食糧法改正案 コメ農政を先祖返りさせるな
コメ農政は、かつて基本方針が頻繁に変わることで「猫の目農政」と呼ばれ、生産者も消費者も混乱させてきた。
増産方針を見直して需要喚起策を怠れば、そうした失政を繰り返すだけだ。
政府が国会に提出した食糧法の改正案は、コメや麦という主要な作物の安定的な供給を図ることを目的としている。コメ政策の基本方針については、「需要に応じた生産」と明記した。
需要の伸びが見込めなければ生産を抑えるという趣旨で、価格が下がらないようにするため、事実上の減反政策を温存するものだ。石破前首相が昨夏に打ち出した増産路線への転換の修正となる。
流通実態を把握するため、農協や卸売り、小売りだけでなく、加工業者や外食業者にも定期的な報告を義務づけるという。
また、政府備蓄に加え、コメ販売業者に一定の在庫保有を義務づける民間備蓄制度を創設する。
一昨年夏以降、コメ価格が高騰した「令和の米騒動」は、農林水産省の後手に回った対応が混乱を広げた。政府備蓄米を放出した際は、入札手続きなどで店頭への到着が遅れた。流通の目詰まりの実態も的確に把握できなかった。
そうした反省を踏まえ、改正案で流通と備蓄の課題に手を打ったのだろうが、問題はコメ政策の根幹が先祖返りしたことだ。
国は、1970年代以降、減反による生産調整で価格を維持してきた。2018年に減反政策を形の上では廃止したものの、飼料用米などへの転作に補助金を出し、現在も実質的には続いている。
「令和の米騒動」は、生産者側ばかりを向いたコメ政策の転換を迫るものではなかったのか。
減反政策は農家の生産意欲をそぎ、担い手の減少と高齢化の問題を深刻化させた。生産基盤の弱体化も招き、訪日客による需要増などに機敏に対応できなかった。
地球温暖化問題や地政学リスクを踏まえれば、食料安全保障の重要性は高まるばかりだ。人口減少で需要が減る前提に立って減反を続けるのでは未来はない。
輸出を増やすほか、米粉などの加工用向けを含め、需要を喚起する施策に取り組むべきだ。消費者目線に立ち、安心して食べられる価格でコメを供給する政策を徹底しなければならない。
それには、水田の大規模化やIT技術などの活用による生産コストの低減が不可欠だ。温暖化対応や収量を増やすための品種改良も進めていく必要がある。
