自民のAI提言 開発優先にブレーキが必要だ
生成AI(人工知能)の開発競争で後れを取りたくない。
政府のそうした焦りが、AIのリスクを軽視することに繋(つな)がっているのは否めない。
AIの負の側面を直視し、規制を強化すべきだ。
自民党がAIの政策に関する提言案をまとめた。昨年、全面施行されたAIの推進法について、AI事業者が政府の指導などに従わない場合、罰則を含めて実効性のある対策を講じるよう、政府に法改正を求めた。
AI推進法は、AI開発を国が後押しする方針などを定めている。AIの生成物によって著作権侵害などが起きた場合、国が調査し、事業者に指導や助言を行うこともできるとしているが、事業者が応じなくても罰則はない。
政府と自民党はこれまで、AIを成長の柱に位置づけ、推進の立場を取ってきた。にもかかわらず今回、自民党が事業者に厳しい措置を講じるよう求めたのは、党が行った意見聴取に一部事業者が非協力的だったためだという。
AIの事業者が国の指導などに従わない場合、罰則を科すのは当然のことだ。欧州連合(EU)は2024年に定めたAI規制法で、EUの情報提供の要求などに応じない事業者に対しては厳罰を科すことにしている。
SNS上では、第三者がAI事業者の動画作成サービスを使い、漫画の主人公らに酷似したキャラクターを作り出し、偽動画を投稿する事例が後を絶たない。
現状では、こうした事案でAI事業者の責任を問うのは容易でない。政府が18年に著作権法を改正し、著作権者の許可なしに著作物をAIに学習させることを認めてしまったためだ。
政府はAI推進法の不備を改めるだけでなく、著作権法の再改正も検討する必要がある。
AIの開発や利用に関する懸念はこうした問題にとどまらない。政府は、個人情報の取得の制限を大幅に緩和することになる個人情報保護法改正案を国会に提出し、現在、衆院で審議中だ。
改正案は、個人が病歴や思想信条といった情報をSNS上などに公開していれば、本人の同意なしにAI事業者などが自由に収集できるようにする内容だ。
AIが病歴などの情報を拡散する恐れはないのか。思想信条によって個人名がリスト化され、差別を受けることにならないか。開発優先の政府の方針には懸念を抱かざるを得ない。国会で慎重に審議すべきである。
