川島明

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視聴者から不満の声

 TBSの朝の情報番組「ラヴィット!」に対して、視聴者から不満の声が相次いでいることが話題になっている。発端になったのは、3月30日以降、番組の空気が明らかに変わったと考えられていることだ。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 もともとこの番組は「ニュースなし!ワイドショーなし!」とうたわれている通り、朝の定番だった報道系の路線から意識的に距離を取り、芸人たちの長いオープニングトークや脱線、内輪ノリすれすれのじゃれ合いを前面に出すことで独自のポジションを築いてきた。

 ところが、この春から番組がリニューアルされ、オープニングが短く切り上げられたり、レギュラーメンバーが替わったり、いくつかの変化があった。従来の路線に思い入れがあった熱心な視聴者は「別の番組になってしまった」という失望を感じることになった。土曜放送のダイジェスト版「夜明けのラヴィット!」でも、川島明と田村真子アナによる冒頭の軽いやり取りがなくなっており、変化は本編だけにとどまっていない。

川島明

 このリニューアルに違和感を覚えたのは視聴者だけではない。4月2日放送回では、女性1000人に聞いたアンケートの結果を予想するクイズ企画が行われていた。「『お』で始まる家族によく言われる一言は?」という問題が出され、出演者が答えをあれこれ予想していた。その後に発表された正解は1位が「おかえり」で、2位が「おはよう」だった。

 このアンケート結果があまりにも凡庸で陳腐に見えたことから、MCの川島明は「おいおい、なんや、この一覧」とあきれて、NON STYLEの石田明も「これが4月からのラヴィットか! 大丈夫か、これ!? これ、誰がいま盛り上がってんの!?」と叫んでいた。もちろん、リニューアルについて賛否の声があること自体を半分ネタにした発言ではあるのだが、出演者側も新しい演出方針に違和感を持っていることを公然と表明したというふうにも読める。

 このリニューアルに対して批判の声が多い理由は、「ラヴィット!」が朝の帯番組としては画期的で唯一無二の存在感を持っていたからだ。「ニュース性や実用性よりも笑いを優先する朝の帯番組」というコンセプトは、現代のテレビの常識では考えられないものだった。

自由な遊び場の空気

 だが、ニュースや情報が求められる朝の時間帯にあえてバカバカしく楽しいだけの無駄なことをやっている感じこそが、一部の視聴者には深く刺さっていたのである。「ラヴィット!」という番組の核心は、生活情報でもランキングでもなく、川島を中心とした出演者たちが作る「自由な遊び場の空気」だった。

 ただ、テレビ局側の事情も理解はできる。この手の番組内容の刷新(テコ入れ)が行われる根本的な理由は、元の形のままでは番組が続けられなくなったことだ。通常、その原因は視聴率の低迷にある。必要とされている視聴率に達していなかった場合、そのまま続けていても仕方がないので、番組を終わらせるか、テコ入れして様子を見るかの二者択一を迫られることになる。

 言い換えると、テコ入れをしないのであれば、番組は終わってしまうということだ。もちろん、テコ入れをすることで、従来の路線の番組に愛着を持っていた視聴者は残念に思うかもしれない。しかし、それはテレビ番組制作という「広告料で稼ぐビジネス」を維持するためのやむを得ない選択でもあるのだ。

 言うまでもないことだが、番組制作者の中に番組を終わらせたいと思って仕事をしている人はいないし、番組を面白くしたくないと思っている人もいない。誰もが面白い番組を作って、それが多くの人に長く支持されることを願っている。今回のリニューアルも、番組を続けていくために必要な施策だったのだろう。

ラヴィット!」のリニューアルに対する反対意見が目立つのは、この番組がそれだけ革新的な試みをしていて、それが熱心なファンに支えられてきたからだ。今後も番組が続いていくのかどうかは、新しいフォーマットの中でどれだけ「ラヴィット!」らしさを取り戻せるかにかかっているのかもしれない。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部