埼玉県議補欠選挙で当選→即議員辞職 ドタバタ続き国民民主党で浮き彫りになった問題点
当選後、即日議員辞職を提出
’26年3月8日に投開票が行われた埼玉県議会議員南2区(川口市)の補欠選挙において、国民民主党が擁立した公認候補の西澤理(さとし、38)氏に対し、投開票日の前日に「公認取り消しおよび除籍処分」を下すという異例の事態が発生した。
西澤氏は無所属として戦い、2万4594票を獲得し4人中2位で初当選を果たした。だが、直後に議員辞職を表明した。
そんな西澤氏は3月16日、自身のXを更新。「議員報酬についてご報告」と題し
〈去る3/13に埼玉県議会事務局より、埼玉県議会議員として在籍した分の議員報酬59,806円の振り込みがありました。即日辞職願いを提出した私としてはこの報酬は本来受け取るべきでないものと考えております〉
と表明。公職の議員報酬は制度上、受取拒否や議会への返還が認められていない。そのため、西澤氏は
〈この59,806円全額を本日付けで日本赤十字社埼玉県支部様へ寄付いたしました〉
と報告。在職期間中に発生した議員報酬の全額を日本赤十字社に寄付したことを報告した。
この対応に対し、SNS上では
〈不祥事後の身の振り方として完璧〉
〈制度上返せないのであれば寄付という選択は誠実だ〉
といった声が相次いでいる。一方で、投開票日前日の公認取り消しから当選、そして辞職に至るまでの「空白の数日間」が招いた混乱の爪痕は依然として深い。
事態が急変したのは、3月7日午後のことだった。
国民民主党埼玉県連は公式Xを通じ、西澤氏の「除籍および公認取り消し」を突如として発表した。
党側の説明によれば、3月6日に西澤氏に関する外部からの情報提供があり、本人に確認した結果、公認申請時に「公認判断に関わり得る特定の事実」を申告していなかったことが判明したという。
この「特定の事実」の詳細について、党側は公表を控えたが、SNS上では東京スポーツが’18年5月に報じた「児童福祉法違反容疑による男性の逮捕記事」が拡散され、そこに記された名前が西澤氏と一致するとの指摘が相次いだ。
玉木雄一郎代表(56)は3月10日の記者会見で、次のように述べた。
「刑法上、罰金などについては5年たてば刑が消滅する。しかし、我々としては、信義則に反するということで、公認の取り消しと除籍という処分とした」
玉木氏は具体的な内容には踏み込まなかったものの、有権者への謝罪とともに、
「(ニュース記事など)検索もしたが、引っかかってこなかった。調査能力が甘いといえば甘い」
と、党側のチェック体制の不備を認めた。
独自のルートで相手のことを調べてくる
一方、西澤氏はXにおいて、問題とされた事案が「7年以上前の罰金刑による処分」であり、すでに刑の言い渡しの効力は失われていると主張。
〈更生を誓った人が長年にわたり社会的制裁を受け続け、再起できない社会であってよいのか〉
と、自らの法的立場と社会復帰への問いを投げかけていた。
この騒動で最も混迷を極めたのは、現地の有権者である。
期日前投票が進み、選挙戦が最終盤に差し掛かった段階での公認取り消しは、周知を不可能にした。投票日当日も、選挙管理委員会の掲示板には「国民民主党公認」と記された西澤氏のポスターが掲げられ続けた。
川口市内の投票所を訪れた70代の夫婦は、憤りを隠さない。
「掲示板の表記もそのままで、SNSをチェックしない我々のような世代はどう判断すればいいのか。党が公認を出すということは、その人物の身辺を完璧に調べているという保証ではないのか。国民民主のマークが掲示板にまだあるんだから、どこからどうみても党の人だと思うよね。公認を出すからには、もっと厳しく調査をしなきゃいけない」
と苦言を呈した。
国民民主党では、先の衆院選東京7区でも公認候補が公職選挙法違反容疑で逮捕されるなど、候補者トラブルが相次いでいる。その背景について、党関係者は組織の急拡大に伴う「人手不足」を挙げる。
「そもそも人が足りていないのにSNSなどで公募をかけまくっていることが問題。石破政権が負けた衆院選後から党の人気が高まり、公募の数が一時期700人を超えることもあった。党内の人間による紹介の場合は『これまでの関係性から大丈夫だ』として、党本部の面接も受けずに公認された人も一部いる」
また、今回の選定が行われた埼玉県連の職員も、実務の限界を次のように明かす。
「審査といっても、事務局が身辺調査を完璧にやるわけではない。役員会のメンバー約10人が、それぞれの物差しや独自のルートで相手のことを調べてくる、というのがうちのスタイル。誰がどこまで深く掘り下げて調べているかは、実は役員同士でもよく分かっていない部分がある」
西澤氏は元埼玉県知事の上田清司参議院議員の事務所で公設秘書を務めていた経歴をアピールし、ポスターにも上田氏の推薦メッセージが掲載されていた。しかし、今回の事態はその「有力者の推薦」や「秘書経験」という看板さえも、組織的なチェック体制として機能していなかったことを示している。
西澤氏の旧事務所を訪れた地元紙記者は、
「インターホン越しに西澤さん本人と思われる人物から、『深く踏み込まないほうがいいぞ』『警察を呼ぶぞ』と強い口調で拒絶されました。かつての活動拠点さえも、今は沈黙に包まれています」
と話す。
玉木代表は、
「政治の世界でどういう再チャレンジの機会を与えていくのかバランスの取れた議論が必要だ」
と述べたが、投票直前の公認取り消しと、その後の「当選即辞職」という混乱を招いた責任は重い――。
