こちらは、ハワイ・マウナケア山の「ジェミニ北望遠鏡」で観測された、うさぎ座の銀河団「MACS J0600.1-2008(MACS0600)」です。


【▲ ジェミニ北望遠鏡が観測した銀河団「MACS J0600.1-2008(MACS0600)」(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA; Image Processing: J. Miller & M. Rodriguez (International Gemini Observatory/NSF NOIRLab), T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab), M. Zamani (NSF NOIRLab); Acknowledgments: PI: Lukas J. Furtak (Ben-Gurion University of the Negev))】

画像を公開したNSF NOIRLab=アメリカ国立科学財団の国立光学・赤外天文学研究所によると、MACS0600は遠方の天体の像を大きくゆがませる“強い”重力レンズ効果をもたらすことで知られています。


重力レンズ効果とは、手前にある天体の質量によって時空間がゆがむことで、その向こう側にある天体から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像がゆがんだり拡大して見えたり、時には分裂して見えたりする現象のこと。


像が大きくゆがんだり、リング状になったりするような場合は「強い重力レンズ」、像がわずかに引き伸ばされたりずれたりする場合は「弱い重力レンズ」と呼ばれることもあります。


ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の観測データをもとに銀河団MACS0600の質量を求めた研究者は、観測された重力レンズ効果の強さに対して、算出した質量が軽すぎることに気が付きました。そこで、NOIRLabが運営するジェミニ天文台のジェミニ北望遠鏡を使用して、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した領域のすぐ東側を観測したところ、ハッブル宇宙望遠鏡はMACS0600の一部しか捉えていなかったことが明らかになったといいます。


【▲ 銀河団「MACS J0600.1-2008(MACS0600)」の望遠鏡ごとの観測範囲を示した図。ジェミニ北望遠鏡の多天体分光器(Gemini/GMOS・紫)が観測した範囲は、ハッブル宇宙望遠鏡の掃天観測用高性能カメラ(HST/ACS・青)と広視野カメラ3(HST/WFC3・オレンジ)、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(JWST/NIRCam・赤)、超大型望遠鏡の広視野面分光装置(VLT/MUSE・黄緑)と比べて広い(Credit: Furtak et al.)】

大部分が隠れていて一部しか見えていなかったという経緯になぞらえて、MACS0600には「Anglerfish cluster(アンコウ銀河団)」というニックネームが与えられました。今後はMACS0600が持つ質量の空間的な境界を明らかにする取り組みに加えて、この銀河団を重力レンズ効果の“レンズ役”とした初期宇宙の銀河の研究がすでに計画されているということです。


冒頭の画像はNOIRLabの今週の画像として、2025年8月27日付で公開されています。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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