高橋彩華が大会レコードタイで念願の年間複数回Vを達成 好調を支えるのは「以前はイップス末期だった」パッティング
「18ホールの長いプレーオフをやった気分です。ヤマハの5倍くらい疲れました。ずっと気の抜けない戦いだったけど、途中から楽しくなった。まだ半分半分だけど、常に優勝争いをできる選手になれば、そういうプレッシャーは付き物なんだから、心から楽しめるようになりたい」前半は互いに3バーディを取り、ボギーなしの「33」。ともに最初のバーディが来た4番パー5は、先に鈴木が5メートル強を流し込み、高橋が2メートルを沈めた。ティショットを左下のラフに落とした6番パー4は、鈴木が2打目をピン手前1メートルに乗せた。高橋は2打目をフェアウェイに戻し、3打目はピン奥3メートル。元女王の勝負を懸けた序盤の一手にも動揺することなく、長いパーパットをきれいに沈めた瞬間、流れは高橋に傾いてきた。「私のバーディパットより先にすごいパーパットを入れてくる。8番は『まじかっ! 入れちゃうんだ』ってなりました。やっぱり(鈴木は)勝負を分かっている。だから、入れ返そうって。自分のゴルフをしようと」8番パー3は鈴木が10メートル近いパーパットを決めたあとに、4メートルのバーディパットをねじ込んだ。優勝をグイと手繰り寄せたのは8メートルを沈めた13番パー3のバーディ。「あそこで3打差がついて、残りホールをうまくプレーできたら(優勝の)可能性はあるかなと」。2打リードで迎えた最終18番パー5は鈴木がバーディパットを打つ前に、バーディ逃しの20センチほどのパーパットを先に沈めた。派手なガッツポーズは一切なし。ギャラリーも拍子抜けしたVの瞬間。「少しテンパっていました。これを入れたら、どうなるんだ。あれっ? 計算できない。よく分からないって。入れてから、マークすればよかったな…と」。照れ笑いしたが、激闘を制した18ホール。頭をフル回転させていた証しともいえる“お先”だった。最終日最終組で鈴木と回るのは2019年「ニチレイレディス」以来2度目だった。その試合はプレーオフで敗れた。この大会での最終日最終組は21年以来で2度目。5年前は単独首位で出ながら「79」と大崩れし、15位にまで後退した。本人は「すっかり忘れていました。引きずるタイプだけど、ホント、覚えていなくて」と一瞬キョトンとしたが因縁の相手とコースへのリベンジも同時に完了。優勝スコアのトータル14アンダーは、奇しくも21年大会の勝者となった山下美夢有に並ぶ大会レコードだった。「好調なのはチャンスについたときのパットが入るようになったおかげ。パットは去年よりうまくなっていると思う。勝負どころで入っているパターのおかげですね」勝因には「パットです」と即座に答えた。18年1月1日付でプロ転向し、同年7月に2度目の挑戦でプロテストに合格した。「プロになる直前くらいから最大の悩みでした」と当時はパットが最大の課題。迷走を重ね、出口のないトンネルに迷いこんだ。「もうイップスの末期でしたね。インパクトがうまくできなくなって、これ以上はない下まで落ちた。『どうせ入らないから』と考えたら、なんか吹っ切れて、地の底から這い上がってきました」ノーマルの順手だった握りを、試行錯誤の末にプロ2年目から順手のクロウに変えた。それでも、うまく打てない。「スロープレーだという自覚はあったけど、速くはできなかった。ずっと気持ち悪くて…」。ツアー全体で80位前後だった1ラウンドの平均パット数が「30」を初めて切ったのはプロ5年目の22年だった。最大の弱点は、今や最大の武器となった。ツアー通算22勝の実力者との激闘に競り勝ち、つかんだ通算4勝目。「きょうは戦い切って、自分の実力で勝った。そういう意味ではヤマハの優勝よりもうれしい」。ひと回り大きくなった27歳はこの日、ツアーを代表する勝負師になった。(文・臼杵孝志)
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