これはうまい!「揚げぎんなん」の作り方 「立冬」にこれで一杯!
『おとなの週末Web』は、手料理の魅力も紹介しています。中でもお酒好きなら、お供になる肴にもこだわりたいところ。自宅で作った様々な料理で「おとなの週末」を楽しんでいる年金生活の元男性編集者が、二十四節気に合わせ、自慢の酒肴を紹介します。「立冬」編をお楽しみください。
晩秋のぎんなん、もちっとおいしく「ヒスイ」のような美しさ
秋が一気に深まりました。急に気温が下がったこともありますが、目で感じたのは都内でもぎんなんの実がだいぶ落ちていたからです。古くからの生活暦である二十四節気では立冬(りっとう。11月7日からの2週間ほど)を迎えました。季節はめぐり、冬の入り口ということです。
イチョウの木に実るぎんなん。街中のイチョウの木からは道路にも熟したぎんなんの実が落ちてきます。それを踏むと、独特の臭気が立ち上がり、一面はぎんなん臭くなります。深まる秋の光景ですが、実際は、ちょっとした晩秋の嫌われものかもしれません。

街中に落ちたぎんなんの実。熟した外皮の中には白い殻に包まれたぎんなんがある
けれど、あのぎんなんの実、グジュグジュ黄色く熟した外皮の中には白く堅い殻があります。その殻を割った中には、薄皮に包まれた黄色っぽい実(胚乳)が入っていて、加熱すると鮮やかな緑に変わるのです。まるで宝石の「ヒスイ」のような美しさ。それが、オイラの大好物のぎんなんです。

白く輝くぎんなん。出荷用として出回る最盛期は10〜11月
大学生の頃、40代50代の頃のオイラは、この季節になるとぎんなん拾いに精を出しておりました。明け方、イチョウの木がある公園や小学校、そして神社の境内を歩いては、グジュグジュの実を拾い集めていたのです。10kgくらい集めたこともありました。外皮をきれいに落とし、洗って乾燥させれば、八百屋さんに並ぶぎんなん同様になるのです。まぁ、コンプライアンス(法令順守)の考えが浸透した現在では、あきらかに不審者です。
67歳となったオイラ。さすがにぎんなん拾いはやらなくなりましたが、酒の肴としてのぎんなん好きは変わりません。
いちばん簡単な楽しみ方は殻ごと煎って割り、熱々で食べること。塩も何もいりません。濃厚でモチっとした実の味わいは、それだけで格別なものです。殻を割る手間はありますが、見事なエメラルドグリーンの実に遭遇すると、「生きていてよかった〜」と心底思えるのです。

煎りぎんなん。殻のままフライパンなどで煎るだけだが、もっちりと深い味わい
「揚げぎんなん」はオリーブオイルで揚げたい
そのぎんなん、八百屋さんやスーパーでは、愛知県産のぎんなんが大粒の高級品として並びます。有名なのは祖父江(そぶえ。愛知県稲沢市)のぎんなん。大粒で純白、一点の汚れもない美しさ。拾い集めたぎんなんにはない気品さえただよっております。なじみの八百屋さんによれば、「最後は磨き粉でピカピカにしてから出荷するんだよ」とのこと。なるほど納得です。

大粒のぎんなんとして有名なのは愛知県祖父江産。殻も磨かれてピカピカ
和食の店では、そんな大粒のものを「揚げぎんなん」として出してくれますが、これが絶品です。油での揚げ上がりにちょいと塩をふり、イチョウの葉でもあしらっていれば、もはや「料亭ふうのおつまみ」です。

イチョウの葉はあしらわなくとも、お皿に盛れば堂々の酒肴
ということで、オイラの立冬の頃の楽しみ方は「揚げぎんなん」です。ただし今シーズンは、67歳のジジイらしい工夫もしてみました。揚げる際の油をオリーブオイルとしたのです。
最近、本業で携わった書籍に『野菜は「生」で食べてはいけない』(講談社ビーシー/講談社)というものがあります。ノンフィクション作家の奥野修司さんの新刊ですが、健康のために野菜を摂るには、「生でなく、加熱して食べましょう」という内容です。
本のなかにはわれわれが普段使っている油についても記述があり、いわく、《無色透明な油はできるだけ避け、濁っている油を用いたい》ということでした。同書から引用します。
《本来、植物性の油は、搾りたてならば不純物が混じり「色」もついている。これらを取り除いて無色透明にしたのが、市販の精製食用油(サラダ油ほか)だ。せっかくの抗酸化物質が除かれたことで酸化も進みやすい。》
抗酸化物質とは、われわれの体を傷つける活性酸素(がんの原因ともいわれている)を消去してくれるありがたい成分です。そうした物質を多く摂ることが健康の維持には必要なのですが、そのためは、焙煎した菜種油や、オリーブオイル、ごま油など、自然の色に近い「濁った油」が理想との見解です。そこで、オイラはぎんなんを、濃い緑色に濁っているオリーブオイルで揚げてみました。ぎんなんは栄養の塊でもあり、どうせ揚げるなら体にいい油で揚げたいからです。

揚げ油はオリーブオイル。活性酸素を消去してくれる抗酸化物質が豊富
しかも、オイラたちが食べているぎんなんは、冒頭にも書いたように胚乳の部分です。種子なので栄養成分もすばらしく、ベータ・カロテン(活性酸素から体を守る)、パントテン酸(免疫力を高め、善玉コレステロールを増やす)、ビタミンC(風邪予防、動脈硬化予防)、カリウム(塩分を排出し、血圧を下げる)など、ジジイの健康維持に役立つ成分がてんこ盛りなのでした。
揚げぎんなんは、堅い殻を割ってから揚げる
実際、オリーブオイルで揚げたぎんなんは、いつものもっちり感に、深いコクが加わって絶品です。お酒と一緒なら、いくらでも食べられます。
とはいえ、ぎんなんの食べ過ぎはよくありません。ぎんなんには人体に影響を及ぼす物質「メチルピリドキシン」が含まれており、過剰に摂取すると下痢をしたり、まれにけいれんが起きたりすることもある、と伝えられています。なので、適量適食でまいりましょう。
●揚げぎんなんの作り方(下ごしらえ編)
1)ぎんなんは殻付きのものを手に入れる。
2)ぎんなんの殻を割り、中の実を取り出す。殻を割るときは、ぎんなんの殻にある筋に沿って、ペンチやキッチンバサミなどで挟んで割る。もしくは、かなづちでたたいて割ってもいい。※ぎんなんの殻はかな堅いと思ってください。オイラは、「ぎんなんバサミ」という専用の道具を持っております。これを使えば、百発百中で殻が筋に沿ってきれいに割れます。

ぎんなんの殻割りに便利な「ぎんなんバサミ」。ネット通販で手に入る

ぎんなんバサミを使えば百発百中で殻がきれいに割れる

オイラが愛用するぎんなんバサミ。20年以上使っている年季の入ったもの
3))割った殻から、薄皮に包まれたぎんなんの実を取り出す。

殻を割ったぎんなんは薄皮がついた状態で揚げる
●揚げぎんなんの作り方(調理編)
1)小鍋にオリーブオイルを2cmほどの深さになるように注ぎ、揚げ油とする。
2)薄皮のままのぎんなんを油の中に入れ、弱火で熱していく。※小鍋の大きさにもよりますが、オイラの場合、一度に揚げる量は10〜20粒くらいです。

小鍋に2cmほどの深さになるようオリーブオイルを注ぎ、ぎんなんを入れてから加熱する
3)油がグツグツとしてくると、薄皮が自然にはがれてくる。ぎんなんが鮮やかな緑色になったら、揚げ終わり。※油が温まってからの揚げ時間は1〜2分くらいの感じです。

油を熱していくと、ぎんなんの薄皮は自然にはがれてくる
4)揚げたぎんなんはザルで油をきり、キッチンペーパーなどでぬぐって薄皮を完全にはがす。熱いうちに塩を少しふって出来上がり。※揚げ上がりは超熱いです。

鮮やかな緑色になれば揚げ上がり。ザルで油をきる

仕上げはキッチンペーパーで。油分をぬぐい、塩をふる
文・写真/沢田浩
さわだ・ひろし。書籍編集者。1955年、福岡県に生まれる。学習院大学卒業後、1979年に主婦と生活社入社。「週刊女性」時代の十数年間は、皇室担当として従事し、皇太子妃候補としての小和田雅子さんの存在をスクープ。1999年より、セブン&アイ出版に転じ、生活情報誌「saita」編集長を経て、書籍編集者に。2018年2月、常務執行役員パブリッシング事業部長を最後に退社。
