記事のポイント
ヒョンデなどFIFAパートナーは体験施策とDOOHを軸に、ワールドカップに向けたマーケティングを加速している。
米OOH広告支出は112億8000万ドル規模に拡大し、2026年は6.2%成長と大会が投資を押し上げている。
都市部では在庫不足が進む一方、出稿判断は最終局面にあり、差別化には高インパクトなクリエイティブが求められている。


クラブサッカーのシーズンはまだ終わっていないが、広告主はすでにチャンピオンズリーグの先、つまりFIFAワールドカップに目を向けている。

ヒョンデなどFIFAパートナーが体験施策とDOOHに注力



たとえば自動車メーカーのヒョンデ(Hyundai)は、CMOのショーン・ギルピン氏によれば、体験型のアクティベーションや全米各地の草の根サッカーキャンプへの協賛を通じて、このサッカー大会に向けて「準備を加速」させている。

6月に大会が開幕すれば、その瞬間を活かすため、テレビ放送、ストリーミング配信、SNSやインフルエンサーマーケティングといったお決まりの手段に頼ることになるという。

ギルピン氏によれば、計画にはスタジアム内、大会の開催16都市の空港、そしてホスピタリティゾーンやファン体験会場への動線上に展開するデジタル屋外広告の枠も用意されている。

「屋外広告(OOH)は、媒体に表示できるクリエイティブの質という意味でも、データやテクノロジーの面でも、ちょっとしたルネサンスを迎えている」と同氏は説明した。

「いくつかの都市では、その点をかなり積極的に活用している」。

ヒョンデや、コカ・コーラ(Coca-Cola)、ユニリーバ(Unilever)といったFIFAパートナー各社の屋外看板やデジタル屋外広告(DOOH/Digital Out of Home)には、大会のリニアおよびストリーミング中継から価格面で締め出されたブランドも合流することになる。

市場調査企業のイーマーケター(eMarketer)のアナリスト、ロス・ベネス氏は、このチャネルはFIFAの公式スポンサーほどの予算を持たない広告主にとって「総じて手頃な」選択肢だと語った。

DOOH業界団体DPAAのプレジデント兼CEOを務めるバリー・フレイ氏はこう述べた。

「スポーツとデジタル屋外広告は表裏一体だ。ワールドカップ会場内、その近隣、そして行き帰りの動線上にあるデジタル広告枠の需要が高いのは、驚くことではない」。

米OOH広告支出は112億8000万ドル、6.2%増へ



イーマーケターの予測では、米国のOOH全体に対するブランドの広告支出は112億8000万ドル(約1兆6920億円)にのぼり、そのうち42.3%がデジタル広告枠に投じられる見込みだ。

ワールドカップは投資の起爆剤となっており、2026年の推計は2025年比で6.2%増。2027年には成長率が4.4%まで鈍化すると見込まれている。

「今四半期の主な収益ドライバーになるだろう」と、米国屋外広告協会(OAAA/Out of Home Advertising Association of America)のCEO兼プレジデントを務めるアンナ・バガー氏は語る。

同様に、アドテク企業のアゼリオン(Azerion)が英国のマーケターおよびエージェンシー幹部128人を対象に実施した調査によれば、英国のプランナーやバイヤーの68%が直近1年でOOH支出を増やしており、61%が2026年さらに支出を増やすと回答している。

OOH特需で在庫が不足し、都市部では完売間近



たとえば、OOHメディア企業のパール・メディア(Pearl Media)最高収益責任者のアンソニー・ペトリロ氏によれば、同社は大会期間を通じて「複数の」FIFAパートナーと通常の広告主の双方と取り組む予定だという。

「歩行者の往来も活動量も観光客もはるかに多くなる。レストランは満席、ナイトライフのスポットも満杯になる」とペトリロ氏は述べた。「そして(OOHは)文化的にも地理的にも非常に的確にリーチできる」。

ペトリロ氏によれば、OOHはワールドカップ期間中、広告主に開催都市の「壁紙」の一部となるチャンスを提供するという。このチャネルの大手事業者の一部は、こうした機会を積極的に活用しようとしている。

たとえばパブリッシャーのフットボールコー(Footballco)は、屋外広告大手のクリア・チャンネル(Clear Channel)と組み、米国全土のDOOH枠でワールドカップ関連の見出しやライブのスコア速報を配信する。ただし、クリア・チャンネルの広報担当者は、需要については言及を避けた。

最終局面の出稿判断。カギはクリエイティブに



グループステージ開幕まで2カ月となるなか、バイヤーやブランドは、なお出稿のコミットを最終調整している段階にある。ペトリロ氏は、ワールドカップの観客層に関連するロケーションにおける同社のインベントリー(在庫)のうち、まだ25%が残っていると見積もる。

DOOHおよびモバイルディスプレイのネットワーク企業ビッグ・ハッピー(Big Happy)のCROを務めるガビー・ストーラー氏も、一部のクライアントが投資計画を固めている最中だという見方に同意する。

同社はワールドカップ期間中、3DのOOHクリエイティブを使うものを含め、20の異なるキャンペーンを展開する予定だという。クライアントは、大会という「情報過多」の期間中に埋もれずに目立つために、「目を引くクリエイティブが必要だ」と同氏は語った。

選択肢をまだ検討中のマーケターは、早めに腹を決めたほうがよいかもしれない。

OOHメディア企業のケヴァニ(Kevani)の創業者兼CEOであるケヴィン・バルタニアン氏は、大会の開催都市のひとつであるロサンゼルスでファンゾーン周辺やスタジアムへのアプローチ沿いに保有するインベントリーの95%は、すでに予約済みだと語った。

同社のインベントリーには、イングルウッドにあるソファイ・スタジアム(SoFi Stadium)周辺のスポット、LAギャラクシー(L.A. Galaxy)のカーソンにあるトレーニング施設(FIFA会場として使用される予定)、さらにLAのファンゾーンや人気ホテルに近いロケーションが含まれていた。

「我々にとって大きな瞬間だ」とバルタニアン氏は語った。

OOH大手のアウトフロント(Outfront)の最高マーケティング体験責任者、ステイシー・ミネロ氏によると、同社はすでに大会期間を通じて70を超えるキャンペーンを展開する予定だという。ただし、「非常に好調な売れ行きだ」と同氏は述べた。ミネロ氏はNDA(秘密保持契約)を理由に、キャンペーンを出稿するクライアントの名前を明かすことは避けた。

ペトリロ氏は、もし大会開幕までにパール・メディアのポートフォリオが完売しなかったとしたら「驚きだ」と述べた。

「例年であれば、この数カ月間の売れ行きはこれほど好調ではないだろう」と同氏は語る。

大会後の継続出稿が課題、五輪に向けた前哨戦に



もちろん、試合終了の笛が吹かれたあと、つまり大会終了後もブランドにデジタル看板やスクリーンへの出稿を続けてもらえるよう、OOH事業者が説得できるかどうかは、また別の問題だ。

クライアントをワールドカップの瞬間に組み込もうと意欲的なバイヤー(そしてストリーミングの高いCPMにはあまり乗り気ではないバイヤー)という、受け入れ態勢の整った相手を前に、OOH事業者は、自社の広告枠こそがSNSよりもインパクトを生み出せるという主張を強く打ち出そうと躍起になっている。

4月中旬、英国のバウアー・メディア・アウトドアUK(Bauer Media Outdoor UK)、グローバル(Global)、ジェーシードゥコー(JCDecaux)、オーシャン・アウトドア(Ocean Outdoor)、ポスタースコープ(Posterscope)の各社は、SNSの利用者は移動中には自宅にいるときよりもアプリやプラットフォームへの注目度が下がるという調査結果を発表した。

つまり、利用者の注目を獲得したい広告主はSNSではなくDOOHを使うべきだ、という含意である。

バガー氏にとって、ワールドカップは米国の広告主に対し、OOHがメディアプランに組み込まれるに足るチャネルであることを証明する機会である。

さらにその先には、もっと大きなスポーツの瞬間となりうるイベント、すなわちLAでの開催が予定されている2028年の夏季五輪が控えている。

「我々にとって大きな機会だ。そして五輪に向けた大きな前哨戦でもある」と同氏は語った。

[原文:The World Cup is set to lift demand for digital out-of-home spending]

Sam Bradley(翻訳、編集:藏西隆介)
Image via HyundaiWorldwide /YouTube