記事のポイントAIツールでSNSの膨大なコメントを分析し顧客の需要を数値化することで製品開発に活かしている人気の香りを特定して他カテゴリーへ展開するなどデータに基づいた戦略的な意思決定を行っている発売直後から顧客の反応をリアルタイムで追跡して次なるマーケティング施策の精度を高めている
TikTokとインスタグラムで300万人のフォロワーを抱えるバスグッズ、ボディケアブランドのツリーハット(Tree Hut)は、顧客層が次に求めるものを把握するためにますますAI(人工知能)への依存度を高め、製品開発からマーケティングまであらゆるプロセスの形成に活用している。ツリーハットは、この1年間、AIを活用したコミュニティ管理ツールを用いて、自社のチャネルでのコメントやダイレクトメッセージ、そのほかのソーシャル上でのやりとりを分析してきた。当初は顧客対応を迅速化する手段だったが、製品需要の見極めや新製品発売時のセンチメント(顧客感情)の測定、イノベーションに関する意思決定の判断材料にするための広範なシステムへと進化した。同社によると、AIツールを導入してから、ソーシャルエンゲージメントが前年比で430%増加したという。ツリーハットは、テキサス州コッペルを拠点とする家族経営のパーソナルケア企業ナテラ(Naterra)傘下のブランドであり、同社のポートフォリオには、ベビーマジック(Baby Magic)、スプラッシュ(Splash)、Bdyも含まれる。ナテラの統合メディア担当アソシエイトディレクター、サラ・クレイグ氏はModern Retailのインタビューで、ツリーハットがどのようにAIを利用してコミュニティからのフィードバックを分析し、その知見が香りの選択から将来のブランド体験にいたるまで、あらゆるものにどのように影響を与えているか語った。なお、インタビューの内容は読みやすさを考慮して要約・編集した。

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──ツリーハットはAIをどのように活用しているのか?

「当初は、AIを活用してソーシャルチャネルでコミュニティとより積極的につなげる、ごく単純な取り組みだった。ツリーハットは、コミュニティ・ファーストのブランドであり、クロスチャネルでのオーディエンスとオーガニックリーチが膨大な規模になっている。そのため、ダイレクトメッセージやコメント、質問への対応をより迅速かつ効率的にする必要があった。そこで、AIツールを導入した。AIツールを活用することで、オーディエンスのコメントや会話(新製品や求める香り、さまざまな製品形態、コラボレーションのアイデアなど)を取り込むシステムを構築した。長い時間をかけて、こうした繰り返し寄せられるリクエストの大規模なデータベースを構築することができた。そのおかげで、基本的なコミュニティ管理の枠を超え、AIから得られたインサイトを生かして、製品開発やイノベーション、新たな発売戦略について戦略的に情報を提供できるようになった」。

──AI によるインサイトが製品開発に影響を与えた具体例を挙げてもらえるだろうか?

「良い例が『シナモンドルチェ(Cinnamon Dolce)』だ。シナモンドルチェは、コミュニティに愛されている大切な香りだ。これまで、ホリデーシーズン限定で、主力商品の『シアシュガースクラブ(Shea Sugar Scrub)』にこの香りを復刻させてきた。以前から、シナモンドルチェについては、定番製品としての復活や全国展開の再開、シェービングオイルやボディウォッシュなど他製品への投入を求める声が寄せられていた。シナモンドルチェに関心が寄せられていることはずっと把握していたが、AIの活用によって、ようやく需要を数値化できた。実際に、数千件ものメンション(製品への言及)やリクエストが届いていることが可視化された。AIを活用して、ユーザーのメンションを特定の香りや製品カテゴリーに関連付けることで、そうしたものが膨大なボリュームであることを確認できた。そこで、それらのインサイトを春の新製品発売に活用し、シナモンドルチェを『ハイドログローボディローション(Hydroglow Body Lotion)』や『フォーミングジェルウォッシュ(Foaming Gel Wash)』など、より多くの製品カテゴリーに展開することが可能になった」。

──マーケティングについてはどうか?

「シナモンドルチェは、スーパーボウルのCMの最後に登場しているが、その演出はAIを通してコミュニティから得た知見のおかげだ」。

スーパーボウルで放映されたCM「Uncontain Yourself」

──製品に関する意思決定以外では、AIをどう活用しているのか?

「新製品の発売やマーケティング活動に関するセンチメントを把握する目的でもAIを活用している。それによって、市場に投入した製品に対する人々の感想をよりきめ細かく把握できる。それも、多くの場合は初日から、売上データを見る前から把握可能だ。これにより、発売後の動向をリアルタイムで追跡し、次のサイクルでどのような調整を行うべきかを理解するのに役立っている。たとえば昨秋、(コミックの)『ピーナッツ』とコラボレーションした際、そのキャラクターをより濃く反映した、カスタマイズされたコレクション向け限定アイテムを求める声が殺到した。こうした声は、その後にほかのブランドや知的財産(IP)とのコラボレーションにどの程度の投資や限定特典を提供すべきかを判断するのに役立っている」。

──今後、自社の戦略はAIによってどのように形作られると思うか?

「シナモンドルチェをめぐる取り組みは、コミュニティが実際に求めているものを中心に今後の新製品発売や体験をどのように構築するかのテンプレートになっている。コミュニティの知見をくみ取り、それをよりニッチで限定的な製品として形にする具体的なユースケースを、製品の提供だけでなく、たとえば現実世界でのアクティベーションやコンテンツ、エンターテイメントなどの体験や機会にも取り入れていこうと考えている」。[原文:How Tree Hut used AI to turn customer feedback into product insights and quadruple social engagement]Allison Smith(翻訳:矢倉 美登里/ガリレオ、編集:京岡栄作)