「カリスマ調教師」に浮かんだ「疑惑」の全貌…直撃取材への反応は

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「公正」を掲げる公営競技には厳守すべきルールが存在する。だがいま、圧倒的な実績を誇る小久保智調教師の「掟破り」疑惑に競馬場が揺れている。

浦和競馬では基本的にレースの10日前までに、馬体検査を終えた競走馬を、野田トレセン内の厩舎に入厩させるルールになっている。しかし、前編記事にあるように、本誌が入手した請求書には、小久保氏の管理する馬が、レース直前に外部の施設に輸送されたことを示す記載があった。

【前編を読む】浦和競馬・小久保智調教師の「不正疑惑」…自分の馬を勝たせた「裏技」とは

浮上した「もうひとつの疑惑」とは

そのうえ、小久保氏をめぐる疑惑は、このことだけにとどまらないという。別の浦和競馬関係者が話す。

「ある調教師から『小久保厩舎がレースに使っている馬の数はあり得ないな』と言われたことがある。小久保先生はある時期、野田トレセン内の厩舎に入厩した馬と、外部の牧場の馬をレース期間に入れ替えることで多数の馬を出走させていたようなんです」

浦和競馬は基本的に、毎月平日の5日間にわたって開催される。複数の関係者の話を総合すると、小久保氏は、初日や2日目に使った野田トレセンの入厩馬を、レース後に外部の牧場に輸送。こうして空いた厩舎に、牧場で待機していた馬を入れ、その馬を4日目や5日目のレースに出すことで不当に出走機会を増やしていた可能性があるという。

一方で小久保氏の場合、外厩という民間の牧場にも厩舎をもつことが認められ、外厩からも競走馬を出走させている。その実態について、小久保厩舎関係者が明かす。

「小久保先生は外厩として6つの馬房を認められていますが、牧場にはそれを上回る競走馬がいる。そうした外厩以外の馬が牧場からレースに出走した場合、『10日前入厩』のルールに反することになる」

浦和競馬を運営する組合の対応は

本誌は、前出のA輸送社とは別の競走馬の輸送会社の輸送記録も入手している。そこに記された競走馬の輸送日と輸送区間を調べると、先ほどの証言どおり、浦和競馬の初日に野田トレセンを出発した馬運車が、同日中に、牧場を経由して野田トレセンに戻っていたケースが複数確認できた。

「しかし、この輸送会社の記録には馬名が記載されておらず、確証を得るには至っていません。ただ、競走馬の体にはチップが埋め込まれていて、浦和競馬を運営する組合は、入厩や退厩の記録を電子データとしてもっている。組合側にこうしたデータの提供を求めているのですが、現在まで応じてもらっていません。外部の牧場を使った出走機会の増加などは、入退厩のデータと照合することで明らかになるはず。小久保先生が不正をしていた場合、組合側の管理責任も問われる可能性があることから、及び腰になっているのではないかと疑ってしまう」(前出の調教師)

不正な調教への関与が疑われるケースについて、競馬関連法令に詳しい道下剣志郎弁護士は次のように指摘する。

「地方競馬実施規則の第67条では、不正な目的をもって馬を出走させようとした者らに対して、競馬への関与禁止などの措置を講じる規定があります。つまりここでは、調教師など、関係者の資格面に対する制裁が予定されている。

ただ、こうした規定は、関係機関による調査や手続きを経た事実認定があってはじめて適用されることになります」

自宅から出てきた小久保氏を直撃すると……

疑惑の当事者である小久保氏はどう答えるのか。3月20日、自宅から出てきた小久保氏に声をかけたが、筆者には目もくれず乗用車に乗り込むと、そのまま走り去った。

その後、代理人を名乗る弁護士からメールがあり「外部の牧場での追い切りは、事前に組合側から許可を得ている」という趣旨の説明があった。

本誌からも、あらためて代理人に組合の許可を得た経緯などを尋ねると「組合が許可を出した理由はわからない」などとし、外部の牧場を使った出走機会の増加については「指摘の事実はいっさいない」と回答した。

組合は本誌の取材に「担当者が許可を出したという話があると聞いているが、その点も含めて調査中で、現段階での回答は控える」と述べた。

調教師として小久保氏が初勝利を挙げたのは'05年8月。その後、20年余りの歳月をかけて積み上げた信頼という「勝鞍」がいま揺らいでいる。

「週刊現代」2026年4月13日号より

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取材・文:宮下直之(みやした・なおゆき)/'79年生まれ。ローカル紙や複数の週刊誌の記者を経て'21年より現職。情報提供はnaoyukimiyashita@pm.meまで

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