ビッグマウスで日本中を敵に回した男が、今はボクシング界の“興行師”になっている。日本人初の世界3階級制覇を達成した亀田興毅は現在、「SAIKOU×LUSH」のプロモーターとして話題選手やアーティストを呼び込み、異色のボクシング興行を仕掛けている。しかしその裏では、現役時代に稼いだ7億円を詐欺で失い、ゼロからの再出発だった――。激動のセカンドキャリアを直撃した。
[/caption]◆「子どもの幼稚園代も危うかった」引退後の苦労

──現役を引退した時点で、将来はプロモーターをやろうと決めていたんでしょうか?

亀田:い〜や、全然。もう全く関係ない仕事しようかと思っていました。自分は中学を卒業するときに親父に「家を出て働くか、ボクシングをやるかどっちや」って言われて、しかたなくやっていたのが始まりで、ボクシングは好きじゃなかった(笑)。しかも日本ボクシングコミッション(編集部注:日本国内のプロボクシングを統括・管理する団体)とずっと裁判やってたからなぁ……。

──引退後は一時ジムを運営されていましたが、今はノータッチらしいですね。そこからプロモーターへと転身されたのはなぜ?

亀田:ちょうど裁判が終わったあたりで、コロナ禍でボクシングの興行が激減していました。やるにしても座席数を減らさなあかんとか、無観客試合とか。そうなったらボクサーは食っていかれへん。選手が大勢引退していくのを目の当たりにして、興行が必要だなと思ったのが始まりです。

──今は井上尚弥選手っていうスターがいて、日本ボクシング界もずいぶん活性化しましたし、安心できますね。

亀田:そうですね。彼の活躍は過去にない凄いものです。ただ、これまでの歴史を振り返っても辰吉丈一郎さんや畑山隆則さんとかスター選手が出てきた瞬間は既存のファンに加えて新規ファンも集まり盛り上がっても、引退してしまうとファンは離れていく。その繰り返しです。だから井上尚弥選手が引退したあとが重要になってきます。なので選手ではなく、ボクシング自体にしっかりとお客さんをつけなあかんと思っています。スター選手じゃなくても、ボクシングには常にその時々のチャンピオンがおる。チャンピオンになればちゃんと飯が食えるという業界にしないといけない!

──「ボクシング自体のファンを増やさないといけない」とのことですが、亀田さんが手掛ける「SAIKOU×LUSH」では、その点を意識した仕掛けをしているのでしょうか?

亀田:毎大会ハーフショーとしてライブの時間を作っていて、これまでASKAさんやT−BOLAN、TUBE、ET-KINGさん、BAD HOPさんといったアーティストに歌っていただきました。あとは会場内で、ご当地の人気店を集めたグルメフェスも同時開催しています。ライブもあってグルメもあって……となったら、普段ボクシングに興味がない人でも「ちょっと行ってみよか」となるかもしれない。すぐに結果の出るものではないですが先々を見据えて今の間から取り組んでおけば自社のノウハウにもなるかなと。

──すごく楽しそうですが、なんだかすごくお金もかかりそうな……。

亀田:かかる、かかる! ようわかりましたね! だからお金ちょうだい(笑)!

──それこそ、引退後しばらくはお金には苦労されたと聞いています。ちなみに、「3150FIGHT」は現役時代に稼いだお金で運営しているんでしょうか?

亀田:いや、スポンサーをかき集めて、なんとか「3150FIGHT」の資金を作りました。現役時代は30億円くらい稼いだけど、税金引かれたり経費で減って、残ったのが7億円。でもそれも投資で全部なくなった。投資っていうか、まぁ騙されて7億円パーやね。これまで、ずーっとボクシングしかしてきてない人間やで? なんも分からんかった。でも、20代のうちに勉強できてよかったと思てる。引退したばかりの頃に失敗したから、ほんまにゼロからのスタートやった。一時は子供の幼稚園代もなかった。今はようやく飯を食えるくらいにはなりました。たまに家族で外食するくらいで、そんなに贅沢はできないけど。