【政界】進退賭けて勝負に出た高市首相 選挙後のリーダーに課される日本再生
極秘会談で新党合意
新党結成が事実上決まったのは、1月11日夜だ。2日前に高市側のリークで読売新聞電子版が「衆院解散検討」と報じたのを受け、野田と斉藤が顔を合わせた。立民代表代行の馬淵澄夫、公明の支持母体・創価学会関係者らも同席した、この極秘会談で新党結成の方向性が固まった。これを受けて野田と斉藤は翌朝の公式会談で新党結成に向けた協議をスタートさせた。
立民が懸念したのは、党の分裂だ。東京都知事・小池百合子が17年、「希望の党」結成を表明し、立民の源流でもある旧民進党は合流を目指した。ところが小池が安全保障法制に賛同しない議員を「排除する」と発言。これに反発して合流を拒んだ旧民進の枝野幸男らが立民を立ち上げた。分裂で失速した希望の党は1年足らずで解党し、国民民主党の誕生へとつながった。
希望の党の「二の舞」を避けようと、安住は15日の立民両院議員懇談会で「排除の論理には立たない」と宣言した。党内では「野合と言われる可能性がある」などの声も上がったが、結局、引退する議員を除いて146人の議員中、144人が新党に参加した。離脱者は原口一博ら2人のみ。公明の選挙協力への期待感が、離脱者を最小限にくいとどめた。
ただ、代償も大きかった。新党・中道が19日に発表した党綱領と基本政策では公明の現実路線が目立ち、立民のリベラル色は薄まった。安保法制に対し「違憲部分の廃止」と掲げた立民の根幹政策は、「自国防衛のための自衛権は合憲」へと変貌した。
「原発ゼロ社会を1日でも早く実現する」との基本方針は「将来的に原発に依存しない社会を目指す」に変更し、原発再稼働も盛り込まれた。中道が党綱領で掲げた5つの柱は、昨年11月に斉藤が公表した政策5本柱とほぼ同じ。立民は公明の現実路線に引き寄せられ、国民民主の玉木は「背骨となる政策がこんなに簡単に変わるのか」と驚きの声を漏らした。
一方の高市は「争点潰し」で対抗した。消費減税を目玉政策に掲げる中道に対抗し、現行8%の飲食料品の消費税率を2年間限定でゼロにする方針を打ち出した。昨秋の臨時国会で「レジシステムの改修に時間がかかる」などと慎重姿勢していた高市だが、立公両党が新党結成で合意した15日、片山さつき財務相に減税導入の検討を指示。財務省は衝撃を受けた。
毎日新聞が17日付朝刊で「高市政権、消費税ゼロ案浮上」と報じて表面化すると、中道は19日に減税期間を「恒久」とすると表明。22日の結党大会で、野田は実施時期を「財源を示し秋から実施する」と宣言した。
「(政権の減税は)いつやるか、本当にやるか分からない」。野田はこう批判したのに対し、高市は26日の党首討論会で、今秋の臨時国会で実施法案を提出し、26年度中の成立を目指す考えを示して対抗した。
今後の政界の構図は、中道の動向により今後も変化する。衆院選を「さらなる政界再編の一里塚」と位置づけた野田は、石破ら自民のリベラル派も巻き込んだ勢力拡大を目指す考えだ。
斉藤は「自民党と全面対決するつもりはない。自民党とも連携しながら政策を進めていくこともあり得る」と強調し、「第2新進党にはならない」と語った。斉藤が挙げた「新進党」は自民政権からの政権交代を目指し、新生党、日本新党、公明党などの合流により1994年に誕生した政党だ。斉藤も野田もかつて所属した。
中道の最大の特徴は、立公両党自体を解党せず、参院議員や地方議員を残し、衆院議員だけを離党させて合流させる形式を取ったことだ。28年の参院選を見据え段階的にさらに合流を進める方針だが、新進党結党時に公明が採用した「分党・段階合流方式」とほぼ同じだ。
