浮かび上がってくるのは、場当たり的で短絡的な犯行だが、背後には別の"首謀者"がいるとの指摘もある。組織犯罪に詳しい警視庁の元刑事・平野晃也氏が解説する。

「事前に下見が行われていたという報道や指示役の存在を踏まえると、今回の事件はトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)による犯行である可能性が極めて高い。過去のケースと同様に、上部組織はおそらく海外を拠点とする犯罪グループでしょう。国外逃亡を企てていたとされる指示役も組織とつながりがあり、過去に海外で活動していた経験がある人物とみられます」

 実行役に、なぜ高校生が選ばれたのか。平野氏が続ける。

「警察の広報活動やマスコミの報道でトクリュウの実態が明るみとなり、実行役の成り手が減っていることに犯罪組織は頭を抱えています。逮捕された少年のひとりはSNSを通じて勧誘され、ほかの少年を引き入れたと報じられていますが、組織にとって彼らは"捨て駒"に過ぎません。

 指示役やリクルーター(紹介者)から『未成年なら捕まっても重い罪にはならない』などとそそのかされた可能性もありますが、強盗殺人は刑法が定めるもっとも重い罪のひとつ。少年法で死刑にならなくとも無期懲役は免れず、分別のない未成年者のコミュニティーが犯罪組織の末端に利用されている点も非常に悪質なケースといえます」

 警察庁によると、2025年にトクリュウ型犯罪で摘発された人数は1万2178人。そのうち、約1割が20才未満で、SNSなどを通じて闇バイトに応募したことがきっかけで、自覚のないままに犯罪行為に加担させられたり、脅されて犯行を強要されるケースも少なくないという。

 現役時代に暴対課の刑事としてトクリュウ型犯罪を摘発し、数々の伝説を築いた平野氏は、今回の犯行には過去の事件との類似点がいくつもあると語る。

「現場周辺では犯行の1か月前から不審な人物や車両が目撃され、事件前に被害者の親族の家に入った空き巣が富山さん宅の金品のありかを示すメモを持ち出していたことなども報じられています。

 2024年の闇バイトによる首都圏連続強盗事件でも、犯行前にリフォーム業者や訪問販売員を装った不審者が被害宅周辺で目撃されていましたが、実行役と指示役、下見役が役割を分担していることもトクリュウ型犯罪の特徴です。

 都内ではすぐに通報されたり、職務質問されたりして身動きが取れないため、千葉県や埼玉県、栃木県など関東近郊の主に県境付近で犯行が行われるケースが目立ちます。手っ取り早く大金を稼げるトクリュウは、海外の犯罪組織も模倣する利得の大きい犯罪モデルで、今後も同様の事案が増えていくことが確実視されています」(平野氏)

地域で連携し、迷ったら110番

 では、トクリュウから身を守るにはどうすべきか。平野氏に「命を守るための5か条」を挙げてもらった。

【1】金品や高額商品の所在を他人と共有しない

「犯行グループは、短時間で犯行を行えること、リスクに見合う高額な成果があること、そして逃走しやすい経路が確保できることなどを念頭に入れて計画を立てます。資産価値の高い高級時計や貴金属は特に狙われやすいため、保管場所は決して他人に教えず、SNSに投稿することも避けてください。また、高額商品を購入する際も細心の注意が必要です。履歴や個人情報が外部に漏れる可能性を念頭に入れておいた方がよいでしょう」

【2】自宅の防犯対策は外から見てわかるようにする

「自宅に防犯カメラを設置したり、センサーライトや警報音の鳴る侵入感知アラームを導入することも効果的です。外から見て充分な対策を取っていることがわかるようにしておくことも抑止力になります。ただし、過剰な対策は自宅に資産があることを教えているようなもの。防犯カメラなどは適切な台数を設置するようにしてください」

【3】普段見かけない車や不審者に注意

「場当たり的な犯行はリスクが高く、犯人グループは必ずと言っていいほど下見を行います。他県ナンバーやレンタカーなどで、ひとりで長時間路上駐車しているなど不審な車を見かけたら迷わず110番通報してください。下見役が工事業者になりすまして資産状況を確認するケースもあるため、見知らぬ人がアポなしで自宅を訪ねてきたり、アンケートの回答などを求めてきたら警戒を強めてください」

【4】地域で連絡体制を構築

「地域によっては警察官が来るまでに時間がかかる場所もあります。日頃から地域の区長などを中心とした連絡体制を築くなどして、空き巣や強盗に狙われないコミュニティーを形成しておきましょう。不審者情報を共有し、防災無線で警戒を呼びかけたり、複数人で声をかけるようにすれば、犯罪者も慎重にならざるを得ません」

【5】闇バイトから子供を守る

「個人的には、犯罪に加担しないためのリテラシーを子供のうちから身につけさせることが究極の防止策になると考えています。過去にはSNSを通じて"1万円あげる"などと言われた未成年者が、スマホ代やカラオケ代ほしさに下見役に利用されてしまったケースもありました。こういう時代だからこそ、事件に巻き込まれたり、逮捕されたらどうなるのかということを、周囲の子供に教えることが犯罪抑止の最良の方法だと思います」

 犯行グループは私たちの財産や個人情報を虎視眈々と狙っている。日頃から警察や地域と連携し、正しい対策を身につけておきたい。

※女性セブン2026年6月4日号