苦しみながらV奪還を目指す阿部慎之助・監督

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 契約最終年を迎えた阿部慎之助監督のもと、背水の陣でペナント奪還に挑む巨人だが、その戦いぶりは決して"球界の盟主"に相応しいものとは言えないだろう。苦しみながらV奪還を目指す阿部巨人には何が足りないのか。憂いを抱く巨人の大物OBたちからは、厳しい指摘が相次いだ――。【前後編の前編】

【写真】阿部慎之助・監督が重用するベテラン 坂本勇人や田中将大など。ほか、若手の竹丸和幸や浦田俊輔なども

「育てると言ってたら多分最下位となる」

 大敗を喫しては僅差の試合をなんとか拾うなど、安定しない戦いが続く巨人。シーズン序盤とはいえ、勝敗以上に気がかりなのが指揮官の言葉だ。

 5月8日、中日を相手に大敗して勝率5割となり、報道陣に守備の乱れを指摘されると、阿部監督は「取れるアウト取れないとね、ああいう流れになっちゃう」とポツリ。打撃陣の拙攻については「選手、ミーティングをしたみたいなので、明日奮起を期待します」とコメントした。とりわけ敗れた試合では、他人事で覇気のない言葉が目立つ。

 今季、3年契約の3年目を迎えた阿部監督。昨季は阪神の独走を許して首位と15ゲーム差の3位に沈んだ。今季のV奪還が契約延長の条件とされるが、"背水の陣"とは思えない軽い言動が目立つ。

 名遊撃手としてV9巨人の礎を築いた球界の御意見番、広岡達朗氏は手厳しい。

「阿部は"オレがこういうチームを作る""こういう野球をするんだ"と考えるうえでの勉強をしていない。本来、そんな人間が巨人の監督をやったらダメなんです。

 目の前のシーズンを勝つことも大事ですが、監督としてより重要なのはどれだけ人を育てるか。人を育て、残すことがチームの伝統につながります。特に問題なのは、巨人の監督として生え抜きを育てようとしていないことです」

 そうした巨人OBの考えに依って立てば、開幕前から阿部監督の発言はおかしかった。2025年12月に出演したラジオ番組での発言である。

「育てるといってもジャイアンツの場合は勝たないといけない。育てると言ってたら多分最下位となる」

「やっぱり負けるよりは勝ったほうが嬉しいですから。(一軍は)そういう(育てるための)場所ではないのを理解してもらって、勝つためにこちら側は考えている」

 指揮官の"育成放棄"と受け止められ、関係者からも戸惑いと批判の声があがった。

 実際の選手起用も"実績重視"だ。

「主砲・岡本和真が抜けた内野は新外国人のダルベックを補強し、坂本勇人との併用で、門脇誠やドラフト5位の小濱佑斗ら若手の三塁挑戦の機会がほぼ失われた。外野も22年のパ首位打者・松本剛を日本ハムから獲得して若手の競争枠が減った。泉口友汰の代役で初先発初打点の活躍を見せた2年目の石塚裕惺は4日後には二軍落ち、開幕から二塁を任された2年目の浦田俊輔も吉川尚輝の復帰でセカンドから外れました」(スポーツ紙デスク)

 FA組やベテラン、外国人選手らは成績が悪くても重用する一方、若手は結果を出さないとすぐ代えられる現状がある。

「補強頼り」で若手のやる気がなくなってしまう

 今季の巨人は開幕10試合目以降のオーダーを固定できず、スタメンが入れ替わる猫の目打線が続く。打線が機能せず、チーム打率、得点ともリーグ下位に低迷する状況にも広岡氏は苦言を呈する。

「阿部は打順の役割を日頃から考えていないから、結果論でコロコロと変えてしまう。守備も同じで、固定するから応用動作ができるようになります。それなのに選手を便利屋のように使っていたら育つ者が育たず、アクシデントにも対応できません。不調があったとしても、信頼して使い続けることで選手は責任感とプライドを持ち、力を発揮できる。特にチームの柱となるクリーンナップと先発ローテーションは何があっても使い続けることが大切です」

 阿部監督は就任後、前述の松本以外にも甲斐拓也、田中将大、則本昂大らのビッグネームを獲得。こうした「補強頼り」にも広岡氏は釘を刺す。

「どんなに優秀な選手も年齢を重ねれば力が衰える。30代半ばの田中と則本を獲ったのは失策でしょう。闇雲に補強したら生え抜きの若手がチャンスを失い、やる気もなくなってしまう。昨オフに獲得した松本だって4年も前の首位打者なんて必要かね」

 今季の巨人は本塁打による得点が多く、打線がつながらない。V9後期を先発として支え、引退後は巨人の投手コーチも務めた関本四十四氏は、「とにかく打てないですね。打線が結果を出せていない以上、打撃コーチの布陣も考えなくてはならない」と語る。

 今季の一軍打撃コーチは「アジアの大砲」としてロッテや巨人などで活躍した李承ヨプ(火へんに華)と、楽天や巨人で主砲を務めたウィーラーの2人体制だ。

「外国人2人が一軍打撃コーチを務めるのは12球団で初めて。日本で実績のある2人ですが、選手に細かいニュアンスが伝わっていないのではないか。若い選手が偉大な外国人コーチに遠慮して距離が生じている心配もあります。これではかつて長嶋茂雄監督が若手時代の松井秀喜をつきっきりで指導したような師弟関係を築くのは難しい。阿部監督が一軍と二軍のコーチ入れ替えなどを決断できるかどうかですね」(関本氏)

 先発陣は開幕投手候補だった山崎伊織が右肩の異常で離脱。4月末に一軍復帰したかつてのエース・戸郷翔征も調子が上がらない。田中、則本のベテラン組にドラ1の竹丸和幸、今季加入したウィットリーらで何とかローテーションを回している。

 V9時代の後期に代打の切り札として貢献した広野功氏は、低迷の一因は先発陣の脆さだと見る。

「コンディションの作り方に問題があり、投げるたびにピッチングの精度が悪化しています。本来、登板後は休むのではなく体を強化する必要がありますが、巨人の先発陣は調整するばかりで強化が足りない。今の巨人には疲れると楽をしたがる選手を厳しい目で見守り、尻を叩いて強化させるコーチが不足しています」

(後編につづく)

※週刊ポスト2026年5月29日号