【今回は本物か?】海外投資家が10年越しの日本株ブームを「買い」と判断した“改革”の正体
海外投資家が“本物だ”と唸る日本株市場の知られざる大変貌
破竹の勢いであっという間に17万部突破のベストセラーとなっている『5年で1億貯める株式投資 給料に手をつけず爆速でお金を増やす4つの投資法』の著者・kenmoさんと、新刊『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略」』の著者・宇根尚秀さんによる特別対談をお送りする。新NISA(少額投資非課税制度)で、大人気の「オルカン(eMAXIS Slim全世界株式<オール・カントリー>)」や「S&P500(米国株式)」に連動する投資信託を始めた多くの個人投資家に、次の一手となる個別株投資を指南。個人投資家とファンドマネージャーによる「ここでしか語れない話」を繰り広げる。
SNSが変えた投資の世界
個人投資家のレベルは劇的に向上
Kenmo 2018年、2019年頃から個人投資家向けのIR説明会や勉強会を運営している中で、ここ10年で個人投資家のレベルが驚くほど底上げされているのを実感しています。特にこの4、5年での変化は著しく、その背景にはSNSの発展が大きく影響していると感じます。
SNS上では優秀な投資家同士のコミュニティが生まれ、そこでの活発な情報交換を通じて、互いに知識やスキルを高め合っています。また、誰が優秀な投資家なのかが可視化されるようになりました。
市場では一種の生存バイアスが働き、パフォーマンスの悪い投資家は淘汰され、市場から退場していきます。一方で、優秀な投資家は生き残り、さらにレベルを上げていく。こうしたサイクルによって、全体のレベルが引き上げられてきたと考えています。
新しい世代の参入と投資家層の厚み
Kenmo そして、ここ1、2年の新しい動きとして、これまでとは異なる新しい層、特に女性や20代前半といった若年層の投資家が、投資勉強会などに参加するケースが増えています。新しい世代が着実に市場に参入してきているのです。
長年市場で生き残ってきた既存の優秀な投資家たちのレベルが上がり続けていることに加え、意欲的な新しい層が参入してきたことで、日本の個人投資家の層は非常に厚みを増している、というのが私の実感です。
そこで、海外の機関投資家との接点がない私からすると、彼らが現在の日本市場をどのように見ているのか、ぜひお伺いしたいです。
海外機関投資家が見る日本市場
“This time is different”は本物か?
宇根尚秀(以下、宇根) ありがとうございます。私は数ヵ月に一度、香港、シンガポール、最近ではタイなどへ足を運び、現地のヘッジファンドや投資家と意見交換をしていますが、彼らの見方は新聞報道で言われていることと概ね一致します。
海外投資家から最もよく聞かれる質問は、「今回は本物か?」ということです。実は、私が出版した本にも「This time is different(今回は違う)」という幻の章があったほどです。
振り返ると、10年に一度くらいのペースで日本株ブームが来ています。2000年代初頭には小泉・竹中改革、2010年代にはアベノミクスというブームがありました。残念ながらいつもそれは短命のブームなのですが、今回の2022年、23年から始まった今回のブームは、上場企業のPBR(株価純資産倍率)向上に向けた東京証券取引所主導の“PBR改革”に代表される「コーポレートガバナンス改革」が牽引しています。
昨年の後半に一度勢いが落ち着き、また短命なブームかと思われましたが、今年に入ってから力強く再燃し、今回のテーマは比較的「賞味期限が長い」と感じています。
日本の改革は「遅い、でも着実」
変わり始めた海外勢の評価
宇根 海外で講演する際、私は日本の改革の特徴を「1に遅い、2に遅い、3にすごく遅い。しかし、4つ目のポイントとして、一度やり始めたら着実に(steadily)やる」と説明しています。
この10年間、コーポレートガバナンス改革を地道に進めてきた結果、株価は3倍、EPS(1株当たり利益)も3倍になり、企業の利益率も向上しました。株主還元を含めた企業統治の改善という「実績」が、少しずつですが着実に積み上がってきたのです。
この変化に対する海外投資家の評価は、劇的に変わりました。
2年前:「いや、嘘でしょ」
去年:「うーん…(半信半疑)」
今年:「そうだよね(本物かもしれない)」
このように、日本のコーポレートガバナンス改革を本物だと認める投資家が明らかに増えています。アベノミクスや小泉改革の時は、「どうせ人口が減る国だから」と信じ切らず、短期的な値動きを狙う投機的なマネーが中心でした。しかし今回は、欧州や米国の投資家が、先進国市場やアジア市場の中で「日本株をポートフォリオに一定程度組み込んでおこう」と判断するような、長期的な資金が流入してきているのが大きな違いです。
日本の企業が国内市場の成長性に課題を抱えつつも、海外でしっかりと稼ぐ力がある。その業績が向上すれば、株主にも報いることができる。こうした米国型の健全な株式市場への期待が形成されつつあり、長らく続いた「日本株のディスカウント」が是正され始めている。この潮流は、私のキャリアの中でも初めての経験であり、まだしばらく続くと見ています。
